2015年11月30日

インドの生命保険市場(1)-巨大国インドの生命保険市場はどのような状況にあるのか-

中村 亮一

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1―はじめに

インドは、今後中国を抜いて、世界最大の人口を有する国になることが予測されている。その人口構造も、中国とは異なり、今後も比較的長期間にわたって、厚い若年層・中年層を有することが想定されている。このため、生命保険市場という観点からみた場合、将来にわたってさらなる成長が期待される市場と認識されている。

今回のレターでは、インドの生命保険市場の概要について、報告することとする。

次回以降のレターで、昨今のインドにおける保険監督規制の改革を巡る状況等について、報告する。
 

2―保険市場の概要-発展段階にあるが成長余地は極めて大きい-

1|インドの生命保険市場1

インドは、2014年ベース2で、人口が12億7,592万人、GDPが2,051.23十億ドル、一人当たりGDPが1,607.65ドルの国である。因みに、日本は、人口が1億2,706万人、GDPが4,602.37十億ドル、一人当たりGDPが36,221.81ドルであることから、日本との比較では、インドは人口では日本の10倍程度、GDPでは日本の半分程度の国である。

保険市場については、スイス再保険会社の資料3によれば、2014年ベースの収入保険料で、生命・損害保険合計で 69,889百万ドル、うち生命保険で55,299百万ドルとなっており、生命保険の比率が高い。

さらに、この収入保険料規模は、保険合計で世界第15位、生命保険で世界第11位となる。全世界の保険料に対するシェアは、保険合計が1.5%、生命保険が2.1%(日本は、それぞれ10.0%、14.0%)となる。普及率を示す対GDP収入保険料比率では、保険合計で3.3%、生命保険で2.6%(日本は、それぞれ10.8%、8.4%、世界平均は、それぞれ6.2%、3.4%)となっている。

なお、生命保険の普及率(対GDP収入保険料比率)を、他のアジア諸国と比較したものが下の表である。タイやマレーシアといった国々には若干劣るが、中国、フィリピン、インドネシアといった国々を上回る水準となっている。
生命保険普及率(対GDP収入保険料比率)
一方で、保険密度を示す1人当たり保険料は、2013年ベースで、保険全体で52ドル、生命保険で41ドル(日本は、それぞれ4,207ドル、3,346ドル、世界平均は、それぞれ652ドル、366ドル)となっており、未だ低い水準にとどまっている。

インドの人口及び年齢階層別の人口構成の推移を見た場合、下記の上の図が示しているように、中位推計では2050年を超えても人口が増加し、下の図が示しているように、今後も厚い若年層・中年層が存在し続けると予測されている。
インドの人口及び人口ピラミッド(年齢階層別分布)の推移(予測)(国連(United Nations)資料による)
さらに、インドの平均寿命は、今後急速に伸びていき、一方で、合計特殊出生率は、先進国と同様に低下していくことが予測されていることから、社会全体としての高齢化も進んでいくことになる。これにより、将来の老後保障のためのニーズが高まってくることも想定されることになる。
 
インドの平均寿命及び合計特殊出生率の推移(予測)(国連(United Nations)資料による)


以上の点から、インドの生命保険市場は、現時点では、国全体としての規模に比較して、まだまだ発展途上にあるといえるが、今後の成長の余地が極めて大きく、生命保険会社にとって、大変魅力的な市場である、と考えられる。
インドにおける保険会社(2014年9月末) 2|インドの保険会社

(1)会社数

インドにおいては、2014年9月末で、53の保険会社が登録されている。このうち、24社が生命保険
会社であり、28社が損害保険会社である。これらに加えて、唯一の国営再保険会社4として、GIC(General Insurance Corporation of India)が存在している。

さらに、53の会社のうち、8社が公共会社であり、再保険会社のGICに加えて、生命保険はLIC(Life Insurance Corporation of India)の1社、損害保険では、ECGC5とAIC6という2つの特殊保険会社に加えて、他に4社の国営保険会社が存在している。これら以外の残りの45社が民間保険会社となっている。

なお、医療保険専門会社が5社存在し、医療保険、傷害保険及び旅行保険を提供している。
 
1 以下のインドの生命保険市場に関するデータは、特に断りがない限り、保険監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of India)の「ANNUAL REPORT 2013-14」等による。
2 IMF(国際通貨基金)の「World Economic Outlook Database Oct 2015」に基づいている。
3 スイス再保険会社sigma No4/2015「World insurance in 2014:back to life」「2014年の世界の保険:活気を取り戻す」
4 2015年3月に保険法が改正され、外国再保険会社が支店を開設することが認められることになった。なお、再保険サービスは国際的な再保険会社によって提供されている。
5 ECGC(Export Credit Guarantee Corporation)は、輸出信用保険を引き受けている会社
6 AIC(Agriculture Insurance Company of India)は、農業保険を引き受けている会社
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中村 亮一

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