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ブルーファイナンスの課題-気候変動より低い関心が普及を阻む

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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一つ目のアプローチは、資金使途の幅が広い「グリーンボンド」や「サステナビリティボンド」の枠組に組み込む方法である。ブルーボンドはグリーンボンドの枠組の中に存在する「海洋・水資源」という特定のテーマに焦点を当てたものとして扱われており4、このアプローチを利用する例は少なくない(図表2)。しかし、大規模なプロジェクトを持たない小規模事業者には、組み込ませる先の「グリーンボンド」や「サステナビリティボンド」がないという課題もある。
小規模なブループロジェクトは、特定の沿岸地域や流域コミュニティと密接に関連しており、地方自治体や中小企業が主要な担い手である。そのため主要な担い手と継続的な関係性を構築している地方金融機関には、ブルーローンを推進する上で優位性があると考えられる。事実、地域金融機関の73%が企業のSDGs支援を実施し、22%がESG課題起点での企業の支援を実施し、12%が取引先企業の評価においてESG要素を取り入れている7。頼もしい限りだが、一方で取引先企業の評価において気候変動を対象とする金融機関が77.4%に上るのに対し、水資源を対象とする金融機関は30.6%にとどまっている。この気候変動と水資源との間の関心のギャップこそ、国内ブルーファイナンス普及における課題の一つと言える。「海の豊かさを守ろう」も重要なESG課題であるだけでなく、藻場・干潟の再生は気候変動対策にもつながる。ブループロジェクトに対する注目・関心の高まりを期待したい。
1 海洋環境の保護や持続可能な海洋経済活動へ資金を供給するために発行される債券
2 海洋環境や生物多様性の保全(下水処理高度化を含む)、持続可能な海洋経済活動を推進する取組み
3 World Bank. 2025.“Accelerating Blue Finance:Instruments, Case Studies, and Pathways to Scale”
4 ICMA「ガイダンス・ハンドブック」(2025年6月)
5 2020年にARUHIが日本初のグリーンRMBSを発行、住宅金融支援機構は2025年11月にグリーンMBSの発行を予定している。
6 海洋環境の保護や持続可能な海洋経済活動に対する融資
7 グリーンファイナンスポータル「ESG地域金融に関する取組状況について」(2025年3月)
(2025年10月20日「研究員の眼」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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