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マイナンバーカードの今後の注目点-1月交付率は過去2番目に高い伸び

総合政策研究部 研究員 河岸 秀叔
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1――伸びる交付率
1 「マイナンバーカード取得、誘導から『義務』に 政府転換」日本経済新聞.2022-10-14. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA136OR0T11C22A0000000/ . (2023-2-15参照)
2――マイナポータルと健康保険証廃止の行方に注目
こうした中で、2023年は、利便性拡大の年になりそうだ(図3)。2023年2月以降、転出届やパスポートのオンライン申請が始まり、5月からはAndroid OS3のスマートフォンにマイナンバーカード機能が搭載可能になる4。こうした中で筆者は、今後の利便性に関する注目点は主に2点あると考えている。一つはマイナポータルの普及、もう一つは健康保険証廃止の議論の行方だ。
国民にマイナンバーカードの利便性を実感してもらうには、マイナポータルの普及が重要だ。マイナポータルとは、政府が運営する行政手続き用のオンラインサービスを指す。先述のオンライン申請や、Android OSでのマイナンバーカード機能の利用にはマイナポータルへの登録が前提となる。
マイナポータルについては、既にe-Taxを用いた確定申告等で活用が始まっているが、まだ国民生活に浸透したサービスにはなっていない様である。ニッセイ基礎研究所の2022年9月調査によれば5、マイナンバーカード取得者のうち、マイナポータル内サービスの利用経験がある割合は16.7%であった。また、今後マイナポータルを利用してみたいと答えた人は、取得申請中の人を含めた全体のうち23.5%に留まっている。
昨年には、マイナポータルの利用規約の免責事項が物議を醸し、修正された。利用者に損害が生じた場合に、デジタル庁は「一切の責任を負わない」とする規約が無責任と批判されたのだ。マイナポータルはデジタル社会のハブともいえる存在だが、その定着に向けてどこまで機能を拡大させるか、今後の展開に期待したい。
加えて、健康保険証廃止の議論(マイナ保険証6への一本化)も注視すべきだろう。先述の通り、マイナンバーカードは、特に医療機関受診の必要性が高い14歳以下や90代以上への普及が進んでいない。2024年度秋に予定される健康保険証の廃止までに、この層を含めた一層の普及促進策や、マイナ保険証未取得であっても受診に支障が出ない仕組みを作る必要があり、現在、デジタル庁の「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会7」で議論が行われている。
今回の中間とりまとめで、マイナンバーカードと健康保険証の一本化推進に関する取り組みについて一定の方向性が示された。ただ、マイナ保険証未取得者への対応については、依然、議論が続いている。例えば、資格確認書を使うとマイナ保険証よりも受診料が高くなる可能性があることや、毎年の申請が必要となる可能性があるなど8、未取得者に追加的な負担を求める考えが示されている9。
健康保険証は国民生活に浸透しており、廃止が与えるインパクトは大きい。しかし、10月の廃止表明以降、様々な情報が錯綜している。なかには、困惑している人もいるだろう。中間とりまとめで、廃止後の姿が一定程度示されたと言える。今後は、最終とりまとめを待つとともに、国民や現場への手厚いフォローを期待する。どのように落ち着くのか、これからの動向に注目したい。
2 鈴木康朗. マイナカード申請、年内目標数を達成 8100万件超える 総務省公表 . 朝日新聞デジタル. 2022-12-28. https://digital.asahi.com/articles/DA3S15514328.html?iref=pc_ss_date_article (2023-02-13参照)
3 Google社の提供するモバイルオペレーティングシステムのこと。同OSを搭載するスマートフォンには、SHARP社のAQUOS シリーズやSONY社のXperiaシリーズ、Samsung社のGalaxyシリーズ、Google社のGoogle Pixelシリーズなどがある。なお、Apple社のiPhoneシリーズでは、いかなる機種でもAndroid OSを搭載していない。
4 なお、iPhoneへのマイナンバーカード機能の搭載は、予定はされているが時期未定である。
5 村松容子.マイナンバーカード取得状況と使途・今後利用したいサービス. ニッセイ基礎研究所. 2022-11-26. https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73007?site=nli . (2023-2-24参照)
6 健康保険証登録を行ったマイナンバーカードのこと
7 デジタル庁. 第2回マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会 . 2023-02-17, https://www.digital.go.jp/councils/card-integration-mynumber-and-insurance/049442db-8ca3-4019-928a-c8b76aaa75d5/ . (2023-02-22参照)
8 資格確認書の自動更新有無は現在検討中であり、自動更新がない場合について懸念を示す指摘もある。
誰得?マイナ保険証ない人向け「資格確認書」本人申請が必須で有効期限は最長1年、自動更新は未定 . 東京新聞 2023-02-21 . https://www.tokyo-np.co.jp/article/232313 . (2023-02-24参照)
9 厚生労働省広報室 . 加藤大臣会見概要 . 厚生労働省HP . 2023-2-24 . https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00529.html . (2023-02-28参照)
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年03月02日「研究員の眼」)

03-3512-1835
- 【職歴】
2021年 日本生命保険相互会社入社
2022年 ニッセイ基礎研究所へ
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