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2025年05月01日

米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は3年ぶりのマイナス成長、市場予想も小幅に下回る

4月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は25年1-3月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。1-3月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で▲0.3%(前期:+2.4%)と22年1-3月期以来のマイナス成長となったほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の▲0.2%も小幅に下回った(図表1・2)。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
1-3月期の成長率を需要項目別にみると、設備投資が前期比年率+9.8%(前期:▲3.0%)となったほか、在庫投資の成長率寄与度が+2.25%ポイント(前期:▲0.84%ポイント)と前期から大幅なプラスに転じた(図表2)。また、住宅投資が前期比年率+1.3%(前期:+5.5%)、個人消費が+1.8%(前期:+4.0%)と前期から伸びが鈍化したものの、プラス成長を維持した。

一方、政府支出が▲1.4%(前期:+3.1%)と前期からマイナスに転じたほか、外需の成長率寄与度が▲4.83%ポイント(前期:+0.26%ポイント)と1950年以降で最大のマイナス幅となって成長率を大幅に押し下げた。

これらの結果、GDPから在庫投資と外需を除いた国内最終需要は前期比年率+2.3%(前期:+3.0%)となり、前期からは鈍化したものの堅調な伸びを維持した。

このように、当期は個人消費の鈍化や外需の大幅な成長押し下げもあって22年1-3月期以来のマイナス成長となった。しかしながら、後述するように外需はトランプ関税前の財輸入の駆け込み需要による影響が大きく、国内最終需要の堅調な伸びにみられるように米国の実体経済は成長率が示すほど弱くはないと言えよう。また、4-6月期には駆け込み需要の反動で外需の成長率寄与度はプラスに転じる可能性が高い。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)自動車関連の落ち込みで耐久財消費が減少
1-3月期の個人消費は、財消費が前期比年率+0.5%(前期:+6.2%)と高い伸びがとなった前期から大幅に伸びが鈍化した(図表3)。サービス消費も+2.4%(前期:+3.0%)と前期から伸びが鈍化した。

財消費では、耐久財が▲3.4%(前期:+12.0%)と2桁の伸びとなった前期からマイナスに転じたほか、非耐久財が+2.7%(前期:+3.1%)とこちらも前期から伸びが鈍化した。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲11.1%(前期:+19.7%)と前期から2桁のマイナスに転じて耐久財消費全体を押し下げた。さらに、家具・家電が+1.6%(前期:+5.4%)、娯楽・スポーツカーが+2.5%(前期:+13.9%)と前期から伸びが鈍化した。

非耐久財は食料・飲料が+2.5%(前期:+1.8%)、衣料・靴が+6.7%(前期:+5.0%)と前期から伸びが加速したほか、ガソリン・エネルギーが+4.5%(前期:▲1.9%)と前期からプラスに転じた。一方、その他の非耐久財消費が+1.2%(前期:+5.0%)と前期から伸びが鈍化した。これは医薬品が▲2.1%(前期:+4.4%)とマイナスに転じたことが大きい。

サービス消費は、輸送サービスが+5.3%(前期:+3.7%)、住宅・公共料金が+3.4%(前期:+1.1%)、娯楽サービスが+4.7%(前期:+4.4%)と前期から伸びが加速した。一方、医療サービスが+4.1%(前期:+4.7%)、金融サービスが+1.9%(前期:+3.1%)と前期から伸びが鈍化したほか、飲食・宿泊サービスが▲2.2%(前期:+2.9%)と前期からマイナスに転じるなどマチマチの結果となった。

実質可処分所得は前期比年率+2.7%(前期:+1.9%)と前期から伸びが加速した(図表4)。貯蓄率は4.0%(前期:3.7%)と小幅ながら前期から上昇した。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
(民間投資)設備機器投資が大幅に増加
1-3月期の民間設備投資は建設投資が前期比年率+0.4%(前期:+2.9%)と前期から伸びが鈍化した一方、知的財産投資が+4.1%(前期:▲0.5%)と前期からプラスに転じたほか、設備機器投資が+22.5%(前期:▲8.7%)と2桁のプラスに転じて設備投資全体を大幅に押し上げた(図表5)。
(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 建設投資では資源関連が+9.3%(前期:▲1.6%)と前期からプラスに転じた。一方、電力・通信が+5.9%(前期:+9.8%)、商業・医療が+0.7%(前期:+3.1%)と前期から伸びが鈍化したほか、製造業が▲4.3%(前期:+2.3%)と前期からマイナスに転じて建設投資を押し下げた。

