2025年03月03日

米個人所得・消費支出(25年1月)-特殊要因で個人所得(前月比)は1年ぶりの上昇となった一方、個人消費は市場予想を下回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を上回った一方、個人消費は市場予想を下回る

2月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は1月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.9%(前月:+0.4%)と前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を大幅に上回った(図表1)。個人消費支出は前月比▲0.2%(前月改定値:+0.8%)と+0.7%から小幅上方修正された前月からマイナスに転じたほか、微増を予想した市場予想の+0.2%も下回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は▲0.5%(前月改定値:+0.5%)と+0.4%から小幅上方修正された前月からマイナスに転じたほか、市場予想の▲0.1%も下回った(図表5)。貯蓄率1は4.6%(前月:3.5%)と前月から+0.6%ポイントの大幅な上昇となった。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月:+0.3%)と前月、市場予想(+0.3%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.3%(前月:+0.2%)とこちらは前月から上昇した一方、市場予想(+0.3%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.5%(前月:+2.6%)と前月から低下、市場予想(+2.5%)に一致した。コア指数は+2.6%(前月改定値:+2.9%)と+2.8%から小幅上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+2.6%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:特殊要因から個人所得が大幅に増加、貯蓄率が24年6月以来の水準に上昇

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)は24年12月に+0.8%と23年1月以来の水準に上昇した後、23年3月以来のマイナスに転じた(図表1)。

これに対して、個人所得(前月比)、可処分所得(前月比)ともに+0.9%といずれも24年1月以来の水準となった。1月に大幅な伸びとなった要因としては、後述するように特殊要因に伴い、移転所得が+1.8%と大幅な伸びとなったことが大きい。この結果、貯蓄率は4.6%と24年6月以来の水準に上昇した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は前月比で総合指数は前月から横這い、物価の基調を示すコア指数は小幅な上昇となったものの、前年同月比では総合指数、コア指数ともに前月から低下した。前月から低下するのは総合指数、コア指数ともに4ヵ月ぶりである。もっとも、低下に転じたものの、トランプ政権による関税賦課に伴うインフレ加速リスクが燻っていることもあって、3月のFOMC会合では政策金利は据え置かれる見通し。

3.所得動向:移転所得が大幅に増加

1月の個人所得(前月比)は大幅な伸びとなったが、移転所得が+1.8%(前月:0.4%)となったことが大きい(図表2)。これは1月に社会保障給付に関連してインフレを反映した年間生活費調整が+2.5%増加したことにより、社会保障受取額が増加したことが大きい。さらに、当月は自営業所得が+1.5%(前月:+0.7%)、利息配当収入が+1.1%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した。一方、賃金・給与は+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの堅調な伸びを維持した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、1月の名目が+0.9%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速した(図表3)。価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)も+0.6%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車・自動車部品が大幅に減少

1月の名目個人消費(前月比)は、財消費が▲1.2%(前月:+1.2%)と前月からマイナスに転じたほか、サービス消費が+0.3%(前月:+0.7%)と前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費は、耐久財が▲3.0%(前月:+1.3%)、非耐久財が▲0.2%(前月:+1.2%)と耐久財、非耐久財消費ともに前月からマイナスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲5.2%(前月:+2.6%)となったのをはじめ、娯楽財・スポーツカーが▲2.2%(前月:+0.7%)、家具・家電が▲1.4%(前月:+0.7%)といずれも前月からマイナスに転じた。当月はとくに自動車・自動車部品の落ち込みが大きくなっているが、1月に南部と中西部を襲った暴風雪の影響を受けた可能性が高いとみられる。

非耐久財ではガソリン・エネルギーが+2.7%(前月:+5.5%)と前月から伸びが鈍化したほか、衣料・靴が▲0.9%(前月:+0.8%)、食料・飲料が▲0.3%(前月:+0.9%)と前月からマイナスに転じて非耐久財消費を押し下げた。

サービス消費は、外食・宿泊が+0.9%(前月:▲横這い)と前月からプラスに転じた。一方、住宅・公共料金が+0.8%(前月:+0.9%)、娯楽サービスが+0.7%(前月:+0.9%)、金融サービスが+0.2%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化したほか、医療サービスが▲0.1%(前月:+0.5%)、輸送サービスが▲0.2%(前月:+3.8%)と前月からマイナスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前月比で3ヵ月連続、前年同月比では6ヵ月ぶりのプラス

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.3%(前月:+2.4%)と前月からプラス幅は縮小したものの、3ヵ月連続のプラスとなった(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.3%(前月:+0.3%)とこちらは9ヵ月連続でプラスとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+1.0%(前月:▲1.7%)と6ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表7)。食料品価格指数は+1.6%(前月:+1.8%)と前月からプラス幅は縮小したものの、91ヵ月連続のプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年03月03日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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