2020年02月06日

Z世代の情報処理と消費行動(2)-Z世代と4つの市場変化

生活研究部 研究員 廣瀨 涼

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1――Z世代が影響を受けた4つの市場変化

日々市場の形態は変化している。筆者が生まれた平成元年にはまだインターネットショッピングは存在していなかった。しかし2000年前後のヤフーオークションの誕生やamazonによる流通革命により、わずか20年でネットショッピングはあたかも昔から存在していたかのように、我々の購買方法の選択肢として定着した。Z世代においては、一期生である1996年生まれが小学校に入学した時には「Amazonマーケットプレイス」がオープンしており、彼らの多くは、ネットショッピングが存在していない時代を知らないのである。このように変化を続ける市場の中で、Z世代の消費行動も大きな影響を受けており、その消費に対する価値観の元、彼らは独自の消費文化を築いてきた。

本レポートではZ世代が大きな影響を受けた4つの市場変化である(1)Digital Natives(デジタルネイティブ)、(2)Freemium(フリーミアム)、(3)Subscription(サブスクリプション)、(4)Creative & Edit(制作と編集技術)に焦点を置き、彼らの消費行動について考察する(図1)。
図1 Z世代が影響を受けた4つの市場変化

2――Digital Natives(デジタルネイティブ)

2――Digital Natives(デジタルネイティブ)

デジタルネイティブとは、学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきた世代のことを指す。1995年にwindows95が発売され、Z世代は生まれる前からインターネットが存在していたため、彼らを「ネオ・デジタルネイティブ」と呼ぶこともある。彼らが小学校に上がったころには「Wikipedia」が存在しており、学習において紙媒体の辞書や百科事典を使わずに、Wikipediaにより、効率よく情報を収集していた世代である。2000年代中頃以降においては、Web2.0という言葉が流行したように、ウェブの新しい利用法として情報の収集のみならず、情報の発信ツールとしてインタラクティブにネットが使用されるようになる。その結果、バズマーケティングと呼ばれるような、ネットで情報交換される口コミによって、自らの価値判断を他人に依存して行うようになる。「食べログ」が誕生したのもちょうどこの頃であり、彼らは、食事に限らず他人のつけた評価を自身の選択の指標のひとつとして用いることが当たり前な世代なのである1

また前述した通り、Amazonマーケットプレイスが存在しない時代を知らない世代でもあり、購買においてインターネットを使うことが浸透している。以前はクレジットカード決済のみ等決済方法が限られていたが、近年ではコンビニ払いや「バンドルカード」などのプリペイド決済が可能になり中高生でも容易にネットショッピングが可能になった。ネットショッピング利用が広く浸透していく中で、自分たち自らが商品を出品して売買を行う「フリマアプリ」の活用にも積極的である。マクロミルによる「2017年フリマアプリ利用実体調査」2を見ると、男性10代では「利用した経験がある」割合は、概ね50%に到達する。女性については更に利用状況は高く、「利用した経験がある」をみると、10代は約60%、20代でも概ね50%に到達している。若者にとってフリマアプリは、消費チャネルの選択肢の一つとして受容されていると言えるだろう。
 
1 廣瀨涼(2019)「現代消費文化を斬る-「今時の若いもんはなぜ消費しないのか」という問いに対する試論」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=62515?site=nli
2 「話題のフリマアプリ、ユーザー1,000名に利用実態を調査!」https://honote.macromill.com/report/20170523/ (2020/01/28閲覧)
 

3――Freemium(フリーミアム)

3――Freemium(フリーミアム)

フリーミアムとは、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な情報については料金を課金する仕組みのビジネスモデルのことである。20世紀から、商品を無料で配ったり、ある商品を無料と称し呼び水として他の商品を売ったりするというようなビジネスモデルは存在していた。「タダより高いものはない」という言葉があるように、無料で商品をもらった以上の対価を期待されるという意識は我々に深く根付いている。無料で商品をあげるという「行為」の対価として結局は金を使わせるのが20世紀の「無料」のビジネスモデルといえるだろう。

