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- 米FOMC(25年5月)-予想通り、3会合連続で政策金利を据え置き。当面は様子見姿勢を継続へ
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2025年05月08日
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1.金融政策の概要:予想通り、3会合連続政策金利を据え置き
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が5月6日-7日(現地時間)に開催された。FRBは市場の予想通り、政策金利を3会合連続で4.25-4.5%に据え置いた。量的引締め政策の変更はなかった。今回の金融政策方針は全会一致での決定となった。
今回発表された声明文では、景気判断部分で「純輸出の変動はデータに影響を与えた」との表現が追加されたものの、景気判断の変更はなかった。景気見通し部分では経済の見通しの不確実性が「一段と」高まっていることが示されたほか、「失業率の上昇とインフレ率の上昇のリスクが高まっていると判断している」との表現が追加された。金融政策ガイダンス部分の変更は無かった。
今回発表された声明文では、景気判断部分で「純輸出の変動はデータに影響を与えた」との表現が追加されたものの、景気判断の変更はなかった。景気見通し部分では経済の見通しの不確実性が「一段と」高まっていることが示されたほか、「失業率の上昇とインフレ率の上昇のリスクが高まっていると判断している」との表現が追加された。金融政策ガイダンス部分の変更は無かった。
2.金融政策の評価:経済見通しの不確実性から当面の様子見姿勢を示唆
政策金利の据え置きは予想通り。また、金融政策ガイダンスをはじめ声明文の変更が小幅に留まったのも予想通りだった。
パウエル議長の記者会見では、関税政策や関税政策に伴う景気やインフレ率への影響は非常に不透明であることを強調する一方、足元の経済状況は関税の影響にも関わらず堅調を維持していると評価し、現在の金融政策が適切であるため様子見するための実質的なコストが発生していないことを示した。このため、FRBは今後の見通しがより明確になるまで金融政策で暫く様子見姿勢を続ける方針を明確にした。記者会見の質疑応答では失業率とインフレ率が同時に上昇する場合にどちらの政策目標の優先するのか複数の質問が寄せられた。これに対して同議長は非常に難しい問題とした上で、適切な金融政策は失業率やインフレ率の動向次第で対応が変わることを示した上で、現時点でそれを判断するのは時期尚早との回答を繰り返した。
当研究所は本日のFOMC会合を受けて、当分様子見姿勢を続ける方針が示された中、次回6月会合までに関税政策や景気、インフレ率への影響が明確になる可能性は低いため、6月会合での利下げは見送られると予想する。現時点ではFRBは関税政策に伴う景気減速を重視し、インフレ高進を一時的と判断した上で9月に利下げを開始、その後年内は2回の追加利下げを実施すると予想する。ただし、関税政策の予見可能性は低く、景気やインフレへの影響が不透明なため、現時点で金融政策を予想するのは困難である。
パウエル議長の記者会見では、関税政策や関税政策に伴う景気やインフレ率への影響は非常に不透明であることを強調する一方、足元の経済状況は関税の影響にも関わらず堅調を維持していると評価し、現在の金融政策が適切であるため様子見するための実質的なコストが発生していないことを示した。このため、FRBは今後の見通しがより明確になるまで金融政策で暫く様子見姿勢を続ける方針を明確にした。記者会見の質疑応答では失業率とインフレ率が同時に上昇する場合にどちらの政策目標の優先するのか複数の質問が寄せられた。これに対して同議長は非常に難しい問題とした上で、適切な金融政策は失業率やインフレ率の動向次第で対応が変わることを示した上で、現時点でそれを判断するのは時期尚早との回答を繰り返した。
当研究所は本日のFOMC会合を受けて、当分様子見姿勢を続ける方針が示された中、次回6月会合までに関税政策や景気、インフレ率への影響が明確になる可能性は低いため、6月会合での利下げは見送られると予想する。現時点ではFRBは関税政策に伴う景気減速を重視し、インフレ高進を一時的と判断した上で9月に利下げを開始、その後年内は2回の追加利下げを実施すると予想する。ただし、関税政策の予見可能性は低く、景気やインフレへの影響が不透明なため、現時点で金融政策を予想するのは困難である。
3.声明の概要
(金融政策の方針)
(フォワードガイダンス)
(景気判断)
(景気見通し)
- これらの目標を支えるため、委員会はFF金利の誘導目標水準を4.25-4.5%で据え置くことを決定(変更なし)
- 財務省証券、政府機関債、政府機関の住宅ローン担保証券の保有を引き続き削減する(変更なし)
- 委員会は4月以降、財務省証券の月間償還上限額を250億ドルから50億ドルに減額し、保有証券の減少ペースを緩める。委員会は政府機関債、政府機関の住宅ローン担保証券の月間償還上限額を350億ドルに維持する(今回削除)
(フォワードガイダンス)
- 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
- FF金利の目標レンジの追加的な調整の程度とタイミング検討する際には、委員会は入ってくるデータ、進展する見通し、およびリスクのバランスを注意深く評価する(変更なし)
- 委員会は最大限の雇用を支え、インフレを2%の目標に戻すことに強くコミットしている(変更なし)
- 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
- 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
