2021年01月18日

「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(5)―2018年婚姻届全件分析(再婚女性&総括編)―

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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4――初婚再婚別・男女別の適齢期分析を総括して

これまで5回にわたって詳説してきた日本の2018年における結婚適齢期の分析結果をまとめたものが以下の図表である(図表5)。
【図表5】男女別、初婚再婚別、結婚年齢クロス表(歳)
結婚の4組に3組を占める初婚同士の結婚をイメージする場合、男性は27歳、女性は26歳が成婚ピーク年齢であり、婚姻届の5割に到達する(いわゆる適齢期)年齢は、男性28歳過ぎ、女性27歳である。

成婚がピークアウトした成婚発生イエローゾーンともいえる、婚姻届の7割ならびに8割に到達する年齢は、初婚男性は32歳と34歳半ば、初婚女性は30歳と32歳で2歳の差でしかない。人口動態調査では初婚夫婦の平均年齢差は1.7歳となってしばらくたつが、初婚男女の成婚状況も届け出の8割到達まで、ほぼこの2歳差で推移している。

昨今の晩婚化のイメージ(平均初婚年齢の上昇でイメージされがちである)は、統計上のピーク年齢との間に3歳以上の差があること(結婚しやすい年齢を高くイメージし過ぎる傾向)、そしてここが今回の分析結果において最も重要な点であるが、初婚男女では結婚適齢期に大きな差がない、ということである。
 
では、なぜ過大な晩婚化のイメージが根強く社会に流布しているのだろうか。

婚姻統計の分析者として2点、改めて強調しておきたい。
 
まず、シリーズ第3弾で解説した「平均初婚年齢を根拠とした晩産化イメージの一般認知度の高さの影響」は非常に大きい。

メディア報道や結婚に関する議論において、晩産化の象徴のように出される数字は決まって「平均初婚年齢の上昇データ」である。これまでのレポートにおける説明の繰り返しになるが、あくまでも平均値であって、実際の成婚件数の発生の分散状況から見た「発生件数の多い時期」と比べると、男女とも3歳以上も高く算出されている。

しかし「(平均)年齢をデータで確認している」という自信を読者に与えてしまいがちであり、高齢化によって60代以降80歳を過ぎても延々と少数であっても成婚が発生し続けている、という「統計的外れ値の集合体の影響」による平均年齢の3歳以上の上昇が全くイメージされていない。
 
もう一つは、再婚割合の上昇である。

今の団塊ジュニアが生まれた1971年から73年(現在40代後半人口)では、男性の再婚者は8%、女性の再婚者は6%であった。両親のどちらかが再婚者である、といった生育歴を持つ人々は非常に少ない。1980年に成婚したカップルであっても、男女ともに再婚者割合は10%、1990年でも男性13%、女性11%に過ぎない。しかし、2018年では男性20%、女性17%にまで再婚者の割合が上昇しており8、その結果、読者が身近に感じる「肌感覚での結婚」に、実は再婚者を含むカップル(4組に1組)が増えていることが、一般の成婚年齢のイメージをさらに晩婚化させていると思われる。

図表5からも、再婚者の結婚適齢期は初婚者に比べ、相手の婚歴問わず5~7歳程度年齢が高くなる。詳細は別のレポートに譲るが、男性の場合、40代後半以降の成婚は、そのほとんどが再婚者の成婚となっている。
 
5回のシリーズを通して読者に訴えたいことは、「若い世代のライフデザインを狂わせかねない誤った結婚年齢への思い込み」をできるだけ早く払拭する必要性がある、ということである。
 
どんなに高齢化社会となり、また健康増進策が進められても、「次世代人口が形成されるようなマッチングには、男女ともにマッチング相手に選ばれる年齢を含め、一定のバイオロジカル・リミットがある」ということ9を、人口動態の研究者として強く主張してこのシリーズの結語としたい。
 
8 2004年に男性18%、女性16%に達した。
9 フランスにおいては1990年代に広く社会に流布した考え方である。日本においては女性のみならず男性もしっかりと婚期とそれに連動した授かり期があることが認識されることによって、マッチング希望が叶う割合が進展することを願いたい。

【参考文献一覧】
 
厚生労働省.「人口動態統計」
 
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(1)―2018年婚姻届全件分析(初婚男性編)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年11月16日
 
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(2)―2018年婚姻届全件分析(再婚男性編)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年11月20日
 
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(3)―2018年婚姻届全件分析(初婚女性その1)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年12月7日
 
天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(4)―2018年婚姻届全件分析(初婚女性その2)―. ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2021年1月4日
 
天野 馨南子.「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差婚の希望の叶い方. ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2017年2月20日
 
天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(上)-未婚少子化データ考- 平成ニッポンの夫婦の姿.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月14日
 
天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月28日
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

(2021年01月18日「基礎研レポート」)

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