2020年11月19日

「ググる」より「タグる」?-Z世代の情報処理に関する試論的考察

生活研究部 研究員   廣瀨 涼

Z世代 消費文化 などの記事に関心のあるあなたへ

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1――はじめに

2020年、世界のデジタルデータの年間生成量は40ZB(ゼダバイト)を越え、2025年には175ZBに到達すると予想されている。我々の馴染み深いGB(ギガバイト)で換算すると1ZB=1兆GBとなり、175ZBは途方もない数字である。年々生成される情報量が増加していく中で、我々に益々情報の取捨選択が強いられる時代が訪れる。我々はインターネットに溢れる情報を全ては受容できない。しかし、情報の波は留まることを知らず、我々は一方的に情報を浴び続けている状態である。昨今ではマッチングアプリでパートナーを探す以外にも、飲食店を検索するアプリや音楽アプリなどでもスワイプで取捨選択するようになったが、若者は世の中にあふれる偶然目に入った情報をスマホでスワイプするかのように「必要」か「不要」かを即座に判断して、処理をしている。本レポートでは情報処理、検索方法に焦点をあて、如何にして若者が情報過多の時代を歩んでいるのか考察する。
 

2――他人のSNS投稿=疑似体験と言う考え方

2――他人のSNS投稿=疑似体験と言う考え方

若者は「トキ消費」や「コト消費」の一側面として動画を撮り、編集し、投稿することで自分らしさを表現している。以前はいわゆる“インスタ映え”のように、写真として映えることや承認欲求を充足させることが商品に求められ、機能性よりもその見た目で選別されることも多く、「物撮り」と呼ばれるような写真を撮ることを目的として購入されることも多かった。しかし、「トキ消費」や「コト消費」を、動画投稿を通じて行うZ世代(1996~2012年の間に生まれた世代)は、その商品を消費することで自分ならどのようにその商品を消費し、表現することができるかという、「モノ消費に見えるコト消費」によって自分らしさを追求している。そのため、モノを購入することで物質的な豊かさを実感したり(70年代)、流行やブランド品で他人と差別化しようとしたり(80年代)するなど、所有に重きを置いて物品が購入されていた世代とは異なり、購入した商品を使用したことによる結果から逆算して、消費の意思決定をしていると筆者は考えている。

また、Z世代の消費の特性として、収入は限られているのに、Z世代以前の世代と比べて膨大な情報が流れてくる事で消費したいと思う頻度や対象が増えたことや、一人当たりの興味関心(ヲタ活対象)が複数あり、支出を分配しなくてはいけないという点も挙げられる。そのため、「モノ消費に見えるコト消費」を中心とした他人のSNS投稿は、「疑似体験」としての機能を持ち、その消費をわざわざ自分がする必要があるのか、という判断材料にもなっている。SNSの投稿は、人々の可視化されたライフスタイルや消費結果が集積した情報ソースとなっているとも言えるだろう。このような背景から、Z世代は情報を取捨選択し、その情報を必要だと思っても(興味を持っても)、すぐには行動(消費)に移さない傾向がある。では、Z世代は取得した情報をいつ利用するのだろうか。また、どのようなプロセスを経て購買行動を起こすのだろうか。
 

3――二種類の情報処理

3――二種類の情報処理

筆者は若者の情報処理にはデータベース型とクラスタ型があると考えている。データベース型とは、カメラロールやブックマーク機能で気になるデータを保管し、必要なときに利用するタイプである。そもそも情報はすぐ古くなり、自身の興味もすごいスピードで変化するため、若者は情報や検索ワードをひとつひとつおぼえる必要がないと考えている。しかし、その場で興味のあるものを保存やスクリーンショットし、データベースのように管理している1。クロスフィニティ株式会社の「Instagramの保存機能と購入行動に関する調査(2018)」2によるとInstagramを参考にして実際に「購入」に至るまでに、全体の58%が「保存を利用」していた。また39%が「スクリーンショットをする」を選んでおり、調査者の多くがInstagramで遭遇した情報をデータベースに保管していることがわかっている。また、若者の多くがデータベースとして保管しているスクリーンショットをシェアしあうことで情報を共有している。若者がURLをシェアしないでスクリーンショットを好む理由は5つある。

