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- 企業物価指数(2016年12月)~円安の急進・原油高で下落幅は大幅に縮小
1.国内企業物価は前月比で2ヵ月連続の上昇
国内企業物価注1の前年比寄与度をみると、鉄鋼・建材関連(11月:前年比▲0.0%→12月:同0.1%)、為替・海外市況連動型(11月:前年比▲0.4%→12月:同0.2%)がプラス寄与に転じたほか、素材(その他)(11月:前年比▲0.6→12月:同▲0.5%)のマイナス寄与が前月から縮小したため、国内企業物価は前年比で下げ幅を縮小した。
中国景気に底打ち感が強まっていることや、引き続きトランプ次期政権のもとで景気拡大期待が高まっていることなどを背景に国際商品相場が堅調に推移していることに加え、円安の進行もあり物価下落圧力は弱まりつつある。対前年比の伸び率をみると、鉄鋼・建材関連(11月:前年比▲0.4%→12月:同0.4%)は、スクラップ類(11月:前年比26.7%→12月:同36.3%)が堅調に推移したことから、前年比で上昇に転じた。為替・海外市況連動型(11月:前年比▲5.5%→12月:同3.0%)についても、石油・石炭製品(11月:前年比▲5.6%→12月:同3.7%)や非鉄金属(11月:前年比▲5.4%→12月:同1.5%)の上昇を主因にプラスに転じるなど物価の下落圧力は弱まっている。特に石油・石炭製品は、OPEC減産合意による原油需給の改善観測を背景に原油価格(ドバイ、月中平均)が大幅に上昇(11月:前年比5.0%→12月:同47.5%)したことが影響した。
注1 1.機械類:はん用機器、生産用機器、業務用機器、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、輸送用機器
2.鉄鋼・建材関連:鉄鋼、金属製品、窯業・土石製品、製材・木製品、スクラップ類
3.素材(その他):化学製品、プラスチック製品、繊維製品、パルプ・紙・同製品
4.為替・海外市況連動型:石油・石炭製品、非鉄金属
5.その他:食料品・飲料・たばこ・飼料、その他工業製品、農林水産物、鉱産物
2.輸入物価の下落幅は大きく縮小
輸入物価(円ベース)注2の前年比寄与度をみると、石油・石炭・天然ガス(11月:前年比▲2.8%→12月:同▲0.1%)、化学製品(11月:前年比▲0.8%→12月:同▲0.5%)、食料品・飼料(11月:前年比▲0.9%→12月:同▲0.4%)、機械器具(11月:前年比▲3.2%→12月:同▲1.7%)、その他(11月:前年比▲1.7%→12月:同▲0.8%)のマイナス寄与が前月から縮小したほか、金属・同製品(11月:前年比▲0.6%→12月:同0.7%)がプラス寄与に転じたことが、輸入物価の下げ幅を縮小させた。
対前年比の伸び率をみてみると、石炭やLNGが堅調に推移したことや円安の進行を背景に、石油・石炭・液化天然ガス(円ベース)は前年比▲0.3%と前月(同▲10.5%)からマイナス幅を大きく縮小した。
金属・同製品(円ベース)については、鉄鉱石などの金属素材(前年比12.2%)、鉄鋼(前年比7.8%)の上昇を受けて前年比7.3%(11月:同▲6.0%)と上昇に転じた。石油・石炭・液化天然ガス(円ベース)、金属・同製品(円ベース)に対してそれぞれ1ヵ月程度の先行性を有する原油価格(ドバイ)、日本銀行国際商品指数が上昇基調にあることから、今後も物価上昇圧力が高まることが予想される。
米大統領選挙でトランプ氏が勝利したことを受けて為替レート(月中平均)は、11月の1ドル=108.3円(前年比11.6%の円高)から、12月には1ドル=116.0円(前年比4.7%の円高)と一段と円安が進行した後、1月(1ドル=115.9円程度、前年比2%程度の円高)も同水準で推移するなど円高の影響は一巡しつつある。
原油価格を含めた国際商品市況の持ち直しによって物価下落圧力が緩和されていることに加え、円安の進行で物価の下押し圧力が一巡することから、輸入物価は2016年度末までに前年比でプラスに転じるだろう。
注2 1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品
3.最終財への下押し圧力は和らぎつつある
4.国内企業物価は年明け以降プラスへ
(2017年01月17日「経済・金融フラッシュ」)
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