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- 2020~2022年度経済見通し(20年11月)
2020年11月17日
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1. 2020年7-9月期は前期比年率21.4%の大幅プラス成長
2020年7-9月期の実質GDPは、前期比5.0%(前期比年率21.4%)と4四半期ぶりのプラス成長になった。成長率のプラス幅は1980年以降のGDP統計(簡易遡及系列を含む)では最大となった。
緊急事態宣言の解除や特別定額給付金の効果から、民間消費が前期比4.7%の大幅増加となったことに加え、世界的な経済活動の再開に伴い輸出が前期比7.0%の高い伸びとなる一方、輸入が前期比▲9.8%の大幅減少となったことから、外需寄与度が前期比2.9%(前期比年率12.2%)と成長率を大きく押し上げた。
一方、企業収益の急速な悪化や先行き不透明感の高まりを背景に設備投資は前期比▲3.4%と2四半期連続の減少となったほか、緊急事態宣言下で着工戸数が落ち込んだことを反映し、住宅投資は前期比▲7.9%と4四半期連続で減少した。
2020年7-9月期は内外の経済活動の再開を受けて、大幅なプラス成長となったが、過去最大のマイナス成長となった4-6月期の落ち込みの6割弱を取り戻したにすぎない。また、日本経済は新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する前に、消費税率引き上げの影響で落ち込んでいた。直近のピークである2019年7-9月期と比較すると、2020年7-9月期の実質GDPは▲5.9%、民間消費は▲7.2%低い水準にとどまっている。経済活動の正常化に向けた足取りは重い。
緊急事態宣言の解除や特別定額給付金の効果から、民間消費が前期比4.7%の大幅増加となったことに加え、世界的な経済活動の再開に伴い輸出が前期比7.0%の高い伸びとなる一方、輸入が前期比▲9.8%の大幅減少となったことから、外需寄与度が前期比2.9%(前期比年率12.2%)と成長率を大きく押し上げた。
一方、企業収益の急速な悪化や先行き不透明感の高まりを背景に設備投資は前期比▲3.4%と2四半期連続の減少となったほか、緊急事態宣言下で着工戸数が落ち込んだことを反映し、住宅投資は前期比▲7.9%と4四半期連続で減少した。
2020年7-9月期は内外の経済活動の再開を受けて、大幅なプラス成長となったが、過去最大のマイナス成長となった4-6月期の落ち込みの6割弱を取り戻したにすぎない。また、日本経済は新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する前に、消費税率引き上げの影響で落ち込んでいた。直近のピークである2019年7-9月期と比較すると、2020年7-9月期の実質GDPは▲5.9%、民間消費は▲7.2%低い水準にとどまっている。経済活動の正常化に向けた足取りは重い。
(大打撃を受けた対面型サービス業)
景気は、緊急事態宣言の解除を受けて2020年5月を底に持ち直している。景気動向指数のCI一致指数は、2020年6月から9月まで4ヵ月連続で上昇し、2019年8月から「悪化」が続いていた景気動向指数(CI一致指数)の基調判断は、2020年8月に「下げ止まり」へと上方修正された。
緊急事態宣言下で極めて大きな落ち込みを記録した個人消費は5月を底に持ち直しているが、引き続きコロナ前の水準を大きく下回っている。「家計調査(総務省統計局)」の実質消費支出の動きを形態別に見ると、財については巣ごもり需要の拡大や特別定額給付金の効果からすでにコロナ前の2019年平均の水準を上回っているのに対し、サービスは緊急事態宣言時の落ち込みが非常に大きかったことに加え、その後の戻りも弱い。特に、対面型サービス消費(一般外食、交通、宿泊料、パック旅行費、入場・観覧・ゲーム代)については、2020年4、5月にコロナ前の2割程度にまで落ち込んだ後、直近(2020年9月)でも5割程度の水準にとどまっている。
景気は、緊急事態宣言の解除を受けて2020年5月を底に持ち直している。景気動向指数のCI一致指数は、2020年6月から9月まで4ヵ月連続で上昇し、2019年8月から「悪化」が続いていた景気動向指数(CI一致指数)の基調判断は、2020年8月に「下げ止まり」へと上方修正された。
