2017年02月09日

景気ウォッチャー調査(17年1月)~回復基調に一服感、トランプ新政権に対する不透明感が重石

岡 圭佑

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景気ウォッチャー調査 景気の現状判断・先行き判断一覧

1.景気の現状判断DI(季節調整値):改善の動きに一服感

2月8日に内閣府から公表された17年1月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DI(季節調整値)は49.8と前月から▲1.6ポイント悪化し、拡大・縮小の節目である50を3ヵ月ぶりに下回った。景況感は昨年夏場以降緩やかな回復を続けていたが、足元ではその動きが一服している。内閣府は、基調判断を「着実に持ち直している」から「持ち直しが続いているものの、一服感がみられる」に引き下げた。

今回の調査では、株高による資産効果が支えとなるなか、年末年始の需要増の反動やトランプ新政権の政策に対する不透明感などが重石となった模様である。家計動向関連では、気温低下の影響で冬物商材が好調であったことや春節によるインバウンド需要の増加が百貨店の景況感を大きく押し上げた。一方、一部の地域で大雪など悪天候が響いたほか、年末年始商戦後の買い控えが影響したようだ。企業部門においては、引き続き公共工事の増加が下支えとなるものの、製造業を中心にトランプ新政権の政策への懸念が高まっていることが景況感を大きく押し下げた。

コメントをみると、人手不足関連や円安・株高を好感するコメントが依然として多く、消費の下押し要因となっている生鮮食品への懸念は幾分和らいでいる(最終頁の図参照)。一方、トランプ新政権の動向を不安視するコメントは前月から増加している。

2.円安・株高が下支えも、トランプ新政権への不透明感が重石

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月差▲0.7ポイント)、企業動向関連(同▲2.7ポイント)、雇用関連(同▲4.6ポイント)のいずれも前月から悪化した。家計動向関連では、小売関連(前月差+0.2ポイント)がプラスとなったが、飲食関連(同▲2.1ポイント)、サービス関連(同▲1.9ポイント)、住宅関連(同▲1.0ポイント)が全体を押し下げた。
景気の現状判断DI(季節調整値)/現状判断DI(季節調整値)の変動要因
小売関連(原数値)の要因分解 コメントをみると、家計動向関連のうち小売関連では「株高の影響等もあるが、高額品の動きが顕著であると共に、バレンタイン催事も前年を上回る形でスタートしている」(東海・百貨店)など、株高による資産効果を指摘するコメントが多く寄せられたほか、「気温低下に伴い、コートなどの秋冬実需商品がようやく動き出し、衣料品の売上が持ち直してきた」(九州・百貨店)とのコメントのように、気温の低下も景況感にプラスに働いた模様である。また今年は春節が1月末からということもあり、「春節の影響もあるのか、訪日旅行者の予約が直近で入ってくる。個人客の予約だけをみると、前年比で24%増である」(近畿・都市型ホテル)とのコメントが寄せられた。一方、「年末年始で販売量が多くなったが、その反動で1月上旬から客数が大幅に減少した」(九州・コンビニ)など、年末年始商戦後の買い控えを指摘するコメントが多く寄せられたほか、「大雪の影響もあり来客数は減少している。雪の日以外の来客数には変動はない。年末年始の出費の影響からか、客が手にとるのは低単価な商品が増えている」(東海・スーパー)とのコメントのように、一部の地域では大雪の影響による消費の落ち込みがみられたようだ。

住宅関連では、「同業他社の話でも、注文住宅の着工が相変わらず少ない」(東海・住宅販売会社)とのコメントのように、住宅市況に陰りもみられる。

企業動向関連では、製造業(前月差▲3.4ポイント)、非製造業(同▲2.0ポイント)ともに前月から悪化した。コメントをみると、製造業では「自動車関連を中心に動きは良いが、米国の新大統領による自動車産業への方針などに、やや不安がある」(近畿・金属製品製造業)などのように、トランプ米大統領の政策に対する不透明感が強まっている様子が窺える。非製造業では、「公共工事の受注が堅調に推移しており、民間建設も大型物件の受注が確保できている」(北海道・建設業)といったように、公共工事の増加が指摘するコメントが散見された一方で、「燃料価格が徐々に値上がりし、トラック業界の経営にも響いてくる」(東海・輸送業)など、原油高の悪影響を懸念する声も聞かれた。

雇用関連では、「人材不足で正社員、バイトを問わず人が欲しいという企業が増えている」(南関東・求人情報誌製作会社)と引き続き人材需要の高まりが下支えとなる一方で、「求職者の派遣業への登録が減っている。仕事の依頼とスタッフの就労がつながりにくい」(四国・人材派遣会社)といったように、求職者の減少を指摘するコメントが多く寄せられた。

(2017年02月09日「経済・金融フラッシュ」)

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岡 圭佑

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