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2025年08月27日

Z世代にとってサステナビリティは本当に「意識高い系」なのか-若年層の「利他性」をめぐるジレンマと、その突破口の分析

生活研究部 准主任研究員 小口 裕

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■要旨
 
  • Z世代(1990年代後半から2010年前後に生まれた世代)は、2017年改訂の学習指導要領のもと、学校教育の現場でSDGsに関する教育を受けてきた世代である。
     
  • ニッセイ基礎研究所の調査・分析によれば、この世代は他世代以上にSDGsについて学び、その重要性を理解していることが示されている。
     
  • 一方で、Z世代について「サステナビリティを『意識高い系』と見て距離を置いている」といった言説も見られるが、「意識高い系=無関心」といった短絡的な理解は、Z世代の実像を見誤る可能性がある。
     
  • むしろ本稿の分析からは、Z世代が持続可能性に高い関心を持ちつつも、行動に移すうえで特有の文化的・社会的な制約があることが明らかになった。これは、サステナビリティやSDGsに関する政策・施策を実効性あるものにするためには、より繊細かつ多面的なアプローチが必要であることを意味する。
     
  • 本稿では、このような背景を文化的・社会的な視点から捉え直し、サステナビリティ政策・施策を社会に根づかせ、機能させるためには、性差や世代差を踏まえた戦略的なアプローチが不可欠であることを示す。その上で、特にZ世代をサステナブルな行動へと動かすために有効と思われる、実践的なアプローチの方向性について検討する。


■目次

1――Z世代にとってサステナビリティは本当に「意識高い系」なのか
2――Z世代とサステナビリティの関わりの実態
  1|Z世代は学びと知識量では先頭を走る~日本で初めての「SDGs教育世代」
  2|それでも行動に結びつかない
   ~「大切なのはわかるけど、自分といまいち結びつかない」ジレンマ
  3|Z世代の「意識高い系」ラベルに潜む誤解
   ~「意識が高い」正体は「利他に過ぎる姿勢」のこと
3――Z世代とサステナビリティにおける「ジレンマ」の背景にあるもの
  1|世間の目とSNS、そして「間接互恵性」
   ~利他をためらう見えない圧力とインセンティブの不足
  2|欧米の「共通善」と日本の「世間」文化、そのズレ
   ~世間に敏感なZ世代がつい敬遠してしまう理由
4――Z世代を意識した政策・施策設計への足掛かり
 ~身近な「思いやり」をどう物語として伝えるか
  1|ビジネスで求められる実践的アプローチ
  2|ファミリーマートの「涙目」シールキャンペーンの好事例
  3|Z世代にとって「お堅い」社会課題を「身近さ・共感・楽しさ・社会的意義」へと翻訳
5――Z世代の「意識高い系=サステナビリティと距離を置く姿勢」という解釈は本質を見誤る

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年08月27日「基礎研レポート」)

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生活研究部   准主任研究員

小口 裕 (おぐち ゆたか)

研究・専門分野
消費者行動(特に、エシカル消費、サステナブル・マーケティング)、地方創生(地方創生SDGsと持続可能な地域づくり)

経歴
  • 【経歴】
    1997年~ 商社・電機・コンサルティング会社において電力・エネルギー事業、地方自治体の中心市街地活性化・商業まちづくり・観光振興事業に従事

    2008年 株式会社日本リサーチセンター
    2019年 株式会社プラグ
    2024年7月~現在 ニッセイ基礎研究所

    2022年~現在 多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)
    2021年~2024年 日経クロストレンド/日経デザイン アドバイザリーボード
    2007年~2008年(一社)中小企業診断協会 東京支部三多摩支会理事
    2007年~2008年 経済産業省 中心市街地活性化委員会 専門委員

    【加入団体等】
     ・日本行動計量学会 会員
     ・日本マーケティング学会 会員
     ・生活経済学会 准会員

    【学術研究実績】
    「新しい社会サービスシステムの社会受容性評価手法の提案」(2024年 日本行動計量学会*)
    「何がAIの社会受容性を決めるのか」(2023年 人工知能学会*)
    「日本・米・欧州・中国のデータ市場ビジネスの動向」(2018年 電子情報通信学会*)
    「企業間でのマーケティングデータによる共創的価値創出に向けた課題分析」(2018年 人工知能学会*)
    「Webコミュニケーションによる消費者⾏動の理解」(2017年 日本マーケティング・サイエンス学会*)
    「企業の社会貢献に対する消費者の認知構造に関する研究 」(2006年 日本消費者行動研究学会*)

    *共同研究者・共同研究機関との共著

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