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- 「大阪オフィス市場」の現況と見通し(2020年)
2020年03月23日
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3. 大阪オフィス市場の見通し
3-1. オフィスワーカーの見通し
大阪府の就業者数は、増加傾向で推移しており、2019年第4四半期には471.4万人(対前年同期+22.2万人)に達した(図表-11)。
就業者の増加を支えている要因の1つは、大阪市内への旺盛な人口流入である。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、大阪市の転入超過数3は2000年以降、拡大傾向で推移している。2019年の大阪市の転入超過数は+13,762人と、他の主要都市と比較しても人口流入が高水準であることがわかる(図表-12)。一方、大阪圏(大阪府,兵庫県,京都府,奈良県)の転入超過数は、▲4,688人と人口流出が続いており、大阪市に一極集中する傾向が強まっている(図表-13)。
また、2025年に開催予定の大阪万博への期待は大きい。帝国データバンクが2019年1月に実施した「大阪万博に関する企業の意識調査」によれば、大阪府に所在する企業の60%が大阪万博の開催が自社に「プラスの影響がある」と回答した。約2兆円と試算されている経済波及効果への期待などから、大阪市の就業者は更に増加することが見込まれる。
以上の状況を鑑みると、今後5年間で大阪市のオフィスワーカー数が大幅に減少する懸念は小さいといえよう。
大阪府の就業者数は、増加傾向で推移しており、2019年第4四半期には471.4万人(対前年同期+22.2万人)に達した(図表-11)。
就業者の増加を支えている要因の1つは、大阪市内への旺盛な人口流入である。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、大阪市の転入超過数3は2000年以降、拡大傾向で推移している。2019年の大阪市の転入超過数は+13,762人と、他の主要都市と比較しても人口流入が高水準であることがわかる(図表-12)。一方、大阪圏(大阪府,兵庫県,京都府,奈良県)の転入超過数は、▲4,688人と人口流出が続いており、大阪市に一極集中する傾向が強まっている(図表-13)。
また、2025年に開催予定の大阪万博への期待は大きい。帝国データバンクが2019年1月に実施した「大阪万博に関する企業の意識調査」によれば、大阪府に所在する企業の60%が大阪万博の開催が自社に「プラスの影響がある」と回答した。約2兆円と試算されている経済波及効果への期待などから、大阪市の就業者は更に増加することが見込まれる。
以上の状況を鑑みると、今後5年間で大阪市のオフィスワーカー数が大幅に減少する懸念は小さいといえよう。
3 転入超過数=転入人口-転出人口
3-2. 新規供給見通し
大阪のオフィスビルの新規供給は、2014年以降限定的な状況が継続している (図表-14)。今後の大規模ビルの新規供給も、2020年に「オービック御堂筋ビル」、2021年に「新サンケイビル建替プロジェクト」等が竣工を迎えるが、低水準が続く見込みである。
大阪の過去5年間の新規供給面積が総ストックに占める割合は、2.0%であった。主要都市と比較すると、仙台市(0.8%)に次いで小さい(図表-15)。過去10年間でみても新規供給面積の割合は1割弱に留まっており、築浅オフィスビルの希少性が高い状況にある。
ただし、2022年には、「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」(大阪神ビルディングと新阪急ビルの一体建替)や「日本生命淀屋橋ビル」、JR西日本不動産開発による「(仮)新大阪オフィス計画」等、大規模ビルの竣工が複数棟予定されており、新規供給量は5万坪を超える見込みである。また、2023年以降も、「梅田3丁目計画(大阪中央郵便局跡)」や「淀屋橋駅西地区開発」等、大規模開発が計画されている。
大阪のオフィスビルの新規供給は、2014年以降限定的な状況が継続している (図表-14)。今後の大規模ビルの新規供給も、2020年に「オービック御堂筋ビル」、2021年に「新サンケイビル建替プロジェクト」等が竣工を迎えるが、低水準が続く見込みである。
大阪の過去5年間の新規供給面積が総ストックに占める割合は、2.0%であった。主要都市と比較すると、仙台市(0.8%)に次いで小さい(図表-15)。過去10年間でみても新規供給面積の割合は1割弱に留まっており、築浅オフィスビルの希少性が高い状況にある。
ただし、2022年には、「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」(大阪神ビルディングと新阪急ビルの一体建替)や「日本生命淀屋橋ビル」、JR西日本不動産開発による「(仮)新大阪オフィス計画」等、大規模ビルの竣工が複数棟予定されており、新規供給量は5万坪を超える見込みである。また、2023年以降も、「梅田3丁目計画(大阪中央郵便局跡)」や「淀屋橋駅西地区開発」等、大規模開発が計画されている。
