コラム
2023年05月31日

国立国会図書館デジタルコレクションに感謝

保険研究部 主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任 磯部 広貴

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先日、某生命保険会社の古い社史を閲覧していたところ困った事態が発生した。ふと気付くと、手も机もスーツも(重い冊子なので抱えて運んだ)赤茶色の粘土のようなもので汚れてしまった。元は革張りの立派な装丁であったと思われるが、1950年代半ばの本である。物理的な劣化は如何ともし難く、触ると表面が粘土状に剝げ落ちてしまうようだ。

さすがにもう一度あの本に触れるのは避けたいと思っていた頃、たまさか国立国会図書館デジタルコレクションを紹介してもらう機会があった。所蔵されている書籍について、所定の手続きを経れば自分のパソコンから閲覧でき、印刷やPDF保存も可能とのことであった。

筆者自身、近隣の市営図書館はよく利用するものの国立国会図書館は30年ほど前に一度利用したきりである。会社の長期勤続者表彰式の事務局として、表彰対象者が入社した日の新聞の一面をコピーして帰ってくるという業務であったが、今となっては行った事実しか覚えていない。

国立国会図書館という名前を聞いただけで敷居が高いものの、ホームページで検索をかけてみると生命保険会社の社史も揃っているようなので、運転免許証の写真を添付の上で申請を行い、5日ほどで本登録を完了した。

そして使いだしてみると、これは非常に便利である。聞いていた通り、自分の席に座ったままで古い文献を参照することができる。国立国会図書館プレスリリース1によると、昨年12月から全文検索可能な資料が5万点から約247万点に増加したようで、対象となる書籍は幅広く、戦前の生命保険業界の論文集(ちなみに旧字体)まで閲覧可能である。
(資料)国立国会図書館ウェブサイト内で筆者が検索条件を指定した画像コピー。
1990年代のことながら、医学系研究の道に進んだ友人が作成中の論文で参照する文献を閲覧するために九州から東京に来たことがあった。当時に国立国会図書館デジタルコレクションが今と同様のサービスを展開していたなら、わざわざ東京に来る必要もなかったかもしれない。テレワークの推進や東京一極集中の是正策としても有効であろう。これだけのインフラを構築するまでにどれだけの予算を要したかわからないが、国立国会図書館デジタルコレクションに貴重な税金が使われてきたことを感謝しつつ喜びたい。
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保険研究部   主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任

磯部 広貴 (いそべ ひろたか)

研究・専門分野
内外生命保険会社経営・制度(販売チャネルなど)

経歴
  • 【職歴】
    1990年 日本生命保険相互会社に入社。
    通算して10年間、米国3都市(ニューヨーク、アトランタ、ロサンゼルス)に駐在し、現地の民間医療保険に従事。
    日本生命では法人営業が長く、官公庁、IT企業、リース会社、電力会社、総合型年金基金など幅広く担当。
    2015年から2年間、公益財団法人国際金融情報センターにて欧州部長兼アフリカ部長。
    資産運用会社における機関投資家向け商品提案、生命保険の銀行窓版推進の経験も持つ。

    【加入団体等】
    日本FP協会(CFP)
    生命保険経営学会
    一般社団法人アフリカ協会
    2006年 保険毎日新聞社より「アメリカの民間医療保険」を出版

(2023年05月31日「研究員の眼」)

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