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自動運転とAIのフレーム問題-AIの社会実装へのインプリケーション
社会研究部 上席研究員 百嶋 徹
筆者は、「AI・IoTの利活用の在り方」『ニッセイ基礎研所報』2019年Vol.63、2019年6月にて、「人工知能(AI)の社会実装には、AI研究の最大の難問と言われる『フレーム問題』が横たわる。フレーム問題とは、世の中で起こり得るすべての事象から、今行うべき分析・判断に必要な情報のみを『枠(フレーム)』で囲うように、選び出すことがAIには非常に難しい、という本質的な問題だ」と指摘した。
一方、AIの利活用分野として、自動運転への期待は大きいが、その実用化においても、AIのフレーム問題への対処が重要なカギを握る。筆者は同稿にて、「チェス、将棋、囲碁といったボードゲーム、生産ラインにおける組立作業、画像認識や音声認識などのように、フレームをはめることができる限定された環境・空間の下で特定のタスクをAIに担わせる場合は、AIは強みを存分に発揮し、その社会実装・実用化が進みやすい。一方、現実社会の複雑な環境下で用いられる自動運転技術では、基本的にフレーム問題の影響は大きいと考えられるが、道路・走行環境が最も複雑な都市部の一般道に比べ、フレーム問題の影響が相対的に小さい高速道路や過疎地にエリアを限定した走行環境での実用化を先行させることは、フレーム問題の観点から理にかなっていると言えよう」と指摘した。
本稿では、これらの筆者の指摘を深堀りしたい。すなわち、AIのフレーム問題について説明した上で、AIの利活用分野として大いに期待がかかる自動運転を取り上げ、AIのフレーム問題から見た技術的課題を考察することで、AIの社会実装の在り方へのインプリケーションについて論じたい。
■目次
1――はじめに
2――AIのフレーム問題と社会実装
1|AIのフレーム問題とは
2|AIの社会実装には「限定された閉じた世界」を作る人間の役割が極めて重要
3――AIのフレーム問題から見た自動運転の技術的課題の考察
1|大変革の時代に入る自動車産業と自動運転
2|AIのフレーム問題の影響が大きい自動運転の社会実装の難しさ
3|自動運転の社会実装におけるAIのフレーム問題への対処
4|狭いODD(限定領域)での完全自動運転へシフトする米国の主要企業
5|完全自動運転システムと運転支援システムの「二刀流」に挑むトヨタ自動車
6|自動運転の社会実装における世界展開の視点
7|AIのフレーム問題の視点から見た自動運転に関わる考察のまとめ
4――おわりに~AIの社会実装の在り方へのインプリケーション
<補論>AIのフレーム問題について
1|AIのフレーム問題の定義
2|AIのフレーム問題は未解決
3|人間とフレーム問題
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社会研究部 上席研究員
百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)
研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、イノベーション、企業不動産(CRE)、オフィス戦略、AI・IOT・自動運転、スマートシティ、CSR・ESG経営
03-3512-1797
- 【職歴】
1985年 株式会社野村総合研究所入社
1995年 野村アセットマネジメント株式会社出向
1998年 ニッセイ基礎研究所入社 産業調査部
2001年 社会研究部門
2013年7月より現職
・明治大学経営学部 特別招聘教授(2014年度~2016年度)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
・(財)産業研究所・企業経営研究会委員(2007年)
・麗澤大学企業倫理研究センター・企業不動産研究会委員(2007年)
・国土交通省・合理的なCRE戦略の推進に関する研究会(CRE研究会) ワーキンググループ委員(2007年)
・公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会CREマネジメント研究部会委員(2013年~)
【受賞】
・日経金融新聞(現・日経ヴェリタス)及びInstitutional Investor誌 アナリストランキング 素材産業部門 第1位
(1994年発表)
・第1回 日本ファシリティマネジメント大賞 奨励賞受賞(単行本『CRE(企業不動産)戦略と企業経営』)
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