- 委員会の評価は労働市場の情勢、インフレ圧力とインフレ期待に関する指標、金融情勢、国際情勢など幅広い情報を考慮する(変更なし)
(景気判断)
- 純輸出の変動はデータに影響を与えたが、最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している(「純輸出の変動はデータに影響を与えたが」”Although swings in net exports have affected the data”の表現を追加)
- 失業率はここ数ヵ月低水準で安定しており、労働市場の状況は引き続き堅調である(変更なし)
- インフレ率はやや高止まりしている(変更なし)
(景気見通し)
- 経済見通しの不確実性は一段と高まっている(「一段と」”further”の表現を追加)
- 委員会はデュアル・マンデートの両サイドのリスクに高い注意を払っており、失業率の上昇とインフレ率の上昇のリスクが高まっていると判断している(「失業率の上昇とインフレ率の上昇のリスクが高まっていると判断している」”and judges that the risks of higher unemployment and higher inflation have risen”の表現を追加)
4.会見の主なポイント(要旨)
記者会見の主な内容は以下の通り。
- パウエル議長の冒頭発言
- 本日、FOMCは政策金利の据え置きを決定した。失業率の上昇とインフレ率の上昇のリスクが高まっており、現在の金融政策のスタンスは潜在的な経済情勢に適時に対応する態勢を整えていると考えている。
- 家計と企業を対象にした調査では主に貿易政策への懸念を反映してセンチメントが急落し、景気の先行きに対する不確実性が高まっていると報告されている。
- 全体として広範な指標は労働市場の状況が概ね均衡しており、最大限の雇用と一致していることを示唆している。労働市場は大きなインフレ圧力の源泉ではない。
- インフレ率は22年半ばの高水準から大幅に低下したが、長期目標である2%に比べればやや高い水準にある。インフレ期待の短期的な指標は市場ベースと調査ベースの両方の指標に反映されるように上昇した。消費者、企業、専門家を含む調査回答者は関税がその原動力であると指摘している。しかし、長期的なインフレ期待の大半はインフレ目標の2%と一致している。
- 新政権は貿易、移民、財政政策、規制の4つの分野で大幅な政策変更を行っている。これまでに発表された関税引き上げ幅は予想を大幅に上回っている。しかし、これらの政策はすべて発展途上であり、経済への影響は依然として不透明である。今回発表された大幅な関税引き上げが持続すれば、インフレ率の上昇、経済成長の鈍化、失業率の上昇を招く可能性が高い。
- 我々は二重の使命(雇用の最大化、物価安定)目標が対立するという困難なシナリオに直面するかも知れない。そのような事態が発生した場合、経済がそれぞれの目標からどの程度離れているのか、また、それぞれのギャップが縮まると予想される時間軸はどの程度異なる可能性があるのか検討することになる。当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、より明確な見通しが立つのを待つべきだろう。
- 主な質疑応答
- (雇用の最大化と物価安定目標のどちらを優先するのか)雇用の最大化とインフレ率の上昇に対するリスクはともに生じている。どちらに転ぶかは分からない。関税政策がどこに落ち着くのか非常に不透明である。関税政策が決着した場合、経済や成長、雇用にどのような影響を及ぼすか知るのは時期尚早だ。経済への影響を待つ間、政策金利は適切な水準にあると考えている。
- (景気後退リスクが高まる中、インフレ上昇リスクからFRBは予防的な利下げは難しいとの指摘もある。ソフトランディングは依然として可能か)関税の範囲と規模を考えると、おそらくインフレ率の上昇や失業率の上昇といったリスクは確実に高まるだろう。少なくとも今後1年間は目標達成に向けた進展はみられないかも知れない。予防的な利下げという点では19年の利下げがそうだったかも知れない。しかし当時は経済が弱体化し、インフレ率は1.6%だった。現在はインフレ率が物価目標を上回る状況が続いているため、予防的に利下げできる状況ではない。現状では実際にデータをみるまでは対応できない。
- (労働市場や経済がどの程度低迷すれば金利を下げるのか)労働市場についてはデータを総合的にみる。失業率の水準、失業率の変化のスピードなど、労働市場のデータが本当に悪化しているのか、そうでないかを見極めるため膨大なデータを総合的にみて判断する。
- (失業率の上昇とインフレ率の上昇の一方に対処すると、もう一方を悪化させる可能性についてどう考えているのか)2つの目標が緊張関係にあるという指摘だが、非常に難しい問題だ。我々のフレームワークには各目標、各変数が目標からどの程度離れているかを調べ、そこに到達するまでにかかる時間も考慮すると書かれている。このため、非常に難しい判断になる可能性がある。今現在はどちらかを選択する必要もなければ、その根拠もない。
- (レイオフの可能性、物価上昇、景気減速の兆候は既にソフトデータで示されているのに、金融政策の決定を下すのにタイムリーで無く、関税関連の影響で歪んでいる可能性があるハードデータを待つ必要があるのか)足元は労働市場が堅調でインフレ率は低いため、事態の進展を待つ余裕はある。現時点では待つことに対する実質的なコストは発生していない。今後何が起こるのか我々には分からない。インフレ率はある程度上昇するし、失業率もある程度上昇するはずだ。それら次第で異なる対応が必要になる。このため、詳しいことが分かるまで待って様子見をするしかない。
(2025年05月08日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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