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2025年06月02日

米個人所得・消費支出(25年4月)-個人消費(前月比)は高い伸びとなった前期から低下、市場予想に一致

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得が市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想に一致

5月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は4月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.8%(前月改定値:+0.7%)と+0.5%から上方修正された前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%を上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月:+0.7%)と高い伸びとなった前月から低下、市場予想の+0.2%に一致した。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.1%(前月:+0.7%)と前月から大幅に低下した一方、横這いを予想した市場予想を上回った(図表5)。貯蓄率1は4.9%(前月:4.3%)と前月から+0.6%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:横這い)と前月を小幅に上回った一方、市場予想(+0.1%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.1%(前月改定値:+0.1%)とこちらは横這いから小幅上方修正された前月、市場予想(+0.1%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.1%(前月:+2.3%)と前月、市場予想(+2.2%)を下回った。コア指数は+2.5%(前月改定値:+2.7%)と+2.6%から小幅上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+2.5%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:個人消費(前月比)は前月から大幅に低下、貯蓄率は上昇

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)は4月が+0.2%とプラスを維持したものの、3月の+0.7%からは大幅に低下した(図表1)。後述するように財消費がマイナスに転じた一方、サービス消費は堅調を維持した。個人消費は前月に高い伸びとなった反動で伸びが減速したものの、現時点では関税に伴う消費への影響は限定的と言えよう。

個人所得(前月比)は4月が+0.8%と高い伸びとなったが、主に特殊要因に伴う社会保障の支払い増加による。これらの結果、貯蓄理率は4月が4.9%と24年5月以来、1年ぶりの水準に上昇した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合、コアともに前月比で小幅な伸びに留まったほか、前年同月比では前月から低下しており、インフレ上昇圧力が緩和していることを示した。このため、物価に関しても現時点では関税の影響は限定的とみられる。

3.所得動向:社会保障の支払いに伴い大幅に増加

4月の個人所得(前月比)は移転所得が+2.8%(前月:+1.1%)と前月から伸びが大幅に加速し、個人所得全体を押し上げた(図表2)。移転所得の増加は主に24年12月に成立した社会保障公正法に基づき様々な理由で年金を満額受給していなかった退職者に給付金を支払ったことによる。一方、賃金・給与が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みの伸びを維持したものの、自営業者所得が+1.3%(前月:+1.7%)と依然高い伸びながら前月から鈍化したほか、利息配当収入が▲0.4%(前月:+0.3%)と前月からマイナスに転じるなど、マチマチの結果となった。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、4月の名目が+0.8%(前月:+0.7%)と高い伸びとなった前月からさらに伸びが加速した(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は+0.7%(前月:+0.7%)とこちらも24年1月以来の水準となった前月並みの高い伸びを維持した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財消費がマイナスに転じた一方、サービス消費は堅調を維持

4月の名目個人消費(前月比)は、財消費が▲0.1%(前月:+1.0%)と高い伸びとなった前月の反動もあってマイナスに転じた一方、サービス消費が+0.4%(前月:+0.6%)と前月から鈍化したものの、堅調な伸びを維持して個人消費全体を押し上げた(図表4)。

財消費は、耐久財が▲0.3%(前月:+3.7%)と高い伸びとなった前月からマイナスに転じたほか、非耐久財は▲横這い(前月:▲0.4%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。

耐久財では、家具・家電が+0.2%(前月:+0.9%)と前月から伸びが鈍化したほか、娯楽財・スポーツカーが▲0.5%(前月:+0.7%)、自動車・自動車部品が▲0.6%(前月:+9.8%)といずれも前月からマイナスに転じた。とくに自動車は関税前の駆け込み需要で3月に非常に高い伸びとなっていたが、4月のマイナスは前月の反動に加え、駆け込み需要が一巡したことが考えられる。

非耐久財ではガソリン・エネルギーが+2.0%(前月:▲7.2%)と前月からプラスに転じた一方、衣料・靴が▲0.6%(前月:+1.0%)、食料・飲料が▲横這い(前月:+0.2%)といずれも前月からマイナスに転じて非耐久財消費全体を押し下げた。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.7%(前月:+0.3%)、医療サービスが+0.6%(前月:+0.5%)と前月から伸びが加速したほか、輸送サービスが+0.6%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じた。一方、外食・宿泊が+0.9%(前月:+1.9%)、娯楽サービスが+0.1%(前月:+0.3%)と前月から伸びが鈍化したほか、金融サービスが▲0.3%(前月:+0.4%)と前月からマイナスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格(前年同月比)は3ヵ月連続のマイナス

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+0.5%(前月:▲2.7%)と前月からプラスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.3%(前月:+0.5%)とこちらは前月からマイナスに転じた。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲5.7%(前月:▲5.0%)と3ヵ月連続でマイナスとなったほか、マイナス幅が拡大した(図表7)。食料品価格指数は+1.9%(前月:+2.0%)と前月並みの伸びとなり、17年6月以降のプラスが継続した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年06月02日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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