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企業の新型コロナウイルス対策はこの1か月間でどう変わったか~取り組み実施は拡大。テレワークは大企業で拡大

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――調査時期の状況――新型コロナウイルスの拡大防止に向けた取組が企業へ要請される
3月末までの経緯を振り返ると、新型コロナウイルスが全国紙で最初に取り上げられたのは1月9日、日本で最初に感染が確認されたのが1月16日で、PCR検査での陽性者は2月22日に100人を、3月22日に1000人を超えた1。2月21日に、厚生労働省は、一般社団法人日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会といった経済団体へ、職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて、労働者が発熱などの風邪の症状が見られる際に休みやすい環境や、労働者が安心して休むことができるよう収入に配慮した病気休暇制度の整備、感染リスクを減らす観点からテレワークや時差通勤の積極的な活用の促進などの取り組みへの協力を要請した。さらに、3月2日には、全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校が要請され、企業にとっては、子どもをもつ従業員への対応も必要となった。
1 厚生労働省「国内の状況について(2月22日12時時点版)」「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和2年3月22日版)」より。国内、空港検疫、チャーター便帰国者の合計。
2――使用したデータと分析方法
今回分析に使用したデータは、2020年2月28日から3月30日に(株)ニッセイ基礎研究所が実施した「被用者の働き方と健康に関する調査(インターネット調査)」である。対象は、調査会社のモニタのうち、18~64歳の男女被用者で、各都道府県の性、および10歳刻みの年齢群団の構成が、2015年国勢調査の構成と合致するように回収した。回収数は5,594サンプルである2。今回の調査対象には非正規の就労者も含まれているが、フルタイム就労者を想定した調査であり、所定労働時間はおよそ9割が7~8時間だった。
調査依頼は2月末と3月中旬の2度にわたって行った。2月末は昨年度実施した同種の調査に回答した人に再度依頼、3月中旬は新規の人に依頼をした。本来は、回収時期による差の分析を目的とした調査ではなかったため、回答者の属性を2月末と3月中旬で合致させるなどの調整はしていない。2月末に依頼をした人については、3月末まで回答を可能としていたが、2月末に依頼した人はおおむね3月上旬に回答を終えていた。2月末依頼分(2月末~3月上旬に回答)と、3月中旬依頼分(3月中旬~3月下旬に回収)の回収は、それぞれ3,298と2,296サンプルだった。
2 地域別の企業規模、業種は、なるべく実態に近いように回収した。
前稿「新型コロナウイルス感染予防に対する企業の取り組み-被用者に対するアンケート調査より」3では、各種取り組みは、規模の大きい企業、首都圏の企業、海外との接点が多い企業や健康経営に熱心な企業等で実施されている傾向があった。従業員の属性としては、管理職以上の正社員・正職員、事務系専門職、技術系専門職で適用されていることが多かった。
本稿では、前稿をふまえて、各種取り組みを目的変数、回答時期のほか、企業規模、雇用形態や役職、職種、海外との接点の状況、回答者の居住地の規模、通勤手段を説明変数として、線形確率モデルで推計した。回答者の性、年齢、年収、居住都道府県は調整変数として投入した。前稿の結果を踏まえて、企業規模と雇用形態や役職については、回答時期との交差項も考慮した。使用した変数の概要は、巻末の図表3に示す。
3――分析結果