(1)通信容量をかけずにシェアできる
(2)必要な部分だけを見せることができる
(3)画像にした方が見てもらえる可能性が高いと考えている
(4)URLを送る際の、コピー&ペーストの手間が省ける
(5)ラインではトーク上の画像検索で過去にシェアした画像を探し出せる

次にクラスタ型であるが、Z世代はSNSにおいて「#○○ヲタとつながりたい」「#○○クラスタとつながりたい」といったコミュニケーション相手を取捨選択するようなハッシュタグや、位置情報を利用したり、趣味ごとにアカウントを作成することでクラスタを分類し、タイムラインに流れる情報のトピックを統一している。クラスタとは“仲間や〇〇が好きな人たち”という意味でオタクと同義で使われている。ナイル株式会社の「Twitterアカウント所有数の調査(2019)」3によると20代では5割以上、10代では7割近くと、若い世代では複数アカウントを持つユーザーの方が主流になっている。さらに3個以上のアカウントを使い分ける人も10代、20代では3割以上いるなど、若者は趣味ごとにSNSのアカウントを持っている。趣味のアカウントは、同じ嗜好を持つ消費者を中心にフォローするため、タイムラインに流れる情報を、自身の趣味嗜好に関するものだけに整理することができる。このようにZ世代は流れる情報を取捨選択するだけでなく、流れる情報の種類も分類する事で、情報のノイズを減らしていると筆者は考えている。
図1 ハッシュタグによる表示したい情報の選別
 
1 特定の管理アプリや方法があるわけではなく、各々が保管のアルゴリズムを持っている。
2 https://croja.jp/events/instagram01
3 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000026355.html
 

4――SNS検索

4――SNS検索

また、Z世代の情報処理の特徴として「SNS検索」が挙げられる。SNS検索とは、SNSプラットホーム内の情報を検索することを指し、アカウント検索、投稿検索、ハッシュタグ検索が主な検索手法である。特にInstagramにおいては、自身が必要な情報を検索する際に、ハッシュタグ検索をすることが一般的であり、その行為を「タグる」と呼ぶ。従来からの「ググる」という言葉があるように、GoogleやYahooといった検索エンジンによるインターネット検索がメインストリームであったが、若者の多くは検索するモノによってはSNSを利用して検索しているのである。実際にリデル株式会社の「最近、検索によく使うサービス」4という調査をみると、Googleが33%、Twitterが31%、Instagramが24%、Yahoo!が12%と、SNSを主な検索サービスとして使用する若者が半数を超える。

では、どのような時にSNS検索が選ばれるのだろうか。例えばTwitterでは、外出先の天気や電車の遅延情報など瞬間的に必要な情報や、スポーツの試合やテレビの速報を知りたい時など、情報の鮮度が重視される際によく使用される。一方、SHIBUYA109labの調査によると遊びに行く場所を検索する際のツールとして83%がInstagramを上げるなど、Instagramはファッションや飲食店、観光地などを検索し、他の消費者の生の声を自身の消費行動に反映することを目的として検索される傾向がある。

