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- 若手人材の心を動かす、企業の「社会貢献活動」とは(1)-「行動科学」で考える、パーパスと従業員の自発行動のつなぎ方
2025年04月11日
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■要旨
「若手人材の心を動かす社会貢献活動とは何か。そして『意識はあるが、行動できない』そのギャップをどう埋めるのか。」
・本稿は、企業経営における「社会貢献活動」を、制度やイメージ戦略ではなく、「社員の自発性」を引き出す経営資源として再定義しようという提案である。ニッセイ基礎研究所による独自調査と行動科学の知見を組み合わせた本シリーズは、全3回にわたり、若手従業員が“動きたくなる”社員参加型の社会貢献活動設計のヒントを探る。今回はその第1回として、「パーパスの実装」と「従業員参加型の社会貢献活動」をどうつなげるかを考察する。
・若年層を中心に、働く上で「社会とのつながり」や「自律的な成長機会」を求める傾向が強まっている。こうした背景のもと、社会貢献活動に社員が参加している企業は、消費者からの信頼や利用意向が高まる傾向も確認されており、企業価値の可視化がより重視されている。
・では、なぜ制度を用意しても社員は動かないのか?その鍵を握る1つが「行動科学」によるアプローチである。本稿では、心理的な視点から社員のモチベーション構造を紐解いて、組織が行うべき打ち手は以下の5つに整理した。
(1) 使命感の設計:社員が社会課題を「自分ごと」と感じるためのパーパス共有や体験機会の提供
(2) 障壁の除去:時間・心理的コストの低減、制度面での柔軟な配慮
(3) 参加導線の設置:行動のハードルを下げる、分かりやすい活動導線の設計
(4) 形骸化の抑止:継続的に意味づけを行い、活動の価値を再確認できる場の提供
(5) 価値創造との接続:成果を可視化し、経営戦略と結びつけて発信する仕組みづくり
・先行する行動科学の研究や理論に基づいたこれらの視点は、単なる制度設計ではなく、「人がどうすれば動きたくなるか」に着目した実践的アプローチである。さらに、ニッセイ基礎研究所が別稿にて解析した「人のサステナビリティ意識の7因子」との対応関係を整理することで、企業が現場で使える“行動設計の地図”を描き出す。
・次回第2回は、この「やりたいけれどやれない」という“行動ギャップ”をどう埋めるかを掘り下げ、行動科学とマーケティングの視点から実装に向けた処方箋を提案する。
■目次
1――はじめに
1|はじめに~優秀な若手人材の確保と定着は人的資本戦略の中核に
2|従業員の社会貢献活動への参加
~離職リスク低減やエンゲージメント強化にも繋がる
2――従業員の持続可能な行動をどう促すか~行動科学「SHIFTフレームワーク」からの示唆
1|SHIFTフレームワークとは
~社員の持続可能な行動を引き出す“5つの心理スイッチ”
2|サステナブル行動の7つの心理因子
~SHIFT理論との対応から見えてくる行動設計のヒント
3――行動科学の視点でみる、従業員の持続可能な行動に対する心理的インパクト
1|「感情・認知」と「習慣」が行動を動かす鍵となる
2|次回:行動を“やりたい”から“やる”に変えるには?
