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- 貸家着工にバブルの懸念?-住宅投資関数で説明できない好調さ
2016年11月11日
1――住宅着工を牽引する貸家
住宅着工戸数は、消費増税以降総じて低調に推移していたものの、今年に入ってから急速な回復を見せその後も高水準での推移が続いている(図表1)。
特に、今年に入ってから貸家の増加が顕著である。貸家の着工戸数(季節調整済み・年率換算値)は、2015年7-9月期に40.3万戸と消費増税前のピーク(2013年10-12月期:38.4万戸)を上回った後、10-12月期に一時的に落ち込んだものの、年初からは増加を続け持家、分譲住宅との差は一段と広がりを見せている。2016年7-9月期の着工戸数を1-3月期の水準と比較すると、貸家が+15.7%と持家(+1.7%)、分譲住宅(▲7.3%)に比べ増加率は際立って高い。
本稿では、持家、貸家の着工に焦点を当て、これらに影響を及ぼすと考えられる要因を取上げるとともに、その影響について考察する。また、足もとの住宅着工を取り巻く環境を整理した上で、今後の住宅着工の動向について展望したい。
特に、今年に入ってから貸家の増加が顕著である。貸家の着工戸数(季節調整済み・年率換算値)は、2015年7-9月期に40.3万戸と消費増税前のピーク(2013年10-12月期:38.4万戸)を上回った後、10-12月期に一時的に落ち込んだものの、年初からは増加を続け持家、分譲住宅との差は一段と広がりを見せている。2016年7-9月期の着工戸数を1-3月期の水準と比較すると、貸家が+15.7%と持家(+1.7%)、分譲住宅(▲7.3%)に比べ増加率は際立って高い。
本稿では、持家、貸家の着工に焦点を当て、これらに影響を及ぼすと考えられる要因を取上げるとともに、その影響について考察する。また、足もとの住宅着工を取り巻く環境を整理した上で、今後の住宅着工の動向について展望したい。
2――住宅投資関数の推計
しかし、2013年以降では実績値と推計値の乖離が目立つようになっている。持家の着工戸数の推移をみると、2013年4-6月期から推計値を上回り、その状況が2014年1-3月期まで続いている。特に、2013年4-6月期から2013年10-12月期までの3四半期は推計値を大幅に上回っている。その後、2014年4-6月期から2015年1-3月期にかけて推計値を下回る水準で推移し、2015年4-6月期には一旦推計値にほぼ追いついたが、その後再び下方に乖離した状況が続き、足もとで漸く乖離が解消している。
一方、貸家は2010年から2012年にかけて実績値が推計値を下回る状況が続いた後、2013年後半からは推計値を上回る状況が足もとまで続いている。
このように、持家、貸家はともに住宅関数が示す推計値との乖離がみられるが、乖離の状況は異なっている。以下では、住宅着工戸数の実績値と推計値が乖離する要因として考えられるものを取り上げ、その影響について考察する。
一方、貸家は2010年から2012年にかけて実績値が推計値を下回る状況が続いた後、2013年後半からは推計値を上回る状況が足もとまで続いている。
このように、持家、貸家はともに住宅関数が示す推計値との乖離がみられるが、乖離の状況は異なっている。以下では、住宅着工戸数の実績値と推計値が乖離する要因として考えられるものを取り上げ、その影響について考察する。
3――実績値と推計値の乖離要因
1|消費増税を見込んだ駆け込み需要
まず実績値と推計値の乖離の原因として考えられるのは、2014年4月の消費増税に関わる駆け込み需要とその反動の影響である。持家は、駆け込み需要が発生したと考えられる2013年4-6月期から2014年1-3月期にかけて実績値が推計値を上回る水準で推移しており、その後反動の影響から2016年1-3月期にかけて実績値は推計値を下回る水準が続いた。駆け込み需要における推計値からの乖離を推計するとその規模は着工ベースで年率+5万戸程度であり、反動期における推計値との乖離は年率▲3万戸程度と、駆け込み需要に比べるとやや軽微にとどまった。
貸家も2013年から実績値が推計値を上回る状況が始まっており、消費増税前の駆け込みの影響があった可能性を指摘できる。しかし、増税実施後も実績値は推計値を上回る水準で推移しており、貸家においては消費増税後の反動減を確認することができない。このように、持家、貸家ともに消費増税前の駆け込み着工とみられる動きが確認できる。一方、消費増税後の住宅着工戸数の推移をみると反動減の規模は持家、貸家の間に差はあるものの、何らかの要因によって緩和された様子が確認できる。
