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マイナンバーカードは行政サービス改善への希望
保険研究部 主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任 磯部 広貴
1――旧態依然たるわが国の行政サービス
1)郵便局に行って、必要な金額の切手と定額小為替を入手。
2)申請書をペンで記入。
3)封筒に自分の住所と名前を書き、切手を貼って返信用の封筒を作る。
4)役所宛ての封筒を作り、その中に申請書、返信用封筒、定額小為替などを封入。
5)投函してじっと待つ(ウェブでの申請ステータス確認などはできない)
特に驚いたのが定額小為替である。忙しい中、わざわざ郵便局に行って並んで待って、定額小為替を作るのに料金(手数料)を支払わねばならない。昔は10円であったらしいが、現在の料金は一律200円である。一番安い50円の定額小為替であっても200円が必要、一番高い1000円の定額小為替であっても手数料率は20%になる。カード決済すれば手数料を負担するどころかポイントが貯まる現代に至っては、少々信じ難い水準である。料金を決めているのはゆうちょ銀行であり役所に責任はないとはいえ、定額小為替を役所に郵送しないと書類を入手できないのだから、その料金を支払う以外の選択肢はなかった。
上述の手続きの中で便利と思えたのは、役所のホームページから必要な手続きを把握できること、申請書をプリントアウトできることだけであった。他にはペン、紙、封筒、切手、定額小為替。どれも昭和の時代のものである。
そして最近、別の事情で本籍地から戸籍証明書を取り寄せる必要が生じた。
2――マイナンバーカードは近所のコンビニで戸籍証明書を入手可能にする
ひと手間余計なのは、まず戸籍証明書交付の利用登録申請をする必要があることであった。コンビニのマルチコピー機にマイナンバーカードを置いてその申請を行い、数日後に専用サイトから登録完了を確認の上で改めてコンビニを訪ね、再びマルチコピー機の前に立った。そのコンビニの特殊事情なのか、最近はコンビニでコピーを取る人が少なくなったのか、待ち時間ゼロである。
マイナンバーカードを置いてマルチコピー機が表示するインストラクション通りに手順を重ねると、特段の問題なく戸籍証明書が印刷されて出てきた。
右図がその際の領収証であり手数料10円であった。もっとも、これは来年3月末までの特別料金で、以降は250円のようだが金額は大きな問題ではない。マルチコピー機に硬貨をチャリンと入れるだけでよいのだから、定額小為替で手数料を準備した時間と労力を思い起こせば隔世の感がある。マイナンバーカードがどれほどわが国の行政サービスを効率化できるかを実感した。コンビニ交付以外でも、マイナンバーカードがあればオンライン請求をすることでクレジットカード決済が可能な役所もあるようだ。
3――大局としてマイナンバーカードを暖かく見守る
もちろん行政サービス改善が必ずマイナンバーカードを伴わなければならないわけではないが、長く昭和のやり方が続いてきたわが国において、希望を託せるのは年始に申請件数が運転免許証を超えた2マイナンバーカードになるだろう。
昨今、本人のものではない公金受取口座が紐づけられていたこと、他人の年金記録を閲覧可能であったことなど、マイナンバーカードへの批判が高まっている。万全のプライバシー保護が求められる分野でもあり、個々の事象に対しては行政を厳しく批判し対策を求めていく必要がある。さりながら大局としては、マイナンバーカードがより一層普及し国民生活に役立つよう暖かい目で見守っていく姿勢を持つべきではないだろうか。
昭和どころか平成も知らない子供たちが、返信用封筒と定額小為替を封入して申請書類を投函する日が来たとしたら、その前にわが国は世界から取り残されているかもしれない。非効率な行政サービスは国民のエネルギーを浪費させ、また、それに呼応する-申請書類をチェックし証明書などを返送する-公務員が役所に存在するということでもある。少子化が進みながらも行政サービスの改善が実現できないのであれば、そのような国に諸外国から人や資金を呼び込む魅力が保たれるであろうか。
1 政府広報オンライン「パスポートの更新がスマホで可能に 2023年3月27日からオンライン申請がスタート!」(2023.2.7) https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202301/1.html 尚、一部の窓口では新規申請も可能。
2 松本総務大臣閣議後記者会見(2023.1.6)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02001203.html
(2023年06月15日「研究員の眼」)
03-3512-1789
- 【職歴】
1990年 日本生命保険相互会社に入社。
通算して10年間、米国3都市(ニューヨーク、アトランタ、ロサンゼルス)に駐在し、現地の民間医療保険に従事。
日本生命では法人営業が長く、官公庁、IT企業、リース会社、電力会社、総合型年金基金など幅広く担当。
2015年から2年間、公益財団法人国際金融情報センターにて欧州部長兼アフリカ部長。
資産運用会社における機関投資家向け商品提案、生命保険の銀行窓版推進の経験も持つ。
【加入団体等】
日本FP協会(CFP)
生命保険経営学会
一般社団法人 アフリカ協会
一般社団法人 ジャパン・リスク・フォーラム
2006年 保険毎日新聞社より「アメリカの民間医療保険」を出版
磯部 広貴のレポート
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