コラム
2021年01月07日

株式市場と比べて回復の遅れが目立つ1年となったJリート市場~2020年の収益率は株式市場を▲20.8%下回る

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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2020年のJリート(不動産投資信託)市場を振り返ると、東証REIT指数(配当込み)は昨年末比▲13.4%となり3年ぶりに下落した1(図表1)。年初は上昇してスタートしたが、2月下旬以降、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急落し、高値からの下落率は一時リーマン・ショック時(2008年)に次ぐ大きさを記録した。その後は上昇に転じたものの、オフィス市況の先行き懸念などを背景に上値の重い展開となった。これに対して、株式市場はボトムからの回復力が強く、TOPIXの収益率(配当込み)は+7.4%とプラスで終えた。この結果、Jリート市場は株式市場を▲20.8%アンダーパフォームし、株式市場と比べて回復の遅れが目立つ一年となった。
図表1:東証REIT指数とTOPIX(配当込み、2019年12末=100、月次)
こうした株価の回復力の格差は株式市場の業種や銘柄においても確認できる。TOPIXの業種別パフォーマンス(配当込み)をみると、アフターコロナの社会を見据えて、デジタル化の進展や人々の行動変容の恩恵を受ける業種が大きく上昇する一方、厳しい事業環境に直面する業種の回復力は弱く、強者と弱者の二極化が止まらない「K字型相場」となった。また、不動産業の収益率はJリート市場と同水準の▲13.5%となり、33業種中24番目に位置する。これは、不動産収益の源泉が「人の集積」によって生まれる利便性や賑わいにあるとすれば、株式市場は不動産と新型コロナの相性があまり良くないと判断しているようだ。
図表2:2020年のTOPIX業種別パフォーマンス(配当込み)
もっとも、Jリート市場は株式市場に対するアンダーパフォームをこれまで何度も経験している。図表3は、Jリート市場と株式市場の月次パフォーマンスの差を累計したグラフで、折れ線が上向きの期間は「Jリート優位」、折れ線が下向きの期間は「株式優位」を表わす。今回のアンダーパフォームは2019年9月から始まり、2020年11月時点で▲33.1%まで拡大した。しかし、▲30%以上アンダーパフォームした過去3回はその後大きく反転に向かい、勝った負けたを繰り返しながら、長期でみるとJリート市場は株式市場を上回る収益率を実現している。
図表3:Jリート市場と株式市場の月次パフォーマンス格差の累計
新年早々、首都圏1都3県で緊急事態宣言が再発令されるなど新型コロナの猛威はなかなか収束せず、市場環境は不確実性の高い状態が続く。しかし、昨年12月の収益率は+6.0%で株式市場を3.1%上回った。「冬来りなば春遠からじ」の言葉通り、今年はJリート市場が株式市場をアウトパフォームする反転の年となることを期待したい。
 
1 東証REIT指数(配当込み)の収益率は2018年が+11.1%、2019年が+25.6%であった。
 

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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2021年01月07日「研究員の眼」)

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