設備機器投資は、産業機器が▲1.4%(前期:▲1.0%)と前期に続いてマイナスとなった一方、情報処理関連が+69.3%(前期:+▲7.3%)、輸送機器が+13.2%(前期:▲17.2%)と前期から2桁のプラスに転じて設備機器投資を大幅に押し上げた。

知的財産投資では、、娯楽・文学等が▲3.2%(前期:+0.1%)と前期からマイナスに転じた一方、研究・開発が+1.4%(前期:▲3.2%)と前期からプラスに転じたほか、ソフトウエアが+8.6%(前期:+2.5%)と前期から伸びが加速して知的財産投資全体を押し上げた。

最後に住宅投資は、集合住宅が▲11.5%(前期:▲18.1%)とマイナス幅は縮小も、前期に続きマイナスとなった一方、戸建てが+5.9%(前期:+5.1%)と前期から伸びが加速した。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)国防関連支出が大幅に減少
1-3月期の政府支出は、連邦政府が前期比年率▲5.1%(前期:+4.0%)と前期からマイナスに転じたほか、州・地方政府支出も+0.8%(前期:+2.5%)と前期から伸びが鈍化した(図表6)。

連邦政府支出では、非国防支出が▲1.0%(前期:+2.9%)、国防関連支出が▲8.0%(前期:+4.8%)といずれも前期からマイナスに転じた。とくに国防関連支出のマイナスが大きくなっているが、ウクライナ向けの軍事支援を一時停止していた影響とみられる。
(貿易)トランプ関税前の駆け込み需要で財輸入が大幅に増加
 1-3月期の輸出入は輸出が前期比年率+1.8%(前期:▲0.2%)、輸入が+41.3%(前期:▲1.9%)と輸出入ともに前期からプラスに転じる中、輸入が20年7-9月期以来の伸びと、輸出の伸びを大幅に上回った。

輸出を仔細にみると、サービス輸出が▲0.7%(前期:+8.5%)と前期からマイナスに転じた一方、財輸出が+3.2%(前期:▲4.6%)と前期からプラスに転じて輸出全体を押し上げた(図表7)。

財輸出では、食料・飲料が▲22.9%(前期:+11.0%)となったほか、石油・石油製品が▲28.7%(前期:+32.5%)となった工業用原料が▲14.2%(前期:+9.6%)といずれも前期からマイナスに転じた。一方、自動車関連が+4.0%(前期:▲9.7%)と前期からプラスに転じたほか、資本財(自動車関連除く)が+34.3%(前期:▲20.8%)、消費財(食料、自動車関連除く)が+16.3%(前期:▲20.3%)と前期から2桁のプラスに転じて財輸出全体を押し上げた。

サービス輸出では、輸送が▲3.0%(前期:+13.7%)、旅行が▲7.1%(前期:+10.7%)といずれも前期からマイナスに転じた。

一方、輸入はサービス輸入が+8.6%(前期:+10.9%)と前期から小幅に鈍化も堅調を維持したほか、財輸入が+50.9%(前期:▲4.9%)と前期から大幅なプラスに転じた(図表8)。

財輸入では、食料・飲料が+7.4%(前期:+16.2%)と前期から伸びが鈍化した。一方、資本財(自動車関連除く)が+51.3%(前期:▲13.5%)、工業用原料が+9.6%(前期:▲6.6%)、自動車関連が+13.0%(前期:▲11.5%)と前期からプラスに転じた。さらに、消費財(食料、自動車関連除く)が+141.5%(前期:+13.4%)と2桁の伸びとなった前期から大幅に伸びが加速して財輸入全体を大幅に押し上げた。消費財輸入の大幅な増加はトランプ関税前の駆け込み需要を反映しているとみられる。

サービス輸入は、輸送が+23.5%(前期:+11.8%)と前期から伸びが加速したものの、旅行が+0.4%(前期:+48.0%)と前期から大幅に伸びが鈍化した。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)PCE価格指数は総合、コアともに前期から前期比は上昇、前年同期比は横這い
1-3月期のGDP価格指数は前期比年率+3.7%(前期:+2.3%)と前期から上昇したほか、市場予想(同+3.1%)も上回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+3.5%(前期:+4.8%)と実質成長率に比べて前期からの低下幅が縮小した(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+3.6%、前年同期比+2.5%(前期:+2.4%、+2.5%)と前期に比べて前期比は上昇した一方、前年同期比は横這いとなった(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は、前期比年率+3.5%、前年同期比+2.8%(前期:+2.6%、+2.8%)となり、こちらも前期に比べて前期比は上昇、前年同期比は横這いとなった。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年05月01日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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