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- 米国経済の見通し-25年初から関税政策をはじめ、経済政策は混沌の極み。景気後退回避を予想もリスクは上昇
2025年03月10日
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3.物価・金融政策・長期金利の動向
(物価)関税、不法移民の強制送還がインフレ押上げ
25年1月の主要なインフレ指標(前年同月比)は消費者物価(CPI)の総合指数が+3.0%(前月:+2.9%)、物価の基調を示すコア指数が+3.3%(前月:+3.2%)と前月から小幅上昇した(図表16)。また、FRBが物価指標として注目するPCE価格指数の総合指数が+2.5%(前月:+2.6%)、コア指数が+2.6%(前月:+2.9%)とこちらは前月から小幅低下するなど両者の動きに乖離がみられた。ただし、いずれにせよFRBが物価目標とする2%を上回っているほか、トランプ政権の関税に伴うインフレ上昇が見込まれることから、当面物価目標を上回る水準が継続することが見込まれる。
一方、25年1月のCPI(前年同月比)の内訳をみると、コア財価格が▲0.1%と引き続き物価押下げとなっているほか、エネルギー価格が+1.0%と物価上昇圧力が限定的に留まっている(図表17)。食料品価格は+2.5%と24年2月以降は2%台前半で比較的安定しているものの、依然としてFRBの物価目標を僅かながら上回っている。
これに対して、CPIの高止まり要因となっているコアサービス価格は、住居費が+4.4%と23年3月の+8.2%をピークに低下基調が持続しているものの、依然としてFRBの物価目標を大幅に上回っているほか、賃金上昇率との連動性が高いコアサービス(除く住居費)が+4.0%とこちらも24年4月の+4.9%から低下基調が持続しているものの、依然として物価目標を大幅に上回っている。
25年1月の主要なインフレ指標(前年同月比)は消費者物価(CPI)の総合指数が+3.0%(前月:+2.9%)、物価の基調を示すコア指数が+3.3%(前月:+3.2%)と前月から小幅上昇した(図表16)。また、FRBが物価指標として注目するPCE価格指数の総合指数が+2.5%(前月:+2.6%)、コア指数が+2.6%(前月:+2.9%)とこちらは前月から小幅低下するなど両者の動きに乖離がみられた。ただし、いずれにせよFRBが物価目標とする2%を上回っているほか、トランプ政権の関税に伴うインフレ上昇が見込まれることから、当面物価目標を上回る水準が継続することが見込まれる。
一方、25年1月のCPI(前年同月比)の内訳をみると、コア財価格が▲0.1%と引き続き物価押下げとなっているほか、エネルギー価格が+1.0%と物価上昇圧力が限定的に留まっている(図表17)。食料品価格は+2.5%と24年2月以降は2%台前半で比較的安定しているものの、依然としてFRBの物価目標を僅かながら上回っている。
これに対して、CPIの高止まり要因となっているコアサービス価格は、住居費が+4.4%と23年3月の+8.2%をピークに低下基調が持続しているものの、依然としてFRBの物価目標を大幅に上回っているほか、賃金上昇率との連動性が高いコアサービス(除く住居費)が+4.0%とこちらも24年4月の+4.9%から低下基調が持続しているものの、依然として物価目標を大幅に上回っている。
コアサービス価格の先行きについては、トランプ政権の関税政策や移民政策を度外視すると、民間家賃指数の低下を後追いする形で住居費の低下が見込まれるほか、労働需給に緩和に伴う賃金上昇圧力の低下から、住居費除きのコアサービス価格も緩やかながら低下が見込まれる。
当研究所は原油価格が24年10-12月期平均の70ドルから25年、26年を通じて概ね70ドル近辺で横這い推移するとみており、エネルギー価格上昇によるインフレ加速は限定的と考えている。一方、当研究所はトランプ政権による関税政策が一時的な物価押上げ要因となるほか、不法移民の強制送還に伴う労働力不足が賃金上昇圧力を高めると考えており、CPIの総合指数(前年同月比)は25年後半から26年前半に3%超の水準に上昇すると予想する。通年では25年が+3.0%と24年(+3.0)並み、26年は+2.9%と僅かな低下を予想する。
