2016年11月11日

貸家着工にバブルの懸念?-住宅投資関数で説明できない好調さ

岡 圭佑

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■要旨

住宅着工戸数は、今年に入ってから貸家を中心に急速な回復を見せ、その後も高水準での推移が続いている。持家、貸家の着工戸数を被説明変数とした住宅投資関数の推計結果をみると、持家、貸家はともに消費増税以降、住宅関数が示す推計値との乖離がみられる。

乖離の要因として考えられるのは、2017年4月の消費増税を見込んだ駆け込み需要である。消費増税に伴う負担軽減措置として採用された「住宅ローン減税の拡充」は消費増税直後の落ち込みを抑える効果を発揮したが、持続的に効果を発揮したとは考え難い。貸家については、相続税増税に伴い節税需要が高まったことが影響したとみられる。

先行きの住宅着工戸数を見通すと、引き続き緩和的な金融環境や節税需要の高まりが支えとなることが予想される。ただし、空室率の上昇や中長期的には人口動態の変化が住宅需要の変化をもたらすことも予想される。住宅着工の先行きを展望する上で、こうした構造的な変化はリスク要因として認識しておくべきだろう。

■目次

1――住宅着工を牽引する貸家
2――住宅投資関数の推計
3――実績値と推計値の乖離要因
  1|消費増税を見込んだ駆け込み需要
  2|住宅ローン減税の拡充
  3|相続税改正に伴う節税需要の喚起
4――先行きは供給過剰の懸念が浮上
付注
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岡 圭佑

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