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- インドの生命保険市場(3)-責任準備金やソルベンシー等の財務面の監督規制はどのようになっているのか-
2015年12月21日
インドの生命保険市場(3)-責任準備金やソルベンシー等の財務面の監督規制はどのようになっているのか-
4―保険法の改正に伴う規則等の改正(財務関係)
前回のレターにおいて、2015年3月の新たな改正保険法「The Insurance Laws(Amendment) Act 2015 」の成立に伴い、監督当局が既存の規則やガイドラインの見直し等を行ってきていることを述べた。今なお、いくつかの見直し等のためのED(Exposure Draft:公開草案)等も公表されてきており、その中のいくつかの例を紹介した。
ここでは、新たに財務関係の規制改正の動きを紹介する。9
1|全体の大きな改正の動き
IRDAIは、既存の規制、特に生命保険事業の保険数理評価やその監督報告要件に関する事項についての再検討を行うために、2015年7月22日に、保険業界とIRDAIのメンバーからなる委員会を設立した。この委員会は、以下の規則等のレビューを行い、適切な改正を勧告することが求められた。
(1)IRDA(Assets Liabilities and Solvency Margin of Insurers)Regulations, 2000
(2)IRDA(Actuarial Report and Abstract) Regulations, 2000
(3)IRSA(Life Reinsurance) Regulations, 2013
(4)Appointed Actuary Regulations for Life Insurance
(5)Appointed Actuary’s Annual Report
(6)この関係で対応することが必要と委員会が感じるその他の事項
これを受けて、検討が行われ、9月30日に、(1)、(2)、(5)をカバーする第1弾の報告書「REVIEW OF REGULATIONS-LIFE INSURANCE Part1 」10が公表された。
これによれば、例えば、以下のような項目が勧告されている。
(a)3―4|で述べた「リスク・ベース(risk-based)」のソルベンシー規制の一部導入
(b)商品特性に応じた責任準備金評価方式の導入
(c)アポインテッド・アクチュアリー年次報告書(Appointed Actuary’s Annual Report)11を単なる事実や数値を並べる報告書から、より専門的で定性的な調査等に基づく報告書へと再構築
まずは、この第1弾の報告書に対する関係者の意見等を踏まえて、今後各種の見直しが進められていくことになる。なお、(3)と(4)についても、第2弾の報告書がまとめられていくことになっている。
2|「IRDAI(Assets Liabilities and Solvency Margin of Insurers) Regulations, 2015 」のED
標記の規則に対して、生命保険事業に関して、大きくは以下の3点の改正提案がなされている12。なお、この改正は2016年4月1日から発効することが想定されている。
(1)ソルベンシー・マージンの「管理レベル(control level)」に関する規定の導入
(これは、保険法の改正で、法第64VA条第3項に管理レベルの規定が導入されたことに伴うもの)
(2)新たな準備金の導入
(責任準備金評価のための前提が保険会社の現在の経験事業費を反映していない場合に、追加の事業費準備金を積立)
(3)ソルベンシー・マージンの算出上における一定の種類の資本の認容
(優先株と劣後債が対象)
9 EDの内容自体も短期間で見直しが行われたりしているので、あくまでも、現時点ではこのような形での見直しが検討されている、ということで紹介しておく。
10 損害保険についても、同日に、同様の報告書が公表されている。
11 この内容については、次回のレターで報告する。
12 こうした改正内容は、2012年に行われたIMF(国際通貨基金)によるFSAP(金融セクター 評価プログラム)において受けた指摘を踏まえたものともなっている。
ここでは、新たに財務関係の規制改正の動きを紹介する。9
1|全体の大きな改正の動き
IRDAIは、既存の規制、特に生命保険事業の保険数理評価やその監督報告要件に関する事項についての再検討を行うために、2015年7月22日に、保険業界とIRDAIのメンバーからなる委員会を設立した。この委員会は、以下の規則等のレビューを行い、適切な改正を勧告することが求められた。
