2021年02月08日

オフィス市場は調整色が強まる。コロナ再拡大がホテル・商業の回復に打撃。-不動産クォータリー・レビュー2020年第4四半期

金融研究部 准主任研究員   佐久間 誠

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1. 経済動向と住宅市場

新型コロナウイルスの第3波が拡大するなか、1月8日に緊急事態宣言が再発令されたことで、回復途上にあった経済活動が再び停滞することは避けられず、不動産市場への悪影響も強まることが予想される。

2月15日に公表予定の2020年10-12月期の実質GDPは、前期比+2.1%(前期比年率+8.5%)と2四半期連続のプラス成長になったと推計される1。過去最大のマイナス成長となった4-6月期の落ち込みの8割強を取り戻すことになるが、直近のピーク(2019年7-9月期)と比較すると、実質GDPで▲3.8%、民間消費で▲5.8%低い水準にとどまる。今年1月に緊急事態宣言が再発令されたことで、対面型サービス消費を中心に経済活動が落ち込むことから、2021年1-3月期は3四半期ぶりにマイナス成長となる見通しである。

経済産業省によると、2020年10-12月の鉱工業生産指数は前期比+6.2%と2期連続でプラスとなったが、7-9月期(前期比+8.7%)から伸び率は鈍化した。鉱工業生産は20年4-6月期に前期比▲16.9%と急落した後、その後の2四半期で約4分の3を取り戻したが、1-3月期と比較して▲4%程度低い水準にとどまっている2

ニッセイ基礎研究所は、昨年12月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2020年度▲5.2%、2021年度3.4%、2022年度1.7%を予想する(図表-2)3。ソーシャルディスタンスの確保が外食・旅行・娯楽などのサービス支出を抑制すること等から、経済活動が元の水準に戻るまでには時間を要する見込みである。実質GDPがコロナ前の水準(2019年10-12月期)を回復するのは2022年7-9月期、消費税率引き上げ前のピーク水準(2019年7-9月期)を回復するのは2023年度にずれ込む見通しである。
図表-1 鉱工業生産指数/ 図表-2 実質GDP成長率の推移(年度)
住宅市場では、コロナ禍においても価格が高止まりするなか、新規着工戸数の低迷が続いている。2020年12月の新設住宅着工戸数は65,643戸(前年同月比▲9.0%)と18カ月連続で減少し、10-12月累計では207,126戸(前年同期比▲7.0%)となった(図表-3)。内訳をみると、「貸家」が28カ月連続で減少、「分譲」が14ヶ月連続で減少した。
図表-3 新設住宅着工戸数(全国、暦年比較)
一方、2020年12月の首都圏のマンション新規発売戸数は7,362戸(前月同月比+15.2%)、10-12月累計では13,510戸(前年同期比+15.5%)となり、前年同期を上回った(図表-4)。12月の1戸当たりの平均価格は5,620万円(前年同月比▲4.4%)、㎡単価は83.7万円(同▲0.2%)、初月契約率は62.6%、販売在庫は8,905戸(同▲190戸)となった。販売戸数は、モデルルームの閉鎖などの影響で大幅に減少した4-6月期を底に回復基調にあるが、2020年全体では27,228戸(前年比▲12.8%)に減少した。不動産経済研究所によると、2021年の販売戸数は約3.2万戸(前年比+17.5%)となり、2019年の水準(3.1万戸)を上回る見通しである4
図表-4 首都圏のマンション新規発売戸数(暦年比較)
東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2020年12月の首都圏の中古マンション成約件数は2,533件(前年同月比▲9.9%)に減少したものの、10-12月累計では9,789件(前年同期比+11.8%)となり調査開始以来、過去最高を記録した。中古マンション成約件数は、緊急事態宣言と営業自粛の影響で大幅に減少した4-6月期(6,428件、前年比▲33.6%)を底に回復している(図表-5)。
図表-5 首都圏の中古マンション成約件数(12カ月累計値)
日本不動産研究所によると、2020年11月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前年比+4.0%となり14カ月連続で上昇した。コロナ禍においても住宅の取得ニーズは高く、マンション価格は堅調を維持している(図表-6)。
図表-6 不動研住宅価格指数(首都圏中古マンション)
 