一方で21世紀の「無料」はそのビジネスモデルの性質が異なる。2009年にクリス・アンダーソンの「フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略」3がベストセラーになったことを覚えている人もいるかもしれない。彼によると主にデジタルコンテンツは無料であることを前提に、それゆえに収益を生み出す仕掛けの必要があるという。21世紀の「無料」は、大勢のそのサービスを無料で使用するユーザーである「フリーライダー」と一部の課金ユーザーである「プレミアムユーザー」の2つの存在で成り立っている。無料で最低限の機能を使えればよいと考えるフリーライダーと課金することで得られる便益に対して価値を見出すプレミアムユーザーは一つのサービス内で住みわけがされており、支払いたいと思う消費者の存在によってそのサービスが継続していると言える。また従来の「無料」と同様に、フリーライダーはサービスを無料で利用する対価として、サービス利用時に広告視聴が強要されることも一般的である。

Z世代はこの21世紀の「無料」が物心ついた時には整っていた世代である。Z世代はそもそもデジタルコンテンツが有料であるという認識すら持っていないものも多い。言い換えれば無料であることを疑わない世代でもある。そのため、ネットリテラシーにおいて、コンテンツの有料性=著作権の問題について意識している者も少なく、SNSなどで著作権を侵害している画像を無自覚に投稿したり、海賊版の動画やマンガに対して違法であるという認識が低い傾向がある。
 
3 クリス・アンダーソン(2009)「フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略」NHK出版
 

4――Subscription(サブスクリプション)

4――Subscription(サブスクリプション)

サブスクリプションとは定期購読の意味であり、月額使用料を支払うことで、サービスを利用できたり、モノをレンタルしたりすることができるサービスのことである。一般的にはAmazon PrimeやNETFLIXをはじめとした動画ストリーミングサービスを指すことが多いが、現在では多種多様なサービスが展開されてきている。自動車や家具、家電製品、ブランド物のバッグをはじめ、最近では焼き肉チェーンである「牛角」が焼き肉食べ放題のサブスクリプションを販売し、話題となった。

矢野経済研究所の「2018年度サブスクリプションサービス国内市場規模調査」4によるとサブスクリプション市場は、エンドユーザー支払額ベースで、5,627億3,600万円であったという。
表1 「2018年度サブスクリプションサービス国内市場規模調査」
この調査では(1)ファッション系定期宅配、(2)ファッションサービス(3)食品系定期宅配(4)飲食サービス(5)生活関連(6)住居(7)教育(但し通信教育は対象外)(8)娯楽の8つが対象となっており、幅広いカテゴリーでサブスクリプションが浸透し始めていることがうかがえる。同調査では、2023年度の市場規模を8,623億5,000万円と予測しているなど、今後拡大が見込まれる。

Z世代においては、物心ついた時にはサブスクリプションという消費の選択肢が存在しており、モノを持つことで承認欲求を満たしていた「モノ消費」の世代とは異なる価値観を持っていると言える。モノ消費に価値を見出していた世代は、モノを購入することで物質的な豊かさを実感したり(70年代)、流行やブランド品で他人と差別化しようとしたり(80年代)するなど、所有に重きを置いて物品が購入されていた。しかし、モノより「コト消費」や「トキ消費」といった消費に対して精神的な豊かさを求めるようなった現代において、所有することにお金を費やすことがステータスとなる価値観が薄れ、モノを所有する意義を見出しづらくなった。また久我(2020)が言うように1つ1つモノを、あるいは、1回1回サービスを購入するのではなく、月額定額で使い放題になるサブスクを利用することで、無駄な消費を減らし、消費の合理化を図ることができる5。Z世代はこのような新たな価値観の元、サブスクリプションに対して最も抵抗感が少ない世代であるともいえる。
 
4 矢野経済研究所「2018年度サブスクリプションサービス国内市場規模調査」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2114
5 久我尚子(2020)「所有から利用へと変わる消費-なぜサブスクリプションサービスが拡大するのか?」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63392&pno=3&site=nli
 

5――Creative & Edit(制作と編集技術)

5――Creative & Edit(制作と編集技術)