(1)IRDA(Assets Liabilities and Solvency Margin of Insurers)Regulations, 2000
(2)IRDA(Actuarial Report and Abstract) Regulations, 2000
(3)IRSA(Life Reinsurance) Regulations, 2013
(4)Appointed Actuary Regulations for Life Insurance
(5)Appointed Actuary’s Annual Report
(6)この関係で対応することが必要と委員会が感じるその他の事項
これを受けて、検討が行われ、9月30日に、(1)、(2)、(5)をカバーする第1弾の報告書「REVIEW OF REGULATIONS-LIFE INSURANCE Part1 」10が公表された。
これによれば、例えば、以下のような項目が勧告されている。
(a)3―4|で述べた「リスク・ベース(risk-based)」のソルベンシー規制の一部導入
(b)商品特性に応じた責任準備金評価方式の導入
(c)アポインテッド・アクチュアリー年次報告書(Appointed Actuary’s Annual Report)11を単なる事実や数値を並べる報告書から、より専門的で定性的な調査等に基づく報告書へと再構築
まずは、この第1弾の報告書に対する関係者の意見等を踏まえて、今後各種の見直しが進められていくことになる。なお、(3)と(4)についても、第2弾の報告書がまとめられていくことになっている。
2|「IRDAI(Assets Liabilities and Solvency Margin of Insurers) Regulations, 2015 」のED
標記の規則に対して、生命保険事業に関して、大きくは以下の3点の改正提案がなされている12。なお、この改正は2016年4月1日から発効することが想定されている。
(1)ソルベンシー・マージンの「管理レベル(control level)」に関する規定の導入
(これは、保険法の改正で、法第64VA条第3項に管理レベルの規定が導入されたことに伴うもの)
(2)新たな準備金の導入
(責任準備金評価のための前提が保険会社の現在の経験事業費を反映していない場合に、追加の事業費準備金を積立)
(3)ソルベンシー・マージンの算出上における一定の種類の資本の認容
(優先株と劣後債が対象)
9 EDの内容自体も短期間で見直しが行われたりしているので、あくまでも、現時点ではこのような形での見直しが検討されている、ということで紹介しておく。
10 損害保険についても、同日に、同様の報告書が公表されている。
11 この内容については、次回のレターで報告する。
12 こうした改正内容は、2012年に行われたIMF(国際通貨基金)によるFSAP(金融セクター 評価プログラム)において受けた指摘を踏まえたものともなっている。
5―まとめ
前回までのレターで、インドの生命保険市場が、大きな潜在力を有し、今後さらなる成長が期待できる市場であること、IRDAIが市場の変化に対応して、幅広い分野で保険監督規制の見直し等を行ってきていること、を述べた。今回は、責任準備金やソルベンシー等の財務面の監督規制について、その現状及び昨今の改正の動きについて述べた。
IRDAIは、健全性に関する規制等に関して、国際的な監督規制やEUのソルベンシーⅡの動向、保険契約に関する国際会計基準設定の動き等を見据えながら、リスクにより適切に対応した規制への変更を検討してきている。インドにおけるこのような動きは、日本における今後の財務面の監督規制の見直しを考えていく上においても、参考になるものがあると考えられる。
次回のレターでは、こうした生命保険会社の財務の健全性に関する規制において、重要な役割を果たしているアポインテッド・アクチュアリー(Appointed Actuary)の制度について、報告する。
IRDAIは、健全性に関する規制等に関して、国際的な監督規制やEUのソルベンシーⅡの動向、保険契約に関する国際会計基準設定の動き等を見据えながら、リスクにより適切に対応した規制への変更を検討してきている。インドにおけるこのような動きは、日本における今後の財務面の監督規制の見直しを考えていく上においても、参考になるものがあると考えられる。
次回のレターでは、こうした生命保険会社の財務の健全性に関する規制において、重要な役割を果たしているアポインテッド・アクチュアリー(Appointed Actuary)の制度について、報告する。
(2015年12月21日「基礎研レター」)
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