前述したクロスフィニティ株式会社の同調査では、購買行動を起こす前に31%が「Instagram内で他の投稿を検索し、口コミ等を調べる」と回答し、また25%が「Instagram以外のSNS(Twitterなど)で検索し、口コミ等を調べるとしている。特に世代別にみると10代は「Instagram以外のSNS(Twitterなど)で検索し、口コミ等を調べる」が多い一方で、「web検索(GoogleやYahoo!で検索)し、口コミ等を調べる」が少ないなど、Z世代はSNSで遭遇した情報に対する追加情報収集を行うために、更にSNS検索を行うことが定着しているようである。
図2 SHIBUYA109 来館者 (15~24歳女性)が遊びに行く場所を検索するツール
SNS検索が定着した背景としてステルスマーケティングや口コミを装ったインターネットのページが増加し、検索エンジンでヒットする口コミに信憑性が乏しい点や、アフィリエイトを目的としたまとめサイトなどが乱立し、検索エンジンで調べても必要な情報までたどり着くことが困難であった点が挙げられる。一方でSNS検索は、Twitterを例に挙げると140字という少ない情報量で簡潔に必要な情報が即座に手に入り、更にはインフルエンサーから一般消費者まで幅広いクチコミを見ることができるのである。  

5――「ググる」より「タグる」?

5――「ググる」より「タグる」?

日本のInstagramユーザーのハッシュタグ検索回数は、グローバル平均の3倍にも上るという調査も存在する。マーケティング・リサーチ・キャンプの「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査 (2019年6月度)」5では、スマートフォンによるファッションやレジャースポット、グルメに関する情報収集方法について調査しているが、スマートフォンで流行のファッション情報を調べる人のうち、情報源としてInstagramを利用する人が最も多く(29.4%)、次いでGoogle(28.3%)だった。2016年5月度調査では、ファッションの情報源として最も利用率が高かったのはGoogle(39.8%)、次いでInstagram(17.1%)であったので、3年間でInstagramの利用率が拡大したことがわかる。年代別に見ると、10代で52.9%、20代で39.3%と、他の世代と比較して若年層ほどInstagramの利用率が高かった6

「レジャー情報収集時によく使うサービス」では、年代別にみると、10代(30.8%)と20代(29.0%)はInstagramで調べる人が最も多く、30代以降7はGoogleで調べる人が最も多かった。グルメ情報においても、Instagramが最も利用されており、特に10代は「今話題のグルメスポット検索」で53.3%、「人に自慢したくなるようなグルメスポット検索」で40.0%、「SNSのネタになるようなグルメスポット検索」で44.4%となっている。Z世代においては、検索内容によっては「ググる」よりも「タグる」ことが先行されていると言えるだろう。

一方でSNS検索は膨大な情報から興味のある情報をスクリーニングする機能はあるが、詳細検索には適さない。そのため、SNS検索で得た情報を基に、検索エンジンへとプラットホームを移行するのである。
 
5 https://ferret-plus.com/13470
6 30代:28.9%、40代:16.5%、50代:13.2%、60代:8.0%
7 30代:37.9%、40代:40.9%、50代:52.2%、60代:36.1%
 

6――若者が情報と出会うきっかけ

6――若者が情報と出会うきっかけ

消費行動という側面からみると、筆者は若者が情報と出会う特徴として3つあると考えている。まず(1)オーガニック検索である。これは検索エンジンやSNS検索を使用して、自身の知りたい情報を検索する行為であり、一般的なネット検索で得られる情報と考えたらわかりやすいだろう。次に(2)遭遇型である。TwitterのタイムラインやアルゴリズムによってリコメンドされたInstagramの検索画面など、検索行為をせずに流れてくる情報のことであり、多くのノイズ(不必要な情報)を含む。前述した通り、若者は溢れる情報から自身の必要な情報を取捨選択し、必要に応じて消費行動を起こしたり、保管してデータベースとして蓄積していく。最後に(3)掛け算型である。遭遇型で遭遇した新しい情報と自身のデータベースにある情報とが掛け合わされて(情報が補完され)再発見のきっかけを生む。また、冒頭で述べた通り、他人のSNS投稿は、「疑似体験」としての機能を持ち、その消費をわざわざ自分がする必要があるのかという判断材料にもなっている。SNSで遭遇した情報(他人の経験)とデータベースとして保管した既存の情報によって、情報が再生産され、新たに(消費行動を起こすかどうか)情報処理の対象となるのである。
図3 若者の情報処理プロセス