1 ニッセイ基礎研究所「2020年10-12月期の実質GDP~前期比2.1%(年率8.5%)を予測~」(ニッセイ基礎研究所、Weeklyエコノミスト・レター、2021年1月29日)
2 ニッセイ基礎研究所「鉱工業生産20年12月-2四半期連続の増産、予測指数も強め」(経済・金融フラッシュ、2021年1月29日)
3 ニッセイ基礎研究所「2020~2022年度経済見通し-20年7-9月期GDP2次速報後改定」(ニッセイ基礎研究所、Weeklyエコノミスト・レター、2020年12月8日)
4 不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向2020年(年間のまとめ)」(2021年1月25日)
 

2. 地価動向

2. 地価動向

地価は、都心商業地を中心に下落している。国土交通省の「地価LOOKレポート(2020年第3四半期)」によると、全国100地区のうち上昇が「1」(前回1)、横ばいが「54」(前回61)、下落が「45」(前回38)となり、下落地点については、3%未満の下落が「37」(前回30)、3%以上6%未満の下落が「8」(前回8)となった(図表-7)。同レポートでは、「新型コロナウイルス感染症の影響により、ホテルや店舗等の収益性低下による需要の減退が一部で見られるが、全体としては需要者の様子見傾向が継続している」としている。
図表-7 全国の地価上昇・下落地区の推移
一方、野村不動産アーバンネットによると、首都圏住宅地価格の変動率(1月1日時点)は前期比+0.7%となった(年間+0.3%)。「値上がり」地点の割合は22.6% (前回19.6%)、「値下がり」地点の割合は2.4%(前回0.6%)となり、にそれぞれ増加した。低金利環境に加えて、コロナ禍での在宅勤務等による新たな需要の高まりもあり、住宅地価格は底堅く推移している(図表-8)。

国税庁は1月26日に、大阪中央区の3地点の路線価を4%引き下げる減額補正を発表した。これは現行制度ができた1955年以来初めての措置である。インバウンド需要の恩恵を受けてこれまで上昇していたエリアの地価が大幅下落に転じる一方、住宅地では需給バランスに大きな変化は見られず、地価動向はエリア毎にまだら模様となっている。
図表-8 首都圏の住宅地価格(変動率、前期比)

3. 不動産サブセクターの動向

3. 不動産サブセクターの動向

(1) オフィス
三鬼商事によると、2020年12月の東京都心5区の空室率は10カ月連続上昇の4.49%(前月比+0.16%)、平均募集賃料(月坪)は5カ月連続下落の21,999円(前月比▲1.0%)となった。他の主要都市では、空室率は上昇基調にあるものの、募集賃料は底堅く推移している(図表-9)。
図表-9 主要都市のオフィス空室率
三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」によると、2020年第4四半期の東京都心部Aクラスビル成約賃料(月坪)は34,669円(前期比▲8.9%)となり、2017年第4四半期の水準まで下落した。直近のピークである2019年第4四半期(42,242円)からの下落率は▲17.9%となった。また、Aクラスビルの空室率は1.6%(前期比+1.0%)で、2018年第3四半期以来の1%超えとなった(図表-10)。三幸エステートは、「新築ビルへ移転したテナントの二次空室で後継テナントが決まらず、現空床となるケースが増えている」としている5。日経不動産マーケット情報によるアンケート調査では、オフィス賃料について年内は下落基調が続くとの見通しが過半を占め、底打ちは2022年前半を予想する見方が増えている6
図表-10 東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
今後はコロナ禍を経て、企業が働き方やオフィスの使い方をどのように再構成していくのかに注目が集まる。テレワークの普及によって、オフィスと在宅勤務をハイブリットに使いこなす企業が増えることが予想される。しかし、オフィスと在宅での勤務割合(オフィス出社率)の最適解は依然として不透明である。オフィス出社率を定量的に把握する手段は今のところ限られるが、携帯会社やIT企業などが提供する、スマートフォンの位置情報をもとにした流動人口データが参考になる。NTTドコモが提供する「モバイル空間統計」を見ると、2021年2月4日時点の東京のオフィスエリアの流動人口は前年同期比▲42.2%の水準であり、オフィス出社率は60%程度まで低下していると推測される(図表-11)。
図表-11 東京オフィスエリアの流動人口(オフィス出社率)と新型コロナの新規感染者数
 
5 三幸エステート「オフィスレント・インデックス2020年第4四半期」(2021年2月4日)
6 日経BP社「アナリスト予測 ― 弱含むオフィス需要、下落幅は次第に緩やかに」『日経不動産マーケット情報』(2021年1月)
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金融研究部   准主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

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