- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 企業経営・産業政策 >
- 経過措置終了に伴う企業の現状と今後の対応方針~東証市場再編後に残された課題~
2025年03月27日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――はじめに
2022年4月4日の新市場区分への移行に伴い設置された経過措置は、2025年3月以降順次終了する。
2025年3月14日までに各社が開示した資料をもとに、筆者が経過措置適用企業を確認したところ、経過措置適用企業が全体に占める割合は6%だった。上場維持基準の項目別では、流通株式時価総額や時価総額の基準を満たしていない企業が多く、市場区分別では特にスタンダード市場に基準未達の企業が多い。東京証券取引所は「量から質へ」の移行を進めるなかで、経過措置の再延長は行わない方針を明言している。基準未達の企業は基準達成に向けた取組みに加え、市場区分の変更や非公開化などの決断と行動を迫られている。
2025年3月14日までに各社が開示した資料をもとに、筆者が経過措置適用企業を確認したところ、経過措置適用企業が全体に占める割合は6%だった。上場維持基準の項目別では、流通株式時価総額や時価総額の基準を満たしていない企業が多く、市場区分別では特にスタンダード市場に基準未達の企業が多い。東京証券取引所は「量から質へ」の移行を進めるなかで、経過措置の再延長は行わない方針を明言している。基準未達の企業は基準達成に向けた取組みに加え、市場区分の変更や非公開化などの決断と行動を迫られている。
2――経過措置は2025年3月以降順次終了
東証は2022年4月にプライム、スタンダード、グロースの3つの新市場区分に移行し、各市場のコンセプトと上場基準を従来より明確にした。ただし、既に東証に上場していた企業に対しては、新しい上場基準を満たしていない場合でも各市場に上場することができる経過措置が設けられた。
この経過措置が2025年3月以降順次終了する。経過措置が適用されている会社においては、2025年3月1日より前の基準日1までは緩和された上場維持基準が適用されていたが、2025年3月1日以後に最初に到来する基準日からは、本来の上場維持基準が適用される。本来の上場維持基準に適合しない場合、原則としてその基準日から1年以内に基準を満たさなければ上場廃止となる。ただし、例外として2026年3月1日以後に最初に到来する基準日を超える期限の計画を開示している会社(以下、超過計画開示会社)については、企業が設定した計画期限における適合状況を確認するまでは監理銘柄の指定が継続される。
図表1は各市場の上場維持基準、図表2は経過措置が適用されている3月末決算会社の今後の日程例である。
この経過措置が2025年3月以降順次終了する。経過措置が適用されている会社においては、2025年3月1日より前の基準日1までは緩和された上場維持基準が適用されていたが、2025年3月1日以後に最初に到来する基準日からは、本来の上場維持基準が適用される。本来の上場維持基準に適合しない場合、原則としてその基準日から1年以内に基準を満たさなければ上場廃止となる。ただし、例外として2026年3月1日以後に最初に到来する基準日を超える期限の計画を開示している会社(以下、超過計画開示会社)については、企業が設定した計画期限における適合状況を確認するまでは監理銘柄の指定が継続される。
図表1は各市場の上場維持基準、図表2は経過措置が適用されている3月末決算会社の今後の日程例である。
今後の日程例は、「①原則」と「②超過計画開示会社」の2つに大別される。まず、①原則の場合、2025年3月末を基準日として本来の上場維持基準に適合しない企業は、2026年3月末までの1年間が改善期間となる。2026年3月末時点でも基準に適合しない場合は、監理銘柄および整理銘柄に指定され6か月後に上場廃止となる。一方、②超過計画開示会社で計画期限を2027年3月末にしている場合、2025年3月末から2026年3月末までは①原則と同様に改善期間として扱われる。ただし、2026年3月末時点で基準に適合していない場合でも、超過計画として開示している2027年3月末までは監理銘柄として上場を継続することができる。期限である2027年3月末時点で基準に適合していない場合は、整理銘柄に指定され6か月後に上場廃止となる。
1 基準日とは各上場企業の事業年度の末日を指す。なお、プライム市場における「売買代金」の基準日は、12月末日とする。
1 基準日とは各上場企業の事業年度の末日を指す。なお、プライム市場における「売買代金」の基準日は、12月末日とする。
3――上場会社数に占める経過措置適用企業の割合は約6%
2025年3月14日時点では、3市場合計で3,822社のうち235社(全体の6.1%)が経過措置の適用を受けている。市場別に見ると、プライム市場では経過措置適用企業は1,635社のうち57社(全体の3.5%)と、2022年4月時点の295社から238社減少した。その要因の一つとして、経過措置の終了時期が明確化されたことを受け、2023年10月に特例措置を利用してプライム市場上場企業177社(上場維持基準に適合している企業も含む)が審査なしでスタンダード市場へ移行したことがあげられる。スタンダード市場では1,579社のうち134社(全体の8.5%)、グロース市場では608社のうち44社(全体の7.2%)が、引き続き経過措置の適用を受けている。
図表4は、各市場における経過措置適用企業を、上場維持基準の項目別に集計した結果である。
図表4は、各市場における経過措置適用企業を、上場維持基準の項目別に集計した結果である。
プライム市場およびスタンダード市場では、流通株式時価総額の基準を満たしていない企業が最も多く、グロース市場では時価総額の基準を満たしていない企業が最も多かった。特にスタンダード市場においては、流通株式時価総額に次いで、流通株式比率の基準を満たしていない企業も51社存在し、さらに2項目以上の基準を満たしていない企業も6社確認されている。
(2025年03月27日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1855
経歴
- 【職歴】
2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
2015年 ニッセイ基礎研究所入社
2020年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
森下 千鶴のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/06/26 | 自社株買いの取得期間は長期化、より柔軟な買付姿勢へ~2025年4-5月の自社株買い動向~ | 森下 千鶴 | 基礎研レポート |
2025/06/10 | Investors Trading Trends in Japanese Stock Market:An Analysis for May 2025 | 森下 千鶴 | 研究員の眼 |
2025/06/10 | 投資部門別売買動向(25年5月)~海外投資家は4月後半から買い越しに転換~ | 森下 千鶴 | 研究員の眼 |
2025/05/30 | 先行き不透明でも「開示」が選択された~2025年2月および3月の本決算動向~ | 森下 千鶴 | 基礎研レター |
新着記事
-
2025年07月01日
加熱する中国フードデリバリー抗争-ドライバー争奪の切り札として進む社会保険適用 -
2025年07月01日
国際的に注目を集めるAsset-Intensive Reinsurance(AIR)を巡る動向 -
2025年07月01日
今週のレポート・コラムまとめ【6/24-6/30発行分】 -
2025年06月30日
食品ロス削減情報の比較可能性-何のための情報開示か? -
2025年06月30日
鉱工業生産25年5月-4-6月期は2四半期連続減産の可能性が高まる
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
【経過措置終了に伴う企業の現状と今後の対応方針~東証市場再編後に残された課題~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
経過措置終了に伴う企業の現状と今後の対応方針~東証市場再編後に残された課題~のレポート Topへ