企業の取り組みの概要をみておく。調査では、「オフィスに消毒液設置」「 会社イベントの中止・延期」「セミナー、打ち合わせ等の制限」「時差出勤」「個人的なイベントの自粛」「マスク配布」「テレワーク」「海外への渡航制限等」「出勤停止・自粛」「BCP策定」の有無を尋ねた。その結果、6割の企業で何らかの取り組みをおこなっていた(図表1)。取り組み内容は、実施が多かった順に、「オフィスに消毒液設置」「 会社イベントの中止・延期」「セミナー、打ち合わせ等の制限」「時差出勤」「個人的なイベントの自粛」「マスク配布」となった。「テレワーク」は15.5%にとどまった。2月末依頼分と3月中旬依頼分を比較すると、いずれの取り組みも、3月中旬依頼分が高く、全般的に徐々に取り組みが拡大していた。「その他」の取り組みとしては、検温、マイカー通勤の許可、出勤時間や休憩時間の分散化、オフィスの換気、オフィスのレイアウト変更、社内における健康相談窓口の設置等があげられた。
続いて、各種取り組みを目的変数とし、回答時期(3月中旬以降ダミー)のほか、企業規模、雇用形態や役職、職種、海外との接点の状況、回答者の居住地の規模、通勤手段を説明変数とした、線形確率モデルでの推計結果を図表2に示す。
まず、調査期間を通じてみると、前稿でも示したとおりではあるが、企業規模別では、規模が大きいほど各種取り組みを実施している傾向があった。雇用形態・役職別にみると、管理職以上の正社員・正職員で時差通勤が多く取り入れられていた。職種では、事務職(一般事務・受付等)と比べると、事務系専門職ではテレワークや海外への渡航制限等、セミナーや会社イベントの自粛等が多く、技術系専門職ではテレワークや時差出勤、海外への渡航制限等が多い。医療福祉、教育関係の専門職では、マスク配布と「その他」が多かった。医療福祉、教育関係の専門職が「その他」としてあげていたのは、施設内に外部からの訪問を禁止することや自己管理の徹底であった。営業職、販売職、生産・技能職、接客サービス職、運輸・通信職では、テレワークや時差出勤、セミナーや会社イベントの自粛等の実施は少なかった。接客サービス職、運輸・通信職では、マスク配布は多かった。また、海外に拠点がある等、海外企業との業務上のやりとりが多い企業や、従業員の健康増進に熱心な企業でも取り組みは多かった。地域等別にみると、公共交通機関で通勤する人が多い企業や、東京・神奈川・千葉ではテレワークや時差出勤が多く取り入れられていた。
3月中旬以降の回答についてみると、全体的に「とくにない」は減っており、テレワーク、時差出勤、海外への渡航制限等、セミナー打ち合わせ等の制限、会社イベントの中止・延期、個人的なイベントの自粛の実施が増加していた。企業規模、雇用形態や役職で3月中旬以降をみると、テレワークは、1000人以上の企業で、時差出勤は5000人以上の企業と管理職以上の正社員・正職員で、海外への渡航制限等は1000~4999人の企業で、個人的なイベントの自粛は50~299人、1000~4999人の企業で特に増加していた。公務員と派遣社員は、他層と比べると取り組みの増加が少なかった。
4――調査結果が示すもの――取り組みは拡大。ただし、1か月間で拡大できたのは一部企業。
しかしながら、企業の対応を上回るスピードで新型コロナウイルスの感染状況は拡大し、4月10日には「緊急事態宣言」が発出され、休業やオフィス出勤者の最低7割削減等が要請されることとなった。現在は、5月6日までの期間とされているが、今後の流行拡大状況によっては、さらに長引く可能性もある。また、新型コロナウイルス感染症に関しては、一度おさまればよいというものではなく、第2波、第3波に備えて長期にわたって取り組む必要があるとも言われている。今後、すべての企業において、オフィスでの業務は、在宅あるいは、相当人員を減らしても継続できるような運用を検討していく必要があるだろう。また、人との接点が多く、社会的距離4をとることが難しい業種や職種においては、従業員の感染リスクを最大限に軽減する策が必要となる。
ワクチンや特効薬が開発され、完全に鎮静化するまで、感染をコントロールしつつ経済活動を行っていくために、今後のさらなる取り組み拡大が必須であろう。
4 Social distance。公衆衛生上で使われるときには、感染拡大を防ぐために意図的に人と人との距離を保つことを表す。新型コロナウイルス感染症においては、両手を広げても触れ合わない距離として、2メートルほどの距離をとることが推奨されている。
(2020年04月16日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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