2025年04月01日

「こづかい」が20年で7割減少?-経済不安、キャッシュレスやサブスクなど消費のデジタル化の影響も

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

文字サイズ

■要旨
 
  • 2月に発表された内閣府「日本経済レポート(2024年度)」にて、20年間で勤労者世帯の「こづかい(使途不明金)」が7割減少との分析が一部で話題となった。物価高で負担は増しているが、大幅な減少幅を意外に思う人も多いだろう。「こづかい」は「食費」(主に外食)や「交通・通信」、「教養娯楽」など個人単位で支払うことが多い費目が中心で、近年の減少には「被服及び履物」や「教養娯楽」の減少の影響が大きい。
     
  • 「こづかい」の大幅な減少には、まずは経済不安による消費抑制があげられるものの、それだけで説明できるのだろうか。消費のデジタル化の進展や、消費社会・価値観の変化(シェアリング市場や中古品市場の拡大など)も影響を与えているだろう。キャッシュレス決済や家計簿アプリの普及で使途不明金が減り、サブスクリプションサービスによって個人の支出が世帯全体の出費に組み込まれるケースが増えている。
     
  • 「こづかい」を増やすには、賃上げに期待するだけではなく、自分のスキルを活かした副業収入を得ることや、フリマアプリなどを活用した不要品の循環など、今の時代、所得を増やす方法は多様化している。また、市場の不安定はあるものの、長期的には投資も有効な手段だ。新たな年度を迎えるにあたり、あらためて家計を見直してみてはいかがだろうか。


■目次

1――「こづかい(使途不明金)」が20年で7割減少
 ~「被服及び履物」や「教養娯楽」の減少の影響大
2――こづかい減少の背景
 ~経済不安、キャッシュレスやサブスクなど消費のデジタル化の影響も
3――こづかいを増やすには?
 ~賃上げ期待もあるが、副業や不要品循環、投資など個人の工夫が重要

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月01日「基礎研レター」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【「こづかい」が20年で7割減少?-経済不安、キャッシュレスやサブスクなど消費のデジタル化の影響も】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

「こづかい」が20年で7割減少?-経済不安、キャッシュレスやサブスクなど消費のデジタル化の影響ものレポート Topへ