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企業間の取引関係を探る-持合ネットワーク構造を用いた分析

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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1――特定企業の問題公表による他企業への影響度把握に、株式持合関係が役に立つ
(1)東洋ゴム :免震ゴムの認定にあたり、試験データの一部が改ざんされていたことを公表
(2)東芝 :不適切な会計処理があった可能性と、特別調査委員会の設置を公表
(3)東芝 :米国の原子力発電事業における特別損失計上の可能性を公表
図表3は、問題公表企業および評価対象企業が発行する株式の平均相対収益率の推移を表す。相対収益率とは、各株式の収益率がマーケット全体の収益率(TOPIX収益率)を上回る収益率である。問題公表企業および評価対象企業それぞれの相対収益率を求め、分類毎に単純平均したものが平均相対収益率である。また、折線グラフ上の各マーカーは平均相対収益率が統計的有意に負であることを意味する。
問題公表企業が、問題公表の翌営業日から大きく下落するだけでなく、評価対象企業の平均相対収益率も、問題公表の2営業日後から負に転じる。更に、直接企業は問題公表の3営業日後以降、間接企業は問題公表の4営業日後以降において、平均相対収益率が統計的有意に負となる。やはり、直接企業だけでなく間接企業にまで、特定の企業による問題公表の影響が波及すると考えられる。
1 基礎研レポート『問題公表による他社株価への影響~持合ネットワーク構造を用いた分析』(2017年9月1日)
なお、当レポートの「平均相対収益率」、「直接企業」、「間接企業」は、それぞれ前回レポートの「累積超過収益率」、「距離1」、「距離2」に対応する。
2――株式持合関係により取引関係が探知できる
上場企業が、他の上場企業の株式を純投資以外の目的で保有する場合(所謂、政策保有株式)、有価証券報告書で、銘柄毎の具体的な保有目的を開示することが求められている。そこで、神戸製鋼所とその直接企業(20社)を対象に、有価証券報告書(直近)の記載内容を調べ、その結果を図表4に示す。
図表4を見ると、神戸製鋼所と直接株式持合関係にある企業とは、業務提携関係もしくは継続的取引関係にあることは明らかである。本来企業価値の向上のために活用すべき資本を投じて、株式を保有しているのだから、主要な取引先であることは容易に想像できる。
企業間の株式保有形態は、株式持合関係に限らない。一方の企業のみが株式を保有する関係(片持合)もある。片持合の場合も、取引関係と大きく関係していると考えられることから、今後は、片持合も含め、分析を進めていきたい。
(2017年11月16日「基礎研レター」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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