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サステナビリティに関する意識と消費者行動2024(1)-踊り場に立つサステナビリティの社会認知と、2030年への課題

生活研究部 准主任研究員 小口 裕
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ニッセイ基礎研究所では、2022年から「サステナビリティに関わる意識と消費者行動 」に関する調査・研究を進めているが、本稿では2024年8月に実施した調査を中心に、消費者のサステナビリティに関する意識や消費態度、そして関係するキーワード認知・理解など、多角的な視点から、その現状について3回のレポートに分けて明らかにしていく。
サステナブルな社会の実現に向けては、政府・行政機関、株主、投資家、金融機関、企業、事業者団体、NPO・NGO、消費者などの多様なステークホルダーが関与している。株主や投資家に対しては、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)等による情報開示基準の制定が進められており、サステナビリティに関連した企業の価値創造の透明性向上に向けた取り組みが着実に進んでいる。
しかし一方で、「循環型経済モデル」や「責任ある消費(Responsible Consumption)」のさらなる促進に向けて、市民や消費者による広範で積極的な支持と自発的な取り組みが欠かせない。
本稿の調査結果から、2023年の調査と比較して「3R/4R」、「SDGs」、「ウェルビーイング」、「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」など、サステナビリティの中核をなすキーワードの認知率・理解率は着実に増加していることがわかった。しかし、全般的には2023年に比べて低下したキーワードが多く、伸び悩みの傾向を示している。
特に、消費の観点からは「エシカル消費(倫理的消費)」はまだまだ認知・理解ともに十分に高いとは言えない。
2030年に向けて、「責任ある消費」や「循環型経済モデル」の主な担い手である、消費者のサステナビリティの認知と理解、そして行動を後押ししていく必要があり、さらなる社会的な啓発や、新たな取り組みが求められていると思われる。
拙稿「実効性と成果が問われ始めた企業のサステナビリティ推進(2024年10月) 」では、消費者庁の調査結果に基づいて、「責任ある消費」の促進に向けた企業や公共団体のアプローチとして「サステナブル・マーケティング(Sustainable Marketing) 」の先行研究レビューと、エシカル面に配慮した商品への一定の価格プレミアムを許容する消費者の増加傾向にある点を指摘した。
本稿の分析では、一定の世帯金融資産や年収水準があり、かつ、世帯年収が高まる、または年代が60代を超える場合、キーワードの認知と理解が進む傾向が確認されている。
これらの層が「循環型経済モデル」や「責任ある消費」を推進する社会的役割を担っていくことへの期待を込め、引き続き注目していきたい。
■目次
1――はじめに~消費者への、より一層のサステナビリティの浸透・理解、行動促進に向けて
2――サステナビリティ・キーワードの認知率
1|サステナビリティ・キーワードの認知率
~上位は「SDGs」「フードロス」、2023年から変わらず
2|サステナビリティ・キーワード認知率の経年変化
~2023年から増加したのは、4つのワードのみ
3|サステナビリティ・キーワード認知率の層別分析
~若年層は「3R/4R」、シニアは「健康寿命」がトップ
4|キーワード認知に影響を与える要因
~高世帯収入はプラス、十分ではない世帯金融資産はマイナス
3――サステナビリティ・キーワード理解状況
1|サステナビリティ・キーワードの理解率と経年変化
~「SDGs」で約5割、多くは3割未満にとどまる
2|サステナビリティ・キーワードの認知理解率
~認知・理解の両面で伸び悩む「エシカル消費」
4――まとめ
~着実に進む株主・投資家向けのサステナ情報開示。消費者への浸透・理解は大きな課題
(2024年12月20日「基礎研レポート」)
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- 【経歴】
1997年~ 商社・電機・コンサルティング会社において電力・エネルギー事業、地方自治体の中心市街地活性化・商業まちづくり・観光振興事業に従事
2008年 株式会社日本リサーチセンター
2019年 株式会社プラグ
2024年7月~現在 ニッセイ基礎研究所
2022年~現在 多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)
2021年~2024年 日経クロストレンド/日経デザイン アドバイザリーボード
2007年~2008年(一社)中小企業診断協会 東京支部三多摩支会理事
2007年~2008年 経済産業省 中心市街地活性化委員会 専門委員
【加入団体等】
・日本行動計量学会 会員
・日本マーケティング学会 会員
・生活経済学会 准会員
【学術研究実績】
「新しい社会サービスシステムの社会受容性評価手法の提案」(2024年 日本行動計量学会*)
「何がAIの社会受容性を決めるのか」(2023年 人工知能学会*)
「日本・米・欧州・中国のデータ市場ビジネスの動向」(2018年 電子情報通信学会*)
「企業間でのマーケティングデータによる共創的価値創出に向けた課題分析」(2018年 人工知能学会*)
「Webコミュニケーションによる消費者⾏動の理解」(2017年 日本マーケティング・サイエンス学会*)
「企業の社会貢献に対する消費者の認知構造に関する研究 」(2006年 日本消費者行動研究学会*)
*共同研究者・共同研究機関との共著
小口 裕のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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2025/04/11 | 若手人材の心を動かす、企業の「社会貢献活動」とは(1)-「行動科学」で考える、パーパスと従業員の自発行動のつなぎ方 | 小口 裕 | 基礎研レター |
2025/03/28 | サステナビリティに関する意識と消費者行動2024(3)-消費者のサステナ意識・行動ギャップを解く4つのアプローチ | 小口 裕 | 基礎研レポート |
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