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コラム
2025年04月03日
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筆者が応援するプロ野球チームが本拠地とするA球場については、昨今、誇らしくもサクセスストーリーを見聞きすることが多い。
A球場は首都圏の交通至便な場所にありながら、かつては観客が入らず地方都市への本拠地移転まで取り沙汰されていた。しかし新しい球団オーナーになって以来、女性観客を増やすためトイレの清掃を強化、イニング間イベントの盛り上げ、球団によるA球場運営会社買収を経ての一体運営など様々な手を打ち、今や満員御礼が常態となった。
他の球場で行われるビジターゲームに行ってもファンクラブのポイントがつかないといった現実的な事情もあって、筆者は長くA球場以外の球場に足を運んでいなかった。世に喧伝されるサクセスストーリーに流されて「なんでもA球場が一番」と思い込んでいた影響もあろう。
ところが先月、オープン戦を観戦しようと珍しくB球場に赴いた。B球場については、本拠地にしているチームの戦績が振るわないこともあって、屋根をかぶせただけのドーム球場のため夏場は蒸し風呂状態になるらしいなど、A球場のような成功談は特に聞こえてこない。しかし実際に行ってみると多くの長所が見受けられた。
まずは飲食店の数と質の充実ぶりである。B球場は地形を生かしたすり鉢状の構造で地下に広がっているのだが、B球場を取り巻くように地上部分に並んだ飲食店には自分の座席が球場内のどの場所であってもすべて行けるようで選択肢が幅広い。また、客席エリアでビールやアイスクリームの代金を売り子さんに支払うに際しクレジットカード決済ができた(A球場の客席エリアではクレジットカードに対応していない)。
特に驚いたのはシートがクッションになっていたことであった。屋根があって雨が入らないがゆえに可能なことかもしれないが(但し密閉型ドームではないため完全に雨露をしのげるわけではないらしい)、自らに「球場のシートなんてプラスチック製で硬いに決まっている」というアンコンシャス・バイアスがあったことを思い知らされた。なお、これはVIP席ではなく誰でも購入できる内野指定席である。
A球場は首都圏の交通至便な場所にありながら、かつては観客が入らず地方都市への本拠地移転まで取り沙汰されていた。しかし新しい球団オーナーになって以来、女性観客を増やすためトイレの清掃を強化、イニング間イベントの盛り上げ、球団によるA球場運営会社買収を経ての一体運営など様々な手を打ち、今や満員御礼が常態となった。
他の球場で行われるビジターゲームに行ってもファンクラブのポイントがつかないといった現実的な事情もあって、筆者は長くA球場以外の球場に足を運んでいなかった。世に喧伝されるサクセスストーリーに流されて「なんでもA球場が一番」と思い込んでいた影響もあろう。
ところが先月、オープン戦を観戦しようと珍しくB球場に赴いた。B球場については、本拠地にしているチームの戦績が振るわないこともあって、屋根をかぶせただけのドーム球場のため夏場は蒸し風呂状態になるらしいなど、A球場のような成功談は特に聞こえてこない。しかし実際に行ってみると多くの長所が見受けられた。
まずは飲食店の数と質の充実ぶりである。B球場は地形を生かしたすり鉢状の構造で地下に広がっているのだが、B球場を取り巻くように地上部分に並んだ飲食店には自分の座席が球場内のどの場所であってもすべて行けるようで選択肢が幅広い。また、客席エリアでビールやアイスクリームの代金を売り子さんに支払うに際しクレジットカード決済ができた(A球場の客席エリアではクレジットカードに対応していない)。
特に驚いたのはシートがクッションになっていたことであった。屋根があって雨が入らないがゆえに可能なことかもしれないが(但し密閉型ドームではないため完全に雨露をしのげるわけではないらしい)、自らに「球場のシートなんてプラスチック製で硬いに決まっている」というアンコンシャス・バイアスがあったことを思い知らされた。なお、これはVIP席ではなく誰でも購入できる内野指定席である。

思えばシンクタンクに届く調査依頼の多くには、諸外国との対比が必須事項として含まれている。わが国の現状だけでは読み流してしまうような内容であったとしても、他国と比べる中で長所も短所も自然と浮かび上がり、次に必要な対策を考えることが可能になる。そのような先人の知恵を受けて、諸外国との対比が自然と調査依頼に加えられるようになったのだろう。
さて、いつものA球場で観戦していると何やら尻が痛いように感じた。A球場は野外球場であるものの、連日満員で儲かっているのだから、雨にも強い特殊素材でシートをクッションにしてくれないものかと願った次第である。そのような願望は、B球場でクッションのシートを体験しないと生まれなかったに違いない。
(2025年04月03日「研究員の眼」)

03-3512-1789
経歴
- 【職歴】
1990年 日本生命保険相互会社に入社。
通算して10年間、米国3都市(ニューヨーク、アトランタ、ロサンゼルス)に駐在し、現地の民間医療保険に従事。
日本生命では法人営業が長く、官公庁、IT企業、リース会社、電力会社、総合型年金基金など幅広く担当。
2015年から2年間、公益財団法人国際金融情報センターにて欧州部長兼アフリカ部長。
資産運用会社における機関投資家向け商品提案、生命保険の銀行窓版推進の経験も持つ。
【加入団体等】
日本FP協会(CFP)
生命保険経営学会
一般社団法人 アフリカ協会
一般社団法人 ジャパン・リスク・フォーラム
2006年 保険毎日新聞社より「アメリカの民間医療保険」を出版
磯部 広貴のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2025/05/15 | いま振り返るベヴァリッジ報告-少子化対策も組み込んだ80年前の社会保障計画- | 磯部 広貴 | 基礎研レポート |
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2025/04/30 | 米国個人年金販売額は2024年も過去最高を更新-トランプ関税政策で今後の動向は不透明に- | 磯部 広貴 | 保険・年金フォーカス |
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