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2020年10月12日
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6――GoToトラベル利用積極層の特徴~お金や時間に余裕のある層、不安が弱く、見通しが明るい層
なお、デモグラフィック属性別に感染不安や今後の見通しの状況を見ると、利用積極層の多いデモグラフィック属性で、必ずしも感染不安が弱く、見通しが明るいわけではない。しかし、一致する部分もあり、例えば、利用積極層の多い若者では、感染しても適切な治療が受けられない不安や世間からの偏見、仕事がなくなることや収入減少に対する不安のない層が多く、感染状況の収束や日本経済の見通しを比較的明るく捉えている層が多い傾向がある(図表8)。また、同様に利用積極層の多い公務員や正社員・正職員では、治療が受けられない不安や収入減少への不安のない層が多く、感染状況の収束の見通しを比較的明るく捉えている層が多い傾向がある(図表9)。そして、世帯年収1,000~1,500万円では全体的に不安のない層が多く、感染による収入減少に対する不安のない層は高所得層ほど多い(図表10)。
一方で、利用積極層の多い、子のいないシニア層では感染に関わる不安のない層は少なく、見通しを明るく捉えているわけではない。また、公務員では感染による世間からの偏見への不安のない層は必ずしも多くなく、日本経済の見通しを明るく捉えているわけではない。
一方で、利用積極層の多い、子のいないシニア層では感染に関わる不安のない層は少なく、見通しを明るく捉えているわけではない。また、公務員では感染による世間からの偏見への不安のない層は必ずしも多くなく、日本経済の見通しを明るく捉えているわけではない。
2 久我尚子「感染不安と消費行動のデジタルシフト」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2020/8/18)
7――おわりに~GoTo東京追加でも観光業の劇的な回復は難しいが、企業の創意工夫に期待
10月からGoToトラベルの対象地域に東京も加わり、消費者の需要喚起が一層期待される。しかし、当調査で見た通り、東京在住であることや東京が対象地域でないことを理由に利用をしていない消費者は少数であり、感染がおさまっていないことが最大の理由であった。
現在のところ、新型コロナウイルスのワクチンや特効薬は開発段階にあり、コロナ禍はしばらく続きそうだ。また、秋以降はインフルエンザとの同時流行の懸念もある。よって、GoToトラベルに東京が追加されたとはいえ、短期間での観光業の劇的な回復は期待しにくいだろう。
一方で、コロナ禍における消費者の経験値は上がっている。また、企業の創意工夫も至るところに見られるようになってきた。例えば、参加者や観光地の安心・安全を担保するためにPCR検査付きの旅行プランが登場したり、レストランではソーシャルディスタンスを保つために使わない座席にぬいぐるみを配置するなど、感染対策を楽しく実施する事例も増えてきた。今後とも、十分な感染対策のもとで、消費者の安心感が醸成されるような企業の取り組みに期待したい。
消費喚起策に期待を向ける一方、懸念されるのは低所得層だ。現在、飲食や観光など、新型コロナによって経営に打撃を受けた業種における立場の弱い労働者から、雇い止めなどの影響があらわれている3。GoToキャンペーンを利用したくてもできない、利用するどころではないという生活者も徐々に増えている。これらの層に対しては、消費喚起策とは別途、生活支援策が必要だ。「特別定額給付金」は迅速さの観点から、国民1人当たり一律10万円の給付となったが、今後は生活困窮世帯に対して、就業状況や家族構成などの各自の事情に合わせた手厚い支援策が継続的に必要だろう。
なお、本稿で用いた「新型コロナによる暮らし変化に関する調査」は継続的に実施予定であり、今後ともコロナ禍の消費者動向をタイムリーに捉えていく予定だ。
3 久我尚子「家計消費で見る足元の消費」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2020/8/24)
現在のところ、新型コロナウイルスのワクチンや特効薬は開発段階にあり、コロナ禍はしばらく続きそうだ。また、秋以降はインフルエンザとの同時流行の懸念もある。よって、GoToトラベルに東京が追加されたとはいえ、短期間での観光業の劇的な回復は期待しにくいだろう。
一方で、コロナ禍における消費者の経験値は上がっている。また、企業の創意工夫も至るところに見られるようになってきた。例えば、参加者や観光地の安心・安全を担保するためにPCR検査付きの旅行プランが登場したり、レストランではソーシャルディスタンスを保つために使わない座席にぬいぐるみを配置するなど、感染対策を楽しく実施する事例も増えてきた。今後とも、十分な感染対策のもとで、消費者の安心感が醸成されるような企業の取り組みに期待したい。
消費喚起策に期待を向ける一方、懸念されるのは低所得層だ。現在、飲食や観光など、新型コロナによって経営に打撃を受けた業種における立場の弱い労働者から、雇い止めなどの影響があらわれている3。GoToキャンペーンを利用したくてもできない、利用するどころではないという生活者も徐々に増えている。これらの層に対しては、消費喚起策とは別途、生活支援策が必要だ。「特別定額給付金」は迅速さの観点から、国民1人当たり一律10万円の給付となったが、今後は生活困窮世帯に対して、就業状況や家族構成などの各自の事情に合わせた手厚い支援策が継続的に必要だろう。
なお、本稿で用いた「新型コロナによる暮らし変化に関する調査」は継続的に実施予定であり、今後ともコロナ禍の消費者動向をタイムリーに捉えていく予定だ。
3 久我尚子「家計消費で見る足元の消費」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2020/8/24)
(2020年10月12日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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