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企業が考える従業員のストレス要因とその改善状況~過重労働以外のストレス要因についての議論にも期待

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――企業が考える従業員のストレス要因
その結果、最大のストレス要因は、「仕事量が多い(18.7%)」で、次いで「コミュニケーションが少ない(13.2%)」「残業や休日出勤が多い(12.3%)」「給料が少ない(6.9%)」「達成感が得にくい(5.9%)」「身体への負担が大きい(5.8%)」が続いた。複数回答における選択パターンで因子分析をした結果を参考に、「仕事量が多い」「残業や休日出勤が多い」「身体への負担が大きい」「有給取得が少ない」、および「達成感が得にくい」「給料が少ない」「福利厚生が不十分」を、それぞれ1つのグループとした。順に“業務過多”、“職場環境”と呼ぶことにすると、「業務過多」が最大のストレス要因となっている企業は40.6%、「職場環境」が14.0%だった(図表1)。
「特にない」も14.9%と1割を超えた。
50名以下の企業では、製造業・非製造業ともに「特にない」や「無回答」が相対的に高かった。
全体と比較すると、51名以上と30代後半~40代の従業員が多い製造業で「改善している」の割合が高く、60代後半以上の従業員が多い非製造業で「悪化している」の割合が高かった。
最大のストレス要因別に全体と比較すると、業務過多が最大のストレス要因となっている企業で「改善している」の割合が高く、緊張が多いことが最大のストレス要因となっている企業では「変わらない」が、従業員の入れ替わりが激しいことが最大のストレス要因となっている企業では「変わらない」または「悪化している」が高かった。
業種と、規模および従業員の主な年代別に全体と比較すると、51名以上で、製造業、非製造業ともに「管理職の意識不足」が高かった。301名以上の非製造業では「人手不足」も高かった。製造業では、20~30代前半の従業員が多い企業で「従業員の意識不足」が、50~60代前半の従業員が多い企業で「資金不足」が、非製造業では、30代後半~60代前半の従業員が多い企業で「人手不足」が、50~60代前半が多い企業で「資金不足」が、それぞれ課題となっていた。
最大のストレス要因別に全体と比較すると、業務過多と従業員の入れ替わりが激しいことが最大のストレス要因となっている企業で「人手不足」が、職場環境が課題となっている企業で「資金不足」と「経営者の意識不足」が、コミュニケーションが少ないことが最大のストレス要因となっている企業で「従業員、管理職、経営者の意識不足」が、それぞれ高かった。また、緊張が多いことが最大のストレス要因となっている企業で「わからない」が2割を超え高かった。
3――過重労働以外のストレス要因についての議論にも期待
ただし、業務過多については、他のストレス要因と比べて改善している企業が多かった。改善していない企業においては、「人手不足」が主な課題となっていた。また、最大のストレス要因が業務過多であって、この1年間で従業員を増やした企業の半数が「改善している」と回答していた。従業員、管理職、経営者の「意識不足」が課題と回答した企業の割合は、他のストレス要因と比べて低く、業務過多については、従業員から経営者まである程度意識が共有できており、(可能かどうかは別として)人手を増やすことである程度解消できる可能性がうかがえた。
一方、企業が考えるストレス要因には、業務過多以外に「給料が少ない」「達成感が得にくい」「福利厚生が不十分」等の「職場環境」、「コミュニケーションが少ない」、「緊張が多い」、「従業員の入れ替わりが激しい」等、多岐にわたっていた。これらのストレス要因については、業務過多と比べて改善している企業の割合は低かった。
改善していない企業における課題は、業務過多と比べると、従業員、管理職、経営者の「意識不足」が高い傾向があり、問題意識の共有がなされていない可能性があった。また、「緊張が多い」については、課題が「わからない」が高く、解決策が見当たらない様子がうかがえた
従業員が過労死するという最悪な事態を避けるためには、有給休暇取得の義務化や過労死認定の基準見直し等の過重労働対策は必要だろう。
拘束時間が減れば、過重労働は避けられ、他のストレスを抱えた従業員も、気分転換や相談、将来について考える機会が増えると思われる。しかし、従業員が効率よく働き、離職を食い止める働き方を進めるためには、過労以外のストレス要因に対しても、議論を進める必要があるのではないだろうか。
(2019年11月11日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
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2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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