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2025年07月24日

4年連続で過去最高の新契約保険料収入となった米国個人生命保険販売-2025年以降も増加が予測されるものの、先行き不透明感も-

保険研究部 上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長 有村 寛

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1――米国個人生命保険2024年の新契約販売業績の概況

米国における生保・年金のマーケティングに関する代表的な調査・教育機関であるLIMRAが発表したところによれば、2024年の個人生命保険販売(新契約年換算保険料ベース)は、対前年3%増となり、4年連続で過去最高を更新することとなった1

(図表1)は、新契約年換算保険料(=販売された新契約の保険料を、一時払保険料は1/10して年換算した数値2)、新契約高(=販売された新契約の死亡保険金額の合計額)、新契約件数(=販売された契約の件数)、という3つの指標で見た個人生命保険販売業績である3
【図表1】米国 個人生命保険販売業績
 (図表2)は、2022年以降の新契約販売実績について、四半期毎に見たものである。
【図表2】米国 個人生命保険販売業績(四半期毎、対前年増加率)
2021年に記録的な伸びとなった米国個人生命保険販売は、2022年後半に一旦減速傾向を示したものの、2023年以降、好調な経済を背景に再び増加基調に転じ、2025年第1四半期まで堅調に推移している。

(図表3)は、2024年米国個人保険販売における新契約年換算保険料、新契約件数のランキングトップ5を示している。米国では、収入保険料ベースの業績が注目されることが多いが、件数ベースも併せてみると、収入保険料、件数ともランキング入りしているのは、Northwestern MutualとNew York Lifeのみで、この2社以外は、それぞれのランキングで顔ぶれが異なる。主要顧客層の1件あたりの保険料の違いによるものと考えられ、小口契約を多件数販売している会社と、1件あたりの保険料が高額な富裕層をターゲットとしている会社との違いによるものといえよう。
【図表3】2024年 新規契約業績ランキング(新契約年換算保険料、件数)
 
1 LIMRA ニュースリリース「U.S. Individual Life Insurance Premium Sets New Sales Record in 2024」(2025年3月25日)、「U.S. Retail Individual Life Insurance Sales Survey - Summary Report」(4Q 2024)。
2 LIMRA資料ではAnnualized Premiumと表記されている。
3 LIMRAでは、米国生保会社70社から直接データを集めており、米国生保市場のカバー率は、新契約年換算保険料85%、新契約高90%、新契約件数60%である。「図表1」中、2021-2023年の数値は、上記データに加え、各社の年次報告書、S&P Global Market Intelligence、A.M. Best、ウェブサイト等により、LIMRAが米国生保市場全体の数値を推計したものである。2024年の数値は、(図表1)の注釈に記載のとおり。

2――将来業績予測(

2――将来業績予測(2025-2027年、新契約年換算保険料)

(図表4)は、LIMRAによる2025-2027年の個人生命保険販売予測(新契約年換算保険料、増加率)を示している。昨年3月時点における予測(2024、2025年)は、経済状況を背景に、ともに5%成長を予測していたが、今回の予測はかなり幅があることがわかる。
【図表2】2025-2027年 米国個人保険業績予測
LIMRAでは、経済状況について、「景気減速の兆しはみられるものの、概ね良好に推移している」とする一方で、大統領選の直後は、将来の業績予測は難しく、「2025年以降、誰が金融政策を決定するのか、地政学的リスクが経済に影響を与えるのかどうかなど、未知の要因に左右される部分」もある、としている。加えて、インフレは鈍化しているものの、中東紛争の拡大やウクライナ紛争をめぐる動き、トランプ関税や財政赤字の増加に関連した2025年の政策変更により、再過熱する可能性がある、という4

米国個人保険販売業績は、ここまで、4年連続で過去最高を更新してきており、昨年3月時点におけるLIMRAの予測では、2025年も引き続きの高成長とされていたが、トランプ関税の影響や、ウクライナ・中東における紛争等を背景に、先行きの不透明感が高まっているといえよう。

また、LIMRAでは、「パンデミックの間に高まり、その後も長く高止まりしていた生命保険に対する消費者の関心は、全体としては減少傾向にある」5としており、今後、米国の生保マーケットは、どのように変化していくのか。

世界最大の保険市場を抱える米国の状況については、引き続き、注視が必要である。
 
4 LIMRA「U.S. Individual Life Insurance Sales Forecast 2024 – 2027」(2025年3月25日)。
  なお、フィッチ(Fitch Solutions Group Limited, BMI United States Insurance Reports(2025年4月24日))では、インフレ懸念や経済の不確実性による需要下振れ可能性もあるとしつつも、可処分所得が増加傾向にあり、潜在的なニーズも高いこと等を背景に、2025年、2026年の生保業績は、それぞれ3.7%、4.2%増を予測している。
5 前掲注釈4と同様。なお、コロナ禍以降、米国において生命保険に関する消費者のニーズギャップが拡大している点については、小著「米国消費者の生命保険ニーズギャップは過去最大 -コロナ禍以降、ニーズギャップは拡大―」『保険・年金フォーカス』(2024年5月10日)(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/78484_ext_18_0.pdf?site=nli)でも紹介している。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年07月24日「保険・年金フォーカス」)

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保険研究部   上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長

有村 寛 (ありむら ひろし)

研究・専門分野
保険商品・制度

経歴
  • 【職歴】
    1989年 日本生命入社
    1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
    1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職

    2023年~ 大阪経済大学経済学部非常勤講師

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