2021年02月03日

新型コロナ接触確認アプリ(COCOA)リリースから半年で利用意向はどうか

第3回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査より

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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厚生労働省による「新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOA」は、1月28日現在、ダウンロード数は2,439万件、陽性登録者数は累計9,653件である。ダウンロード数は日本の人口1憶2千万人に対して20%、陽性者の登録はアプリがリリースされた7月以降の陽性者約36万2千人に対して2.7%程度にとどまっている。利用者数に比べて、陽性登録件数がかなり少ない状況が懸念される。しかしながら、当初に期待されていたほどには活用されていないものの、少しずつ利用は増えているようだ。

ニッセイ基礎研究所では、6月末以降、ウィズコロナ・アフターコロナの行動を予測するために、20~60 歳代の全国に住む男女約2千人を対象とする「新型コロナウイルスによる暮らしの変化に関する調査」をインターネット調査にて、継続的に実施している。このデータを使って分析したこれまでのレポート1において、20~60歳代で新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の利用意向が強い人は、新型コロナウイルスの感染への不安があり、行動自粛を行っている人に多く、「自分の感染予防への効果は期待できなさそう」と考えつつも、「多くの人が利用することで、国内の感染が早く収束する」「濃厚接触通知があった場合に、優先的に検査を受けられる」とアプリを肯定的に捉えていていた。9月の調査では、6月の調査と比べて、接触確認アプリを「ぜひ利用したい(もう利用している)」は上昇していたが、「場合によっては利用したい」もあわせると利用意向は低下していた。

本稿では、12月に実施した「第3回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査2」のデータを使って、9月からの3か月でアプリ利用意向に変化はあったか、また、現在アプリを利用していない人について、どういった場面なら利用を検討するか尋ねた結果を紹介する。
 
1 村松容子「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)利用意向が強いのはだれか」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター2020年07月15日
村松容子「新型コロナ接触確認アプリ(COCOA)利用意向のある人の評価ポイント」ニッセイ基礎研究所 基礎研レター2020年10月23日
2 2020年12月19~21日に実施。インターネット調査。対象は、全国に住む20~69歳の男女個人(株式会社マクロミルのモニタ)。有効回答数2,069.
 

1――接触確認アプリのダウンロード数は夏以降一定ペースで増加

1――接触確認アプリのダウンロード数は夏以降一定ペースで増加

図表1は、新型コロナウイルス接触確認アプリのダウンロード数と陽性登録件数の推移である。いわゆる第2波と言われている7月の終わりの感染拡大時に一時ダウンロード数が急増したが、以降はほぼ一定のペースで伸びている。年末年始の感染拡大時には、ダウンロード数が特に増加することはなく、陽性登録件数のみ増加している。
図表1 接触確認アプリ(COCOA)ダウンロード数と陽性登録件数の推移

2――9月からの3か月間で「ぜひ利用したい(もう利用している)」はあまり伸びていない

2――9月からの3か月間で「ぜひ利用したい(もう利用している)」はあまり伸びていない

図表2 接触確認アプリ利用意向の推移 接触確認アプリを「ぜひ利用したい(もう利用している)」と「場合によっては利用したい」をあわせた利用積極層は、6月調査における41.3%から33.6%へと低下していた。リリース当初と比べて、「知らない・聞いたことがない」は1割程度と微増しており、普及は進んでいない(図表2)。「絶対に利用したくない」は6%弱、「利用したことはあるが、現在は利用していない」は5%弱だった。
図表3 「ぜひ利用したい(もう利用している)」の推移 「ぜひ利用したい(もう利用している)」は、6月から9月にかけて上昇したが、9月から12月の3か月間では横ばいで推移していた。

続いて、性別、年齢群団別、感染に関連する3つの不安を感じている人について推移をみた(図表3)。感染に関する不安とは、「自分や家族の感染による人間関係への悪影響(感染による健康状態の悪化)」「感染が懸念されても適切な検査が受けられない(適切な検査が受けられない)」「感染しても適切な治療が受けられない(適切な治療が受けられない)」の3つの質問について、それぞれ「非常に不安」または「やや不安」と回答した人を「不安を感じている」とみなした3

9月からの3か月間では60~69歳のみ「ぜひ利用したい(もう利用している)」が上昇傾向にあったが、それ以外はどの属性をみても、9月と同程度にとどまっていた。
 
3 選択肢は6つ(「非常に不安」から「全く不安を感じない」の5段階と「該当しない」)。
 

3――どうなったら利用すると思うか

3――どうなったら利用すると思うか

現在、接触確認アプリの利用意向が低い「どちらともいえない」「今のところ利用したくない」「絶対に利用したくない」「利用したことがあるが、現在は利用していない」と回答した人に対して、どうなったら利用を考えるかを、「その他」を含む11項目から複数回答で、または「利用するつもりはない」を選択してもらった。その結果、「セキュリティの不安がなければ」が最も高く28.7%、次いで「陽性者が確実に登録すれば(24.8%)」「アプリ利用者がもっと増えたら(18.9%)」「通知で検査が受けられれば(18.3%)」だった。

上位項目で、属性別に大きな差はない。利用を中断した人で「陽性者が確実に登録すれば」が高くなっており、陽性登録件数の少なさが利用中断の要因となっている可能性がある。

ただし、いずれの場合も「利用するつもりはない」と考えている割合は28.8%だった。
図表4 接触確認アプリをどうなったら利用するか(複数回答)
接触確認アプリを「ぜひ利用したい(もう利用している)」は、60~69歳では6月から9月、9月から12月のそれぞれで上昇しているが、それ以外は9月と同程度にとどまっており、利用するつもりがある人は、すでに利用を開始している可能性がある。

利用を検討するためには「セキュリティの不安がなければ」が最も高くなっている。セキュリティへの配慮は、当初より懸念されており、アプリが位置情報や個人情報を取得せず、一定期間経過後は削除されることは、リリース当初からアナウンスされているが、それでもセキュリティへの不安は強いようだ。

今後のアプリ利用の動向を引き続き追っていきたい。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2021年02月03日「基礎研レター」)

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