3-3. 賃料見通し
前述の新規供給見通しや経済予測4、オフィスワーカーの見通し等を前提に、2024年までの大阪のオフィス賃料を予測した(図表-16)。
大阪の空室率は、2021年まで新規供給が限定的なこともあり、当面の間、極めて低い水準を維持する見通しである。2022年以降は、梅田駅や淀屋橋駅周辺中心に、複数の大規模開発が計画されており、空室率の上昇が見込まれるが、大幅な上昇には至らないと予想する。
大阪のオフィス賃料は、逼迫した需給状況を反映し、当面の間、上昇が続くと予想される。2019年の賃料を100とした場合、2020年の賃料は103、2021年は104に上昇する見通しである。
2022年以降は、大規模開発に伴い空室率が上昇し、賃料は2022年から2024年にかけて弱含みで推移すると見込む。
前述の新規供給見通しや経済予測4、オフィスワーカーの見通し等を前提に、2024年までの大阪のオフィス賃料を予測した(図表-16)。
大阪の空室率は、2021年まで新規供給が限定的なこともあり、当面の間、極めて低い水準を維持する見通しである。2022年以降は、梅田駅や淀屋橋駅周辺中心に、複数の大規模開発が計画されており、空室率の上昇が見込まれるが、大幅な上昇には至らないと予想する。
大阪のオフィス賃料は、逼迫した需給状況を反映し、当面の間、上昇が続くと予想される。2019年の賃料を100とした場合、2020年の賃料は103、2021年は104に上昇する見通しである。
2022年以降は、大規模開発に伴い空室率が上昇し、賃料は2022年から2024年にかけて弱含みで推移すると見込む。
4 経済見通しは、ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2019~2029年度)」(2019.10.15)などを基に設定。
4. おわりに
本稿で示した成約賃料の見通しは、過去10年平均と同程度の経済成長を前提にしており、新型肺炎(コロナウィルス)の感染拡大が日本経済に及ぼす影響を考慮していない。感染拡大に伴う大幅な経済減速などを想定した賃料予測は、後日別稿で報告したい。
当然のことながら、新型肺炎の感染拡大が日本経済に悪影響を及ぼすことは不可避である。東京商工リサーチ「第2回新型コロナウィルスに関するアンケート調査」(調査期間3月2日~8日)によれば、「新型コロナウィルス発生による事業活動への影響」について、55%が「現時点ですでに影響が出ている」、40%が「今後出る可能性がある」と回答した(図表-17)。既に、訪日客の減少や、各種イベント中止に伴う消費の落ち込み、中国工場の稼働停止に伴うサプライチェーンの混乱等が顕在化している。
当然のことながら、新型肺炎の感染拡大が日本経済に悪影響を及ぼすことは不可避である。東京商工リサーチ「第2回新型コロナウィルスに関するアンケート調査」(調査期間3月2日~8日)によれば、「新型コロナウィルス発生による事業活動への影響」について、55%が「現時点ですでに影響が出ている」、40%が「今後出る可能性がある」と回答した(図表-17)。既に、訪日客の減少や、各種イベント中止に伴う消費の落ち込み、中国工場の稼働停止に伴うサプライチェーンの混乱等が顕在化している。
大阪市のオフィスワーカー5の業種内訳をみると、「卸売業、小売業」の占める割合(13%)が最も大きく、続いて、「製造業」(12%)、「情報通信業(IT)」(12%)となっている(図表-18)。「卸売業、小売業」と「製造業」の占める割合は、主要都市の中で最も大きい。
上述のアンケート調査によれば、「卸売業」では62%、「小売業」でも61%の企業が「現時点ですでに影響が出ている」と回答しており、他業種に先んじて企業活動への悪影響が出ている。これらの業種で、企業業績の悪化等を懸念する企業が増えれば、当然ながらオフィス需要は弱含む。
また、感染防止のため、在宅勤務を実施する企業は増加している。働き方改革の進展や人手不足も相まって、求められる職場環境(ワークプレイス)のあり方は急速に変化しており、引き続きこれらの環境変化について注視したい。
上述のアンケート調査によれば、「卸売業」では62%、「小売業」でも61%の企業が「現時点ですでに影響が出ている」と回答しており、他業種に先んじて企業活動への悪影響が出ている。これらの業種で、企業業績の悪化等を懸念する企業が増えれば、当然ながらオフィス需要は弱含む。
また、感染防止のため、在宅勤務を実施する企業は増加している。働き方改革の進展や人手不足も相まって、求められる職場環境(ワークプレイス)のあり方は急速に変化しており、引き続きこれらの環境変化について注視したい。
5 従業地による職業別就業者のうち、専門的・技術的職業従事者、管理的職業従事者、事務従事者の合計。
(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2020年03月23日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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