2020年12月17日

じわじわ進む円高ドル安、いつまで続くのか?~マーケット・カルテ1月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し 12月の市場は月初から半ばにかけて、英米でのコロナワクチン接種開始を受けてリスク選好地合いとなった。ともにリスク回避通貨とされる円とドルは多くの通貨に対して売られたが、ドル円のペアでは強弱感が出ず、104円前後での推移が続いた。その後は米国で財政赤字に繋がる追加経済対策の合意期待が高まったうえ、昨日にFRBが量的緩和の指針(フォワードガイダンス)を強化したことでドルの先行き余剰感が強まり、足元では103円台前半までドル安が進んでいる。

FRBによる指針強化の余韻が残るなか、米追加経済対策は近く合意に至る可能性が高まっており、当面はドル売り圧力がさらに強まる可能性が高い。円独自の売り材料は特段見当たらないため、ドル円でも緩やかな円高ドル安進行が見込まれる。一方、今後ワクチンの接種が進むにつれて米経済活動正常化の織り込みが始まることで、春先にはFRBの緩和下とはいえ米金利がやや持ち直し、ドル円も上昇に転じると見ている。3か月後の水準は104円台と予想している。

ユーロ円では、今月に入り、ワクチン接種開始を受けたリスク選好的な円安ユーロ高が進み、足元では126円台前半にある。この間にECBが追加緩和を決定したが、予想の範囲内の対応に留まったため影響は限られた。ユーロに積極的な買い材料が出たわけではなく、リスク選好をネタとして消去法的にユーロが買われた面が強い。今後については、世界的に株価の過熱感が燻っているため、年初に一旦株価の調整に伴うリスク回避的なユーロ売りが発生する可能性が高い。一方、ワクチンの接種が進んでいくことはリスク回避地合いの緩和に繋がるため、3カ月後の水準は現状比でやや円高ユーロ安の125円前後と予想。

長期金利は、内外でのコロナ感染拡大に伴う根強い国債需要を受けて0.0%を若干上回る水準での低迷が続いている。第3次補正予算案で市場入札分の国債増発が避けられたことも抑制に寄与した。当面は内外での感染高止まりによって低迷が続くと見込まれるが、米欧でワクチン接種が進むにつれて、米金利上昇が波及する可能性が高い。3か月後の水準は現状比でやや上昇とみている。
 
(執筆時点:2020/12/17)
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2020年12月17日「基礎研マンスリー」)

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