コラム
2018年07月04日

確定拠出年金からの資金流入が増加~2018年6月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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国内株式、外国株式、バランス型への資金流入が続く

2018年6月の国内公募追加型投信(ETFを除く)の推計資金流出入をみると、国内株式、外国株式、バランス型への資金流入が続いた【図表1】。流入金額は、国内株式が1,200億円、外国株式が2,500億円、バランス型が1,400億円であった。また、6月は国内債券への資金流入も大きかった。ファンド・ラップ向けの国内債券ファンドへ大規模な資金流入があったためである。資産配分を見直し、国内債券の比重を高めたファンド・ラップがあったようだ。その一方で、外国債券、国内REIT、外国REITからは資金流出が続いた。外国債券は大規模な資金流出が5月から続き、流出金額が1,500億円に迫った。新興国債券(500億円弱)とハイ・イールド債券(300億円)からの資金流出が顕著であった。
国内株式、外国株式、バランス型への資金流入が続く
外国株式への資金流入が、2500億円を超えたのは3月以来のことである。6月は資金流入が大きかった上位のうち8ファンドが外国株式であり、人気の個別ファンドでみても外国株式の人気が高かったことが分かる【図表2】。さらに、8ファンドのうち4ファンドがテクノロジー系のテーマ株ファンドであり【赤字】、テクノロジー系のテーマ株ファンドが外国株式の人気を牽引したといえるだろう。
【図表2】 2018年6月の推計純流入ランキング
国内株式の1,200億円の資金流入のうち、600億円が中小型株アクティブ・ファンドへの資金流入であった。ただ、中小型株アクティブ・ファンドへの資金流入は続いているが、流入金額は1月の1,400億円をピークに鈍化してきている。
 
また、国内株式の大型株ファンドにも600億円を超える資金流入があった。ただし、株価と同様に資金の出入りも激しい1カ月であった【図表3】。月を通じては流入であったが、株価が上昇基調にあった5日から14日はパッシブ・ファンドを中心に資金流出が続いた。特に日経平均株価が23,000円目前に迫った翌営業日の13日、14日の資金流出が顕著で、大型株ファンドから13日は100億円、14日は170億円の流出があった。6月も日経平均株価が22,500円を超えた辺りから資金流出する傾向がみられ、5月と同様に「日経平均株価22,500円」が投資家に意識されていたようだ。
【図表3】国内株式ファンドの日次推計資金流出入と日経平均株価の推移

確定拠出年金からの資金流入が増加

バランス型への資金流入は2カ月連続で1,000億円を超えた。6月も、5月と同様に高頻度(毎月、隔月)分配型のファンドへの資金流入が堅調で、700億円弱の資金流入があった。また、5月からバランス型ファンドではDC(確定拠出年金)専用ファンドへの資金流入、つまり確定拠出年金からの資金流入も増えてきている。DC専用のバランス型ファンドには、5月、6月共に300億円を超える資金流入があった。2カ月連続の300億円超の資金流入は、確定拠出年金が始まった2001年以来、初めてのことである。

今後も確定拠出年金からバランス型ファンドへの大規模な資金流入が続く、もしくは拡大するかもしれない。5月に制度改正(改正確定拠出年金法)があり、金融機関が用意する運用商品について、元本確保型商品の提供が義務でなくなった。それに合わせて、初期設定商品を元本確保型商品からバランス型投信に変更、もしくは導入企業に変更を推奨する運用管理機関が出てきている。2カ月のみで判断することはできないが、5月、6月のDC専用バランス型ファンドへの資金流入増加は、そのような取り組みによる変化の兆しとみることもできる。

2018年上期は原油先物ファンドが好調

6月にパフォーマンスが良好であったファンドを見ると、NYSE FANG+指数に連動するファンドが最も好調であった【図表4】。NYSE FANG+指数はフェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル(厳密には親会社のアルファベット)などの米ハイテク株に等金額投資する株価指数である。6月は米中貿易摩擦が懸念されていたが、米ハイテク株はそれらの影響が軽微だと考えられ堅調であった。特に業績拡大期待が高まったフェイスブックやネットフリックスが指数の上昇に寄与したようだ。それに加えて、指数に組入れられているテスラが、6月にそれまで懸念されていた生産問題が改善するとの期待感が膨らんだことから株価が急反発したことも追い風になった。
【図表4】 2018年6月の高パフォーマンス・ランキング
その他、6月は原油先物ファンドも好調であった【図表4:赤字】。6月下旬にOPEC総会やイランからの供給減少懸念などによって原油先物価格が大きく上昇した。原油先物ファンドは、その恩恵を直接受けたといえる。また、2018年上期の高パフォーマンスのファンドを見ても、原油先物ファンドは内外株式のアクティブ・ファンドに混じって上位にきている。2018年上期は「原油価格の上昇」が投信の一つのテーマであったといってよいだろう【図表5:赤字】。
【図表5】 2018年1-6月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2018年07月04日「研究員の眼」)

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