~SHIFTで「行動ギャップ」を超える設計を考える
「若手人材の心を動かす社会貢献活動とは何か。そして『意識はあるが、行動できない』そのギャップをどう埋めるのか。」
・本稿は、企業経営における「社会貢献活動」を、制度やイメージ戦略ではなく、「社員の自発性」を引き出す経営資源として再定義しようという提案である。ニッセイ基礎研究所による独自調査と行動科学の知見を組み合わせた本シリーズは、全3回にわたり、若手従業員が“動きたくなる”社員参加型の社会貢献活動設計のヒントを探る。今回はその第1回として、「パーパスの実装」と「従業員参加型の社会貢献活動」をどうつなげるかを考察する。
・若年層を中心に、働く上で「社会とのつながり」や「自律的な成長機会」を求める傾向が強まっている。こうした背景のもと、社会貢献活動に社員が参加している企業は、消費者からの信頼や利用意向が高まる傾向も確認されており、企業価値の可視化がより重視されている。
・では、なぜ制度を用意しても社員は動かないのか?その鍵を握る1つが「行動科学」によるアプローチである。本稿では、心理的な視点から社員のモチベーション構造を紐解いて、組織が行うべき打ち手は以下の5つに整理した。
(1) 使命感の設計:社員が社会課題を「自分ごと」と感じるためのパーパス共有や体験機会の提供
(2) 障壁の除去:時間・心理的コストの低減、制度面での柔軟な配慮
(3) 参加導線の設置:行動のハードルを下げる、分かりやすい活動導線の設計
(4) 形骸化の抑止:継続的に意味づけを行い、活動の価値を再確認できる場の提供
(5) 価値創造との接続:成果を可視化し、経営戦略と結びつけて発信する仕組みづくり
・先行する行動科学の研究や理論に基づいたこれらの視点は、単なる制度設計ではなく、「人がどうすれば動きたくなるか」に着目した実践的アプローチである。さらに、ニッセイ基礎研究所が別稿にて解析した「人のサステナビリティ意識の7因子」との対応関係を整理することで、企業が現場で使える“行動設計の地図”を描き出す。
・次回第2回は、この「やりたいけれどやれない」という“行動ギャップ”をどう埋めるかを掘り下げ、行動科学とマーケティングの視点から実装に向けた処方箋を提案する。
■目次
1――はじめに
1|はじめに~優秀な若手人材の確保と定着は人的資本戦略の中核に
2|従業員の社会貢献活動への参加
~離職リスク低減やエンゲージメント強化にも繋がる
2――従業員の持続可能な行動をどう促すか~行動科学「SHIFTフレームワーク」からの示唆
1|SHIFTフレームワークとは
~社員の持続可能な行動を引き出す“5つの心理スイッチ”
2|サステナブル行動の7つの心理因子
~SHIFT理論との対応から見えてくる行動設計のヒント
3――行動科学の視点でみる、従業員の持続可能な行動に対する心理的インパクト
1|「感情・認知」と「習慣」が行動を動かす鍵となる
2|次回:行動を“やりたい”から“やる”に変えるには?
~SHIFTで「行動ギャップ」を超える設計を考える
(2025年04月11日「基礎研レター」)
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経歴
- 【経歴】
1997年~ 商社・電機・コンサルティング会社において電力・エネルギー事業、地方自治体の中心市街地活性化・商業まちづくり・観光振興事業に従事
2008年 株式会社日本リサーチセンター
2019年 株式会社プラグ
2024年7月~現在 ニッセイ基礎研究所
2022年~現在 多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)
2021年~2024年 日経クロストレンド/日経デザイン アドバイザリーボード
2007年~2008年(一社)中小企業診断協会 東京支部三多摩支会理事
2007年~2008年 経済産業省 中心市街地活性化委員会 専門委員
【加入団体等】
・日本行動計量学会 会員
・日本マーケティング学会 会員
・生活経済学会 准会員
【学術研究実績】
「新しい社会サービスシステムの社会受容性評価手法の提案」(2024年 日本行動計量学会*)
「何がAIの社会受容性を決めるのか」(2023年 人工知能学会*)
「日本・米・欧州・中国のデータ市場ビジネスの動向」(2018年 電子情報通信学会*)
「企業間でのマーケティングデータによる共創的価値創出に向けた課題分析」(2018年 人工知能学会*)
「Webコミュニケーションによる消費者⾏動の理解」(2017年 日本マーケティング・サイエンス学会*)
「企業の社会貢献に対する消費者の認知構造に関する研究 」(2006年 日本消費者行動研究学会*)
*共同研究者・共同研究機関との共著
小口 裕のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/25 | 若手人材の心を動かす、企業の「社会貢献活動」とは(2)-「行動科学」で考える、パーパスと従業員の自発行動のつなぎ方 | 小口 裕 | 基礎研レター |
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【若手人材の心を動かす、企業の「社会貢献活動」とは(1)-「行動科学」で考える、パーパスと従業員の自発行動のつなぎ方】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
若手人材の心を動かす、企業の「社会貢献活動」とは(1)-「行動科学」で考える、パーパスと従業員の自発行動のつなぎ方のレポート Topへ