最後に制作と編集技術であるが、若者はコンテンツの作成や動画や写真の高い編集技術を要しており、コンテンツを生み出すということが消費行動にも大きく影響を与えている。

TikTokというスマホアプリの名前を聞いたことがあるだろうか。中国のByteDance社が開発運営している、モバイル向けショートビデオのプラットフォームのことである。実際に使ったことはなくとも、YouTubeなどの広告でTikTokの音楽に合わせて踊っている女子高生たちのCMを見たことがあるかもしれない。従来のSNSは文字や写真が中心であったが、TikTokは、動画に特化したSNSで、自身の撮った動画とアプリ内にある音楽を編集し、ショートムービーを作ることができるのが特徴である。もともと専門職の領域であった動画編集という作業は、パソコンの登場により個人でもできるようになった。後にYouTuberという職業が成立したように、自身の撮った動画を自分で編集するという作業が誰でも可能となったが、実際には、編集技術を習得するために多くの時間と一定のスキルを要する。TikTokは、そのような難しい技術を要しなくとも、誰もが気軽にクオリティの高いムービーを作ることができるのである。

また以前から存在していた「SNOW」や「BeautyPlus」のように自撮り写真をかわいく加工するいわゆる“盛る”という行為を動画で行うことができ、小顔・美肌・美脚といった加工ができることから女性や若者を中心に支持されている。

MMD研究所の「2018年7月のTikTokに関する調査」6によると、TikTokを利用しているユーザーは、国内で月に850万人で女性が71%で男性が29%であったという。中でも10~20代のユーザーが多い。Web担当者Forumによる「2019年TikTok利用率に関する調査」7では、女子中学生の利用率が4割、女子高生の利用率は概ね3割であった(表2)。しかも彼女たちの中でも年齢が若いほどこのサービスの利用率が高い。これは、Z世代の中でもサービスに対する受容度に差があることやサービスによって対象年齢が異なることを意味していると筆者は考える。
表2 女子中高生のTikTok利用率  (単位:%)
TikTokに限らず、彼女たちは「トキ消費」や「コト消費」の一側面として動画撮り、編集し、投稿することで自分らしさを表現している。商品が選考されるときもこの心理は働いている。以前はいわゆる“インスタ映え”のように写真として映えることが商品に求められ、機能性よりもその見た目が選考されることも多かった。そのため「物撮り」と呼ばれるような写真を撮ることを目的として購入されることも多かった。しかし、「トキ消費」、「コト消費」を動画投稿を通じて行うZ世代は、その商品を消費することで自分ならどのようにその商品を消費し、表現することができるかという「モノ消費に見えるコト消費」8よって自分らしさを追求している。また「モノ消費に見えるコト消費」を中心としたSNS投稿が主流になった現代において誰かの投稿が「疑似体験」となっており、その消費をわざわざ自分がする必要があるのかと、考えるようになった世代でもある。
 
6 MMD研究所「2018年7月のTikTokに関する調査」https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1726.html
7 Web担当者Forum「2019年TikTok利用率に関する調査」https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1726.html
8 久我尚子(2019)「モノ消費に見えてコト消費-ステイタスよりも個人的な体験」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63220?site=nli
 

6――まとめ

6――まとめ

(1)Digital Natives(デジタルネイティブ)、(2)Freemium(フリーミアム)、(3)Subscription(サブスクリプション)、(4)Creative & Edit(制作と編集技術)という4つの市場変化によって、Z世代の消費方法は以前とは異なる選択肢が増えた。また、前レポート9で記述した通り、継続的な不況による社会への不安や競うことよりも協調するという価値観を持つZ世代にとって、従来の大人たちが共有していた、いい大学に行き、いい企業に就職して、結婚するといったライフスタイルへのあこがれや、車を乗り回し、ゴルフをして、ブランド物に身を包むといった画一された幸せのイメージは、今や崩壊している。各々が自分にとっての正解を追及することを良しとする価値観のもとに消費をしているのである。以上の通り、若者を取り巻く“市場の変化”と“社会の変化”によって、Z世代は我々とは違った価値観を形成しており、このような価値観は消費文化という面からみても一世代前の若者であるY世代と異なる点があるのではないかと考える。
 
9 廣瀨涼(2020)「Z世代の情報処理と消費行動(1)Z世代が歩んできた時代」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63536?site=nli
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廣瀨 涼 (ひろせ りょう)

研究・専門分野
消費文化、マーケティング、ブランド論、サブカルチャー、テーマパーク、ノスタルジア

(2020年02月06日「基礎研レター」)

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