2021年01月22日

バイデン新政権発足、円相場への影響は?~マーケット・カルテ2月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利3ヶ月後の見通し ドル円は年初に一時1ドル102円台に下落した後、上昇に転じた。5日に行われた米上院決選投票の結果、(大統領と上下院の多数派が民主党で揃う)「トリプルブルー」が決まったうえ、大統領就任を控えたバイデン氏が巨額の経済対策を公表したことを受けて米景気回復期待や国債増発観測、量的緩和縮小の前倒し観測が高まり、米金利の上昇を通じてドル買いが強まったためだ。一時104円台前半を付けた後、足元も103円台半ばにあり、ドル安基調は一服している。

20日に発足したバイデン新政権は、基本的にドル高要因と考えられる。上下院の多数派を占めたことで、政策実現のハードルが下がった。先日に見られたように、大統領の掲げる財政出動による景気回復期待等が米金利押し上げを通じてドル高圧力になる。ただし、上院民主党はギリギリの過半数に過ぎないうえ、党内に極端な主張を持つ急進左派を抱えることから政策の調整は難航しやすく、規模や内容もトーンダウンしやすい。ドル円への影響度はマイルドなものになりそうだ。

当面は先日バイデン大統領が掲げた1.9兆ドルの経済対策の実現性を見定める時間帯に入り、ドルの上値は重くなりそうだ。その後、春先には実現の目途が見えてくるうえ、ワクチンの接種が進んで景気回復期待が強まることで、再びドル高に振れる展開を予想している。3カ月後の水準は105円前後と見ている。

ユーロ円は、今月上旬に米財政出動への期待を受けたリスク選好的な円安ユーロ高が進み、一時127円台を付けたが、欧州におけるコロナ対応の行動制限強化やイタリアの政局不安を受けて下落し、足元は126円付近にある。欧州景気は厳しさを増しており、今後もユーロには下落余地がありそうだ。しかし、既述の通り、春先には米経済対策への期待が高まり、リスク選好的な円売りユーロ買いが見込まれるため、3カ月後の水準は現状比横ばい圏と予想している。

長期金利は、今月も引き続き0.0%台前半のレンジ内で推移しているが、米金利上昇や日銀による金利変動幅拡大観測を受けて若干水準を切り上げている。日銀が金利の明確な上昇を促すとは思えないが、春先には米金利上昇が波及する可能性が高い。3か月後の水準は現状比で若干上昇とみている。
 
(執筆時点:2021/1/22)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2021年01月22日「基礎研マンスリー」)

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