当研究所は原油価格が24年10-12月期平均の70ドルから25年、26年を通じて概ね70ドル近辺で横這い推移するとみており、エネルギー価格上昇によるインフレ加速は限定的と考えている。一方、当研究所はトランプ政権による関税政策が一時的な物価押上げ要因となるほか、不法移民の強制送還に伴う労働力不足が賃金上昇圧力を高めると考えており、CPIの総合指数(前年同月比)は25年後半から26年前半に3%超の水準に上昇すると予想する。通年では25年が+3.0%と24年(+3.0)並み、26年は+2.9%と僅かな低下を予想する。
(金融政策)25年、26年ともに年1回の利下げを予想
FRBはインフレ抑制のために22年3月から政策金利の引上げを開始し、23年7月に5.5%に引上げた後は、23年9月から8会合連続で政策金利を据え置いた(図表18)。その後、FRBはインフレ率が持続的に2%に向かいつつあることに自信を深めているとしたほか、もう一段の労働市場の悪化を望まないとして24年9月に政策金利を▲0.5%ポイントの引下げに転じたほか、11月、12月にも▲0.25%ポイント引き下げて4.5%とした。
FRBはインフレ抑制のために22年3月から政策金利の引上げを開始し、23年7月に5.5%に引上げた後は、23年9月から8会合連続で政策金利を据え置いた(図表18)。その後、FRBはインフレ率が持続的に2%に向かいつつあることに自信を深めているとしたほか、もう一段の労働市場の悪化を望まないとして24年9月に政策金利を▲0.5%ポイントの引下げに転じたほか、11月、12月にも▲0.25%ポイント引き下げて4.5%とした。

また、1月会合の議事要旨では次の利下げの前にインフレ抑制の更なる進展が必要となることが示された。さらに、同議長は3月7日の講演でも経済は底堅いペースで成長しているとして、利下げを急がない方針を示しており、3月のFOMC会合で政策金利が据え置かれる可能性が高い。
一方、トランプ政権の関税政策が景気を減速させる一方、一時的にインフレを加速させる可能性が高いことから、FRBは金融政策で難しい舵取りを迫られよう。当研究所は6月会合に向けてインフレが低下する一方、労働市場の減速が続く前提でFRBが6月に利下げを実施した後、関税政策や移民政策の影響に伴うインフレ上振れから25年後半から26年後半にかけて政策金利の据え置きを予想する。その後、関税政策に伴う一時的なインフレ加速の効果が剥落したことを確認して26年後半に年内1回の利下げを実施すると予想する。
次回3月会合ではFOMC参加者の政策金利見通しが示されるが、24年12月に示された25年と26年で年2回の利下げペースからどのように変更されるのか注目される。

長期金利(10年金利)は、労働市場やインフレの低下を背景に24年9月のFOMC会合で通常の▲0.25%ではなく、▲0.5%の利下げが実施されたことから、9月には一時3.6%台に低下した(図表19)。その後は堅調な経済指標を受けて利下げペースが緩やかになるとの見方が強まったことや、トランプ氏の再選でインフレ高進や財政赤字拡大の見方が強まったことなどから25年1月には一時4.8%近辺まで上昇した。しかし、その後は関税政策に伴う経済への不透明感が強まる中、個人消費や消費者信頼感指数が下振れするなど、リスク回避的な動きが強まり長期金利は低下に転じ、足元では4.3%近辺で推移している。
当研究所は、トランプ政権の関税政策などに伴う景気減速懸念から長期金利には低下圧力がかかる一方、インフレ高進に伴う金利上昇圧力もあって、長期金利の方向感は出難く25年を通じて4.4%で横這い推移を予想する。26年はインフレ低下や利下げ再開もあって26年10-12月期平均が4.2%と小幅低下しよう。米国経済やインフレ動向と同様、トランプ政権の政策予見可能性低下から長期金利の予想も非常に困難となっている。
(2025年03月10日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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