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子宮頸がんとHPVワクチンの現状

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――感染によるがん
1 国立がん研究センター「がん情報サービス(https://ganjoho.jp/public/index.html)」より
2 ピロリ菌は2回目まで保険適用。C型肝炎ウイルスは、根治を目的とする場合は保険適用。場合によっては国の助成制度を利用できる。
3 B型肝炎、HPVはいずれも定期接種として公費で受けることができる。
2――子宮頸がんの罹患と死亡
3――ワクチン接種状況

国内においては、2013年4月にHPVワクチンの定期接種が開始されたが、接種後に重篤な症状を含む副反応疑い事例が報告された。このため、同6月には、適切な情報提供ができるまでの間、各自治体から対象者への積極的な勧奨は行わないこととなった。この頃までに、およそ338~339万人程度が接種している(図表5)4。
2015年には、報告された副反応疑いの2,584件のうち追跡可能だったものは1,739件(全報告の67%)だったが、そのうち9割が回復(回復した/軽快・通院不要)していると報告5されている。しかしながら、国等による積極的勧奨の一時差し控えは継続しており、以降は2019年8月までのおよそ6年間で接種者は4.5万人の増加にとどまっている(図表6)。
一方、自治体レベルでワクチンの有効性を示す研究が示されはじめている6が、現在、定期接種対象者へのワクチンの有効性等に関する情報の提供については、自治体によって対応が区々となっている。
4 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(1~44回)資料より。2013年7月30日までにのべ890万件の接種があり、一人あたり2.4~2.7回接種したとして推計されている。
5 厚生労働省「副反応追跡調査結果について(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/chousa/index.html)」より
6 日本産婦人科学会のサイト(http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4)がわかりやすい
HPVによるがんの9割は子宮頸がんと言われ、圧倒的に女性患者が多く、公費による接種も女性が中心だが、図表1のとおり肛門がんや口腔がん等の原因ともなる。ワクチン接種に積極的なアメリカやカナダ、オーストラリアでは、こういった子宮頸部以外のHPVによるがん対策として、男性にも接種を推奨している。男性も接種することで、ワクチンを接種していない女性を子宮頸がんから守る役割も果たす。
また、現在、日本では、子宮頸がん全体の50~70%の原因とされる2種類(16型・18型)について予防接種を行っているが、9%以上の子宮頸がんをカバーするとされる9つの型のワクチンが接種されている国もある。
4――ならば検診を
WHOが提唱する(1)予防接種の普及、(2)検診受診の増加、(3)罹患後のケアの充実のうち、(1)予防接種を受けないのであれば、(2)検診を受けることが望ましいと考えられる。ところが、現在、子宮頸がん検診の受診率は、上昇傾向にあるものの49歳以下で年間37.4%(過去2年間で47.5%)と、諸外国と比べても低い(図表6)。
現在、厚生労働省では、わかりやすい情報提供に向けた検討が進んでいる。まずは検診を定期的に受ける努力をするとともに、こういった情報を積極的に収集して、今後予防接種を受けることも視野に入れて考えてみるのがよいだろう。
(2020年01月28日「保険・年金フォーカス」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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