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サステナビリティに関する意識と消費行動-意識はシニア層ほど高いが、Z世代の一部には行動に積極な層も

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- ニッセイ基礎研究所が3月末に20~74歳の約2,500名を対象に実施した調査によると、サステナビリティについてのキーワードで『聞いたことがあるもの』の最多は「SDGs」で約7割。次いで「再生可能エネルギー」、「カーボンニュートラル」、「コンプライアンス(法令遵守)」、「ダイバーシティ」、「地方創生」などが続くが、現在のところ、いずれのキーワードも内容まで十分に理解している消費者は半数に満たない。
- 性別には、男性では「CSR」や「ESG」など企業活動、女性では「フェアトレード」や「エシカル消費」など日常の消費生活に関連するものの認知度が高い。年代別には、社会貢献意識が高いと言われるZ世代を含む20歳代より、高年齢ほど全体的に認知度は高い傾向がある。なお、政府世論調査によると、足元の社会貢献意識は若者より中高年で高いが、現在の中高年が若者だった頃と比べれば今の若者の方が高い。
- サステナビリティについての意識や行動について見ると、半数以上は地球環境や社会問題に対して危機意識を持つが、サステナビリティを意識した生活をしている割合は3割に満たず、情報の受発信やボランティア活動などに取り組む割合は1割程度であり、高い意識は醸成されつつあるが、現状、意識の高さと行動には隔たりがある。一方でコロナ禍をきっかけに行動し始めたケースも比較的多い。
- 性別には、女性の方が男性よりサステナブル意識が高く、具体的な行動を実施している傾向がある。年代別には、シニア層で高い意識を持つが、Z世代を含む20歳代の方がボランティア活動や情報の発信などの行動に積極的に取り組んでいる傾向がある。ただし、20歳代の2割程度であるため、「Z世代はサステナブル意識が高い」という印象は世代全体ではなくZ世代の一部の積極層の行動によるものと見られる。
- 日頃の消費生活でサステナビリティを意識した行動を見ると、エコバッグの持参や詰め替え製品の購入といったプラスチックごみが出にくい行動は浸透しつつあるが、製品購入時に価格よりもサステナビリティを優先する行動は1割に満たない。これは、現状、サステナブル意識を投影できるような製品が少ないことに加えて、価格を優先しても、モノを大切に使うといった他の行動でも貢献できる影響もあるだろう。
- 性別には女性の方が男性よりサステナビリティを意識した消費生活を送っているが、価格よりもサステナビリティを優先して製品を買う消費者は少数派である。年代別には、全体的に高年齢ほどサステナビリティを意識した消費生活を送っているが、売上の一部が寄付されるなど、製品を買うことが社会貢献につながる行動は1割に満たずないながらも、20歳代とシニア層で多い傾向がある。
- 以上より、現段階では日本の消費者のサステナブル意識の高さと行動には隔たりがあり、発展過程、あるいは導入期にある。企業にとってはサステナビリティを配慮した製品の製造にはコストがかかるが、消費者の意識の高さを見れば非常に響きやすい状況にはある。将来的にはサステナビリティがすべての消費者に重要なものとなるだろうが、導入期の現在は消費者属性による特徴を捉えたターゲット設定も重要である。
■目次
1――はじめに~近年、高まるサステナビリティに関する意識、その実態は?
2――サステナビリティについてのキーワードの認知状況
~SDGsが首位、年齢が高いほど認知度は高い
1|全体の状況
~SDGsは7割、再生可能エネルギーは6割が聞いたことがあるが内容まで理解は半数以下
2|性別の状況
~男性は企業活動、女性は日常の消費生活に関連するキーワードの認知度が高い
3|年代別の状況
~Z世代を含む20歳代より人生経験が長く、幅広い知識のある高年齢ほど認知度は高い
3――サステナビリティについての意識や行動
~意識はシニアで高く、行動はZ世代の一部で積極的
1|全体の状況
~半数以上が危機意識を持つがボランティア等の実施は約1割、ただしコロナ禍が契機にも
2|性別の状況
~女性の方が男性より意識は高いが、現在のところ、意識の高さと行動には隔たりも
3|年代別の状況
~シニアで意識高く、20歳代で行動に積極的(ただし約2割)でコロナ禍が契機にも
4――サステナビリティを意識した日頃の消費行動
~女性やシニアで積極的、20歳代の一部で寄付傾向も
1|全体の状況
~約8割がエコバッグ持参の一方、価格よりサステナビリティを優先する消費者は1割未満
2|性別の状況
~女性の方が男性よりサステナビリティを意識した消費生活、ただし価格より優先は1割未満
3|年代別の状況
~高年齢層ほどサステナブルな消費生活だが、20歳代の一部で寄付や企業応援傾向も
5――現時点ではサステナビリティを意識した消費生活は導入期、消費者属性による特徴把握も重要
(2022年05月31日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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