緊急事態宣言下で極めて大きな落ち込みを記録した個人消費は5月を底に持ち直しているが、引き続きコロナ前の水準を大きく下回っている。「家計調査(総務省統計局)」の実質消費支出の動きを形態別に見ると、財については巣ごもり需要の拡大や特別定額給付金の効果からすでにコロナ前の2019年平均の水準を上回っているのに対し、サービスは緊急事態宣言時の落ち込みが非常に大きかったことに加え、その後の戻りも弱い。特に、対面型サービス消費(一般外食、交通、宿泊料、パック旅行費、入場・観覧・ゲーム代)については、2020年4、5月にコロナ前の2割程度にまで落ち込んだ後、直近(2020年9月)でも5割程度の水準にとどまっている。
対面型サービス消費の減少は、対面型サービス業の活動水準、収益の落ち込みに直結している。経済産業省の「第3次産業活動指数」は、2020年3月から5月にかけて急低下した後、6月以降は持ち直しているが、旅客運送業、宿泊業、娯楽業などの対面型サービス業1の活動水準は依然としてコロナ前(2019年平均)を大きく下回っている。
また、財務省の「法人企業統計」によれば、2020年4-6月期の経常利益(金融業、保険業を除く)は前年比▲46.6%の大幅減益となったが、このうち▲18.5%が対面型サービス業による寄与となった。2019年の全産業の経常利益のうち対面型サービス業の割合は約8%にすぎなかったが、運輸業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業の全てが赤字となったため、2020年4-6月期の全産業の減益に対する寄与率は約40%に達した。
また、財務省の「法人企業統計」によれば、2020年4-6月期の経常利益(金融業、保険業を除く)は前年比▲46.6%の大幅減益となったが、このうち▲18.5%が対面型サービス業による寄与となった。2019年の全産業の経常利益のうち対面型サービス業の割合は約8%にすぎなかったが、運輸業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業の全てが赤字となったため、2020年4-6月期の全産業の減益に対する寄与率は約40%に達した。

しかし、その一方でこのところ新型コロナウイルスの感染者数が拡大していることから、外出自粛や接触機会削減の動きが再び強まるリスクがある。

1 各統計の業種分類、品目分類によって対面型サービスの範囲は異なる
ただし、経済活動の水準が元に戻らない中で無理に雇用を維持し続けることは、新規雇用、特に新卒採用の抑制につながる恐れがある。実際、新たな失業者(前職の産業別失業者)は一定程度抑えられているのに対し、新規就業者数は2020年7-9月期に前年差▲30万人(4-6月期:同▲17万人)となり、卸・小売業、宿泊・飲食業を中心に減少ペースが加速している。
景気はすでに底打ちしているものの、もともと失業率は景気の遅行指標であるうえ、雇用調整助成金の拡充を背景とした企業内の雇用保蔵が将来の雇用創出を妨げ、雇用情勢の改善を遅らせる可能性がある。失業者数は直近のボトムである2019年10-12月期の156万人から2020年7-9月期には202万人まで増加したが、2021年4-6月期には241万人まで増加するだろう。失業率は2020年度末から2021年度初にかけて3.5%まで上昇した後、2021年度入り後は徐々に低下するものの、そのペースは緩やかなものにとどまり、2022年度末でも3.3%と高止まりが続くと予想する。
なお、今回の見通しでは、2020年12月末までとされている雇用調整助成金の特例措置は2021年以降も継続する一方、助成額、助成率は段階的に引き下げることを前提としている。
景気はすでに底打ちしているものの、もともと失業率は景気の遅行指標であるうえ、雇用調整助成金の拡充を背景とした企業内の雇用保蔵が将来の雇用創出を妨げ、雇用情勢の改善を遅らせる可能性がある。失業者数は直近のボトムである2019年10-12月期の156万人から2020年7-9月期には202万人まで増加したが、2021年4-6月期には241万人まで増加するだろう。失業率は2020年度末から2021年度初にかけて3.5%まで上昇した後、2021年度入り後は徐々に低下するものの、そのペースは緩やかなものにとどまり、2022年度末でも3.3%と高止まりが続くと予想する。
なお、今回の見通しでは、2020年12月末までとされている雇用調整助成金の特例措置は2021年以降も継続する一方、助成額、助成率は段階的に引き下げることを前提としている。
2 仕事を持ちながら,調査週間中に少しも仕事をしなかった者のうち、雇用者で給料・賃金の支払を受けている者又は受けることになっている者、自営業主で自分の経営する事業を持ったままで,その仕事を休み始めてから30日にならない者
3 調査週間中に収入を伴う仕事を1時間以上した者
(2020年11月17日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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