まず消費増税による駆け込み需要の反動減を緩和した要因として想定されるのが、2017年4月に予定されていた消費増税前の駆け込み需要である。持家の推移をみると、2015年末にかけて推計値から大きく下方に乖離した状況が続いていたが、その後実績値が持ち直したことで推計値との乖離は大幅に縮小し、2016年4-6月期にはほぼ解消している。貸家については、2015年7-9月期の時点で推計値との乖離は見られなかったが、2015年10-12月以降実績値が推計値を上回るペースで増加を続け、推計値との乖離は2016年1-3月期(年率+2万戸程度)、4-6月期(年率+6万戸程度)と拡大傾向にある。このように、年明け以降みられる住宅着工の回復の動きは、消費増税を見込んだ駆け込み需要によって一定程度説明できると考えられる。ただし、その規模は前回消費増税時に比べ小さかったものと推察される。
まず実績値と推計値の乖離の原因として考えられるのは、2014年4月の消費増税に関わる駆け込み需要とその反動の影響である。持家は、駆け込み需要が発生したと考えられる2013年4-6月期から2014年1-3月期にかけて実績値が推計値を上回る水準で推移しており、その後反動の影響から2016年1-3月期にかけて実績値は推計値を下回る水準が続いた。駆け込み需要における推計値からの乖離を推計するとその規模は着工ベースで年率+5万戸程度であり、反動期における推計値との乖離は年率▲3万戸程度と、駆け込み需要に比べるとやや軽微にとどまった。
貸家も2013年から実績値が推計値を上回る状況が始まっており、消費増税前の駆け込みの影響があった可能性を指摘できる。しかし、増税実施後も実績値は推計値を上回る水準で推移しており、貸家においては消費増税後の反動減を確認することができない。このように、持家、貸家ともに消費増税前の駆け込み着工とみられる動きが確認できる。一方、消費増税後の住宅着工戸数の推移をみると反動減の規模は持家、貸家の間に差はあるものの、何らかの要因によって緩和された様子が確認できる。
まず消費増税による駆け込み需要の反動減を緩和した要因として想定されるのが、2017年4月に予定されていた消費増税前の駆け込み需要である。持家の推移をみると、2015年末にかけて推計値から大きく下方に乖離した状況が続いていたが、その後実績値が持ち直したことで推計値との乖離は大幅に縮小し、2016年4-6月期にはほぼ解消している。貸家については、2015年7-9月期の時点で推計値との乖離は見られなかったが、2015年10-12月以降実績値が推計値を上回るペースで増加を続け、推計値との乖離は2016年1-3月期(年率+2万戸程度)、4-6月期(年率+6万戸程度)と拡大傾向にある。このように、年明け以降みられる住宅着工の回復の動きは、消費増税を見込んだ駆け込み需要によって一定程度説明できると考えられる。ただし、その規模は前回消費増税時に比べ小さかったものと推察される。
景気ウォッチャー調査における住宅販売会社の「駆け込み」に関するコメント数の推移をみると、前回の消費増税時に比べ明らかに少ないことが分かる(図表4)。前述のとおり2014年4月の消費増税時には持家、貸家ともに駆け込み需要の規模は大きかったものの、2017年4月に予定されていた消費増税を見込んだ駆け込み需要はそれほど顕在化しなかった可能性が高い。実際、2016年1月調査では「受注量は前年比で微増の状況で、客による消費増税前の駆け込み需要の動きは、前回に比べて少なく感じる」(近畿・住宅販売会社)とのコメントが寄せられている。
消費増税の時期は2016年6月に2019年10月への先送りが決定されているが、国内景気の回復の遅れを理由に早い時期から先送り観測が高まっていたこと、前回の消費増税時に需要の先食いが発生したことなどから、消費増税を見込んだ駆け込み需要の規模はそれ程大きくなかったものと考えられる。
消費増税の時期は2016年6月に2019年10月への先送りが決定されているが、国内景気の回復の遅れを理由に早い時期から先送り観測が高まっていたこと、前回の消費増税時に需要の先食いが発生したことなどから、消費増税を見込んだ駆け込み需要の規模はそれ程大きくなかったものと考えられる。
(2016年11月11日「基礎研レポート」)
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