2020年10月05日

米雇用統計(20年9月)-雇用者数は前月比+66.1万人(前月:+148.9万人)と大幅に伸びが鈍化、市場予想も下回る

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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1.結果の概要:失業率は市場予想以上に改善も、雇用者数は市場予想を下回る

10月2日、米国労働省(BLS)は9月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+66.1万人の増加1(前月改定値:+148.9万人)と、+137.1万人から上方修正された前月から雇用の伸びが大幅に鈍化したほか、市場予想の+85.9万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(後掲図表2参照)。

失業率は7.9%(前月:8.4%、市場予想:8.2%)と、こちらは前月から▲0.5%ポイントの低下となり、市場予想を上回る低下幅となった(後継図表6参照)。労働参加率2は61.4%(前月:61.7%、市場予想:61.9%)と前月から▲0.3%ポイント低下し、市場予想を下回った(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:労働市場の回復基調は持続も、雇用回復のモメンタムは大幅に低下

9月の非農業部門雇用者数は5ヵ月連続で増加となったものの、雇用回復ペースは6月の前月比+478万人をピークに大幅に鈍化している。この結果、5ヵ月の累積増加幅は1,142万人と3月~4月の2ヵ月間で喪失した2,216万人の雇用減に対して5割程度を回復したに過ぎない。これは、9月の雇用回復ペースが今後も持続する場合には、雇用水準が新型コロナ流行前の水準に回復するのに16ヵ月超の期間が必要になる計算だ。雇用回復ペースは非常に緩やかと言えよう。

失業率は予想を下回ったものの、労働参加率の低下にみられるように、9月は職探しを諦めて労働市場から退出した人が増加したことに伴うテクニカルな低下を反映している部分もあり、改善を割り引いて考える必要がある。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.1%(前月改定値:+0.3%、市場予想:+0.2%)と、+0.4%から下方修正された前月、市場予想を下回った。前年同月比は+4.7%(前月改定値:+4.6%、市場予想:+4.8%)と、こちらは+4.7%から下方修正された前月は上回ったものの、市場予想は下回った(図表1)。このため、9月は前月比、前年同月比ともに、市場予想を下回る賃金の伸びに留まった。

このようにみると、9月は5月以降の労働市場の回復持続を確認する一方、労働市場の回復モメンタムの低下が続いており、労働市場が新型コロナ流行前の20年2月の水準に回復するのに長期間を要することを確認する結果と言えよう。

新型コロナの感染拡大が続く中、春先に実施された多くの経済対策の政策効果が剥落しており、労働市場の回復を確かなものにするためにも、追加経済対策の早期の実現が求められる。

3.事業所調査の詳細:州・地方政府の教育関連雇用が大幅に減少

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+78.4万人(前月:+97.7万人)と5ヵ月連続の増加となったものの、前月から増加幅がさらに縮小した(図表2)。
(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 民間サービス部門の中では、娯楽・宿泊が前月比+31.8万人(前月:+14.3万人)となり、前月から伸びが加速したほか、9月の雇用全体の増加幅のおよそ半分を占める増加となった。また、医療・社会扶助サービスも+10.8万人(前月:+10.0万人)と小幅ながら伸びが加速した。一方、人材派遣業が+0.1万人(前月:+10.2万人)と大幅に伸びが鈍化した専門・ビジネスサービスが+8.9万人(前月:+18.8万人)となったほか、小売業が+14.2万人(前月:+26.1万人)と前月から伸びが鈍化した。

財生産部門は前月比+9.3万人(前月:+4.5万人)と、こちらは前月から伸びが加速した。製造業が+6.6万人(前月:+3.6万人)となったほか、建設業が+2.6万人(前月:+1.7万人)と、いずれも前月から伸びが加速した。

一方、政府部門は前月比▲21.6万人(前月:+46.7万人)と、こちらは前月から大幅な減少に転じた。内訳をみると、国政調査に伴う臨時雇用が減少したことから連政府が▲3.4万人(前月:+25.0万人)と減少に転じたほか、州・地方政府も教育関連雇用が▲28万人の大幅な減少となったことから、▲18.2万人(前月:+21.7万人)と前月から減少に転じた。
前月(8月)と前々月(7月)の雇用増加数(改定値)は、前月が+148.9万人(改定前:+137.1万人)と+11.8万人上方修正されたほか、前々月が176.1万人(改定前:+173.4万人)と、こちらも+2.7万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+14.5万人の上方修正となった(図表3)。
 
BLSの公表に先立って9月30日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+74.9万人(前月改定値:+48.1万人、市場予想:+64.9万人)と+42.8万人から上方修正された前月を上回ったほか、市場予想も上回った。ADP統計が前月から伸びが加速する一方、雇用統計は前月から伸びが鈍化しており、9月の両統計で異なる動きとなった。
 
9月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が29.47ドル(前月:29.45ドル)となり、前月から+2セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.7時間(前月:34.6時間)とこちらは+0.1時間増加した。この結果、週当たり賃金は1,022.61ドル(前月:1,018.97ドル)と前月から増加した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働参加率が低下、非労働力人口は増加

家計調査のうち、9月の労働力人口は前月対比で▲69.5万人(前月:+96.8万人)と前月から減少に転じた。内訳を見ると、就業者数が+27.5万人(前月:+375.6万人)と前月から伸びが大幅に鈍化したことに加え、失業者数が▲97.0万人(前月:▲278.8万人)と減少幅が就業者数の増加幅を上回った。一方、非労働力人口は+87.9万人(前月:+23.0万人)と増加に転じており、9月は職探しを諦めて労働市場から退出した人数が増加した。

これらの結果、労働参加率は61.4%と前月から低下した(図表5)。また、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率も9月が80.9%(前月:81.4%)と前月から▲0.5%ポイント低下した。男女の内訳は、男性が87.7%(前月:88.1%)と前月から▲0.4%ポイント、女性も74.2%(前月:74.9%)と▲0.7%ポイントといずれも前月から低下した。このため、9月は労働参加率の回復が足踏みとなった。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
一方、BLSは過去6ヵ月と同様に本来失業者として認識されるべき人数の一部が欠勤として認識されていることによって、失業率が過小評価されている可能性を示唆した。BLSは、これらの人数が78万人程度と推計されるとしており、これを加味した失業率は8.3%と実際に発表された7.9%から+0.4%ポイント押し上げられる可能性があるとした。もっとも、これは4月に同様の理由から4.8%ポイント押し上げられていたのに比べて影響が軽微となっていることを示していると言えよう。
 
9月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は240.8万人(前月:162.4万人)と前月から+78.4万人増加した。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアも19.1%(前月:12.0%)と前月から+7.1%ポイント増加した(図表7)。さらに、平均失業期間は20.7週(前月:20.2週)と前月から+0.5週長期化した。
 
最後に、周辺労働力人口(192.2万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(630.0万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、9月が12.8%(前月:14.2%)と前月から▲1.4%ポイント低下した(図表8)。また、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+4.9%ポイント(前月:+5.8%ポイント)と、前月から▲0.9%ポイント縮小した。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
 
 

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窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2020年10月05日「経済・金融フラッシュ」)

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