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- 伸び悩むキャッシュ・フロー~日本株式の重石になる可能性も~
2017年11月21日
1――リーマン・ショック前の高値を一瞬、超えたTOPIX
2017年も残すところあとわずかになりました。やや早いですが2017年の日本株式を振り返ると、企業業績は一貫して好調なものの、3月から9月の上旬にかけては北朝鮮情勢のミサイル発射や核実験など地政学リスクが意識され調整する局面がありました。それでも9月の中旬以降は、北朝鮮に対する懸念が後退したことや、衆議院の解散総選挙に伴う政策継続期待も追い風となり、上昇基調になりました。11月に入ってもその流れは変わらず、TOPIX(東証株価指数)は1,800ポイント台にと突入し、8日には2007年のリーマン・ショック前の高値を超えました【図表1】。ただ、1,800ポイント台は長く続かなく、足元では再び1,700ポイント台後半で推移しています。
2――キャッシュ・フローから見たら割高感が強かった
8日以降、調整した要因は約2カ月でTOPIXの騰落率が累積で15%に迫るなど上昇が早かっただけに、需給要因など様々なものが挙げられます。筆者はキャッシュ・フロー(企業の事業活動の中で獲得する資金)から見て、割高感が高まっていたことも関係したと考えています。
実際にTOPIXの予想PER(株価収益率:青線)と予想PCFR(株価キャッシュ・フロー倍率:緑線)の推移を見ると、 8日はPCFRから見ると割高感が高まっていたことが分かります【図表2】。予想PCFRはアベノミクス相場が始まってからではチャイナ・ショック前の2015年6月の8.8倍が最高でしたが、足元8日も8.6倍とそれに次ぐ水準まで切り上がっていました。リーマン・ショック前の高値圏の9倍前後と比較しても、割高感があったことがうかがえます。
予想PERも、8日には15.3倍まで上昇していました。それでも2013年5月のバーナンキ・ショック前や2015年6月のチャイナ・ショック前は16倍台、更にはリーマン・ショック前の高値圏では18~19倍であった事を踏まえると、予想PCFRほどは割高感が高まっているようには見受けられませんでした。
キャッシュ・フローは、会計基準などに依存する利益よりも国際比較がしやすい指標です。そのため、日本の株式市場のメインプレイヤーである外国人投資家がPCFRの割高感を意識して利益確定のために日本株式を売却しても、なんら不思議でないでしょう。
実際にTOPIXの予想PER(株価収益率:青線)と予想PCFR(株価キャッシュ・フロー倍率:緑線)の推移を見ると、 8日はPCFRから見ると割高感が高まっていたことが分かります【図表2】。予想PCFRはアベノミクス相場が始まってからではチャイナ・ショック前の2015年6月の8.8倍が最高でしたが、足元8日も8.6倍とそれに次ぐ水準まで切り上がっていました。リーマン・ショック前の高値圏の9倍前後と比較しても、割高感があったことがうかがえます。
予想PERも、8日には15.3倍まで上昇していました。それでも2013年5月のバーナンキ・ショック前や2015年6月のチャイナ・ショック前は16倍台、更にはリーマン・ショック前の高値圏では18~19倍であった事を踏まえると、予想PCFRほどは割高感が高まっているようには見受けられませんでした。
キャッシュ・フローは、会計基準などに依存する利益よりも国際比較がしやすい指標です。そのため、日本の株式市場のメインプレイヤーである外国人投資家がPCFRの割高感を意識して利益確定のために日本株式を売却しても、なんら不思議でないでしょう。
3――利益ほど伸びていないキャッシュ・フロー
2007年度以降のTOPIXのEPSと一株あたり減価償却費の実績値の推移を見ると、EPSは2015年度に資源価格の急落などを受けて商社が軒並み赤字に転落したこともあり減益になりましたが、2013、2014、2016年度と最高益を更新しました【図表4:左】。その一方で減価償却費は、2013年度以降は増加基調にあるもののかなり緩やかで、最高益を更新した2016年度でもリーマン・ショック前の2007年度を下回っていました【図表4:右】。まさに、業績は好調なわりに設備投資などに慎重な企業が多かったことが、減価償却費の推移にあらわれているといえるでしょう。
2017年度も増益率が10%台後半の増益が予想されています。その一方で、減価償却費はどうでしょうか。一部では積極的な設備投資を行っている、または投資の計画を立てている企業もありますが、市場全体で見ると減価償却費の大幅な増加は想定しづらい状況です。ゆえに、予想EPSと予想CPSの拡大スピードの差がさらに開いていると考えられます。
2017年度も増益率が10%台後半の増益が予想されています。その一方で、減価償却費はどうでしょうか。一部では積極的な設備投資を行っている、または投資の計画を立てている企業もありますが、市場全体で見ると減価償却費の大幅な増加は想定しづらい状況です。ゆえに、予想EPSと予想CPSの拡大スピードの差がさらに開いていると考えられます。
4――最後に
11月中旬以降は、TOPIXは1,700ポイント台後半で推移し方向感の乏しい展開が続いています。業績拡大が続くのであれば、需給要因などに伴う調整が一巡した後、再び上昇基調に戻る可能性が高いと思います。ただし、キャッシュ・フローの成長が緩慢な状態も続くのであれば、期待したほど株価が上昇しないことも考えられます。
「来年度、日経平均3万円」といったかなり楽観的な予想も一部で出てきています。ただ、足元のキャッシュ・フローの拡大速度を見ると、そのような過度の楽観視を出来る状況ではないのではないでしょうか。
「来年度、日経平均3万円」といったかなり楽観的な予想も一部で出てきています。ただ、足元のキャッシュ・フローの拡大速度を見ると、そのような過度の楽観視を出来る状況ではないのではないでしょうか。
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03-3512-1785
経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
(2017年11月21日「基礎研レター」)
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