7――まとめ

7――まとめ

SNSがZ世代の購買行動において他の世代よりも大きな影響を与えているのは明確であり、マーケターは口コミによる影響のみならず、検索ツールや新規情報入手経路としてのSNSを意識する必要があると筆者は考える。例えば従来、AIDMA8やAISAS9が一般的な消費心理プロセスとして認知されていたが、SNSが情報チャネルの中心となった若者の消費心理プロセスには当てはまらないケースも多い。これに対して産業能率大学小々馬ゼミが試論的に「EIEEM」10というZ世代向けの消費心理プロセスを発表しているが、これを筆者なりに再解釈し整理したうえで結論に代えたいと思う。
図4 EIEEM
EIEEMは、Encounter(遭遇)、Inspired(ときめき)、Encourage(勇気づけ)、Event(イベント)、Mimic(真似)からなる。膨大な情報の波からさまざまな情報と“遭遇”するわけだが、そこで“ときめき”を感じた情報をデータベースとして保管するか、消費行動を起こすか選択がされる。消費行動を起こそうと考えた際に“勇気づけ”として他の消費者の消費行動を参照する。従来の口コミと違うところは、前述した通り、他人の消費行動を参照することは他人の消費の疑似体験をしていることとなり、自身がその消費をわざわざする必要があるのかという理由を探ると言う点である。その消費に自分なりの付加価値を見出して消費することができると確信した時、他の消費者を参照したことで得た勇気(づけ)は、消費をする動機となる。消費をする必要があると認識しても、再度データベースとして保管されるケースもあれば、即座に消費行動に移るケースもある。消費行動に移るとき、その消費は一種の“イベント”となる。Z世代以前の世代は、人生の大きな目標達成を追求することが幸福になると考える傾向が強かった。その幸福を達成するために生活する上での欲求が生まれ、その欲求を満たすために商品(サービス)を消費しており、いわば幸福は積み上げ式で大きくなると考えていたのである。一方、Z世代ははっきりとした達成目標の有無にかかわらず、「場面消費(一過性の消費)」によって自身や周りの幸福を追求する傾向がある11。このような背景のもと、検討が十分になされたうえで消費行動がされる事は、一種のイベントであると考えており、消費行動そのものが幸福をもたらす特別な行為と言えるのだろう。最後に“真似”であるが、他の消費者のようにSNSなどに投稿することで「モノ消費に見えるコト消費」となり、その消費も誰かにとっての疑似体験となり、勇気づけの要素となるのである。

本レポートは、主に若者のスマホの使用方法のヒアリング調査を基に考察した。すべての若者がこのようなプロセスの情報処理をしているとは言わないが、Z世代の情報処理に関する一側面として読んでいただけたら幸いである。
 
8 1920年代にアメリカの著作家、サミュエル・ローランド・ホールによって提唱された概念。ユーザーの購買決定プロセス  
を説明するためのフレームワーク。Attention(注目)、Interest(興味を持つ)、Desire(欲しいという欲求)、Memory(記憶)、Action(購買行動)から成る。
9 AIDMAの考え方をインターネットが普及した現在の消費行動にあてはめたもの。インターネットによる購買行動の主流
化に合わせ、電通が提唱したモデル。Attention(注目)、Interest(興味を持つ)、Search(検索)、Action(購買行動)、Share(共有する)から成る。
10 https://www.sanno.ac.jp/undergraduate/learning/al/sannoreal/18.html
11 https://www.kogoma-brand.com/wp-content/uploads/2016/01/5f8f08321fde37785f49b167d6570b7b.pdf
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生活研究部   研究員

廣瀨 涼 (ひろせ りょう)

研究・専門分野
消費文化、マーケティング、ブランド論、サブカルチャー、テーマパーク、ノスタルジア

(2020年11月19日「基礎研レポート」)

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【「ググる」より「タグる」?-Z世代の情報処理に関する試論的考察】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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