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「札幌オフィス市場」の現況と見通し(2019年)
金融研究部 主任研究員 吉田 資
エリア別の空室率(2018年12月末)を確認すると、「駅前通・大通公園地区0.80%(前年比▲0.92%)」や「南1条以南地区4.10%(▲1.02%)」、「創成川東・西11丁目近辺地区4.17%(▲0.35%)」の空室率が改善したのに対して、大規模ビルの竣工等があった「駅前東西地区2.25%(+1.25%)」や「北口地区1.52%(前年比+0.44%)」の空室率は上昇した(図表12左図)。
募集賃料は上昇傾向で推移している。特に「北口地区」(前年比+6.8%)や「駅前東西地区」(前年比+6.0%)の賃料上昇率が大きい。
3. 札幌オフィス市場の見通し
前述の新規供給見通しや経済予測5、生産年齢人口の見通しを前提に、2023年までの札幌のオフィス賃料を予測した(図表19)。
2018年下期の札幌市の成約賃料は、ファンドバブル期のピークを上回り、高値圏にある。今後の新規供給は限定的なことから、短期間で市況が大きく悪化する懸念は小さい。
札幌市は、他の地方主要都市と比較して、低コストでかつ効率よくオペレーターを確保することが可能な環境にあり、コールセンター企業からの需要は底堅い。ただし、コールセンター業務の多くを担っている「アウトソーサー6」の一部は、人件費等の運営コストの増加に伴い、厳しい経営環境にある。また、AI技術等を活用した顧客対応の自動化が進むと、人手に依存する大規模なコールセンターは減少することも想定される7。以上のことを鑑みると、コールセンターがこれまでの勢いで札幌のオフィス需要を牽引することは難しい可能性がある。
2030年の北海道新幹線の全線開通(札幌駅までの延伸)に向けて、札幌駅周辺では再開発が進展する見込みである。JR札幌駅南口の「西武百貨店札幌店」跡地を含む「北4西3街区」では、超高層ビルの建設が予定されており、「大通東1街区」では30階前後の高層ビル構想が立ち上がっている9。長期的な札幌オフィス市場を見通すにあたっては、北海道新幹線の延伸を見据えた大型再開発の動向を注視したい。
5 経済見通しは、ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2018~2028年度)」ニッセイ基礎研究所などを基に設定。
6 他社からコールセンター業務を受託し運営することを事業とする企業。
7 吉田資「地方都市のオフィス需要を牽引するコールセンター」ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2019年7月4日
8 B.S.I.(景気動向指数 Business Survey Index)
=「前期と比べて上昇(増加)と回答した企業の割合」- 「前期と比べて下降(減少)と回答した企業の割合」
景気、企業の業績等について、+の場合は上昇過程にあると判断され、-の場合は下降過程にあると判断される。
9 北海道新聞「札幌駅周辺再開発、市主導で続々 容積率の緩和や事業費補助 財政面で不安も 札幌駅南口準備組合が発足」2019年5月24日
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- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
(2019年07月09日「不動産投資レポート」)
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