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- 米雇用統計(25年2月)-非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったほか、失業率は横這い予想に反して上昇
2025年03月10日
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1.結果の概要:雇用者数が市場予想を下回ったほか、失業率が市場予想を上回る
3月7日、米国労働統計局(BLS)は2月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+15.1万人の増加1(前月改定値:+12.5万人)と+14.3万人から下方修正された前月を上回った一方、市場予想の+16.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は下回った(後掲図表2参照)。
失業率は4.1%(前月:4.0%、市場予想:4.0%)と前月から+0.1ポイント上昇し、横這いを見込んだ市場予想を上回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.4%(前月:62.6%、市場予想:62.6%)とこちらは前月から▲0.2%ポイント低下し、横這いを見込んだ市場予想を下回った。(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は4.1%(前月:4.0%、市場予想:4.0%)と前月から+0.1ポイント上昇し、横這いを見込んだ市場予想を上回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.4%(前月:62.6%、市場予想:62.6%)とこちらは前月から▲0.2%ポイント低下し、横這いを見込んだ市場予想を下回った。(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:雇用の伸びは足元堅調も連邦政府関連を中心に鈍化の兆し
事業所調査の非農業部門雇用者数(前月比)は2月が+15.1万人と前月を上回ったほか、過去2ヵ月分の修正幅が▲0.2万人の小幅な下方修正に留まった。この結果、過去3ヵ月の月間平均増加ペースは+20.0万人と過去12ヵ月の月間平均増加ペースの+16.2万人を上回っており、足元で堅調な雇用増加を維持していることを確認した。もっとも、当月はトランプ政権の連邦政府職員の削減方針に伴い連邦政府の雇用者数が前月比で▲1万人減少したが、2月中旬以降も人員削減以降の動きが続いており、連邦政府の雇用者数は来月さらに減少する可能性が高いとみられている。
家計調査は労働参加率の低下を伴って2月の失業率が4.1%と3ヵ月ぶりに上昇しており、労働需給の緩和を示した。
家計調査は労働参加率の低下を伴って2月の失業率が4.1%と3ヵ月ぶりに上昇しており、労働需給の緩和を示した。

前年同月比は+4.0%(前月改定値:+3.9%、市場予想:+4.1%)とこちらは+4.1%から下方修正された前月を上回った一方、市場予想を下回った(図表1)。前年同月比は24年7月につけた+3.6%を上回る状況が続いている。
このようにみると、2月の雇用統計は非農業部門雇用者数が堅調な伸びを維持したものの、来月以降の連邦政府雇用者数の減少幅拡大が見込まれるほか、労働需給が緩和を反映して失業率が3ヵ月ぶりに上昇に転じるなど、今後の労働市場の更なる減速を示唆する結果と言えよう。
3.事業所調査の詳細:娯楽・宿泊、連邦政府部門で雇用が減少

民間サービス部門の中では、小売業が前月比▲0.6万人(前月:+3.0万人)と前月からマイナスに転じたほか、娯楽・宿泊が▲1.6万人(前月:▲1.4万人)と前月に続いてマイナスとなった。一方、専門・ビジネスサービスが▲0.2万人(前月:▲3.9万人)と前月からマイナス幅が縮小したほか、運輸・倉庫が+1.8万人(前月:+1.9万人)、医療・社会扶助サービスが前月比+6.3万人(前月:+6.4万人)と概ね前月並みの伸びを維持した。さらに、金融サービスが+2.1万人(前月:+1.4万人)と前月から伸びが加速した。
財生産部門は前月比+3.4万人(前月:▲0.7万人)と前月からプラスに転じた。建設業が+1.9万人(前月:+0.2万人)と前月から伸びが加速したほか、製造業が+1.0万人(前月:▲0.5万人)と前月からプラスに転じた。
政府部門は前月比+1.1万人(前月:+4.4万人)と前月から伸びが鈍化した。内訳をみると、州・地方政府が+2.1万人(前月:+3.9万人)と前月から伸びが鈍化したほか、連邦政府が▲1.0万人(前月:+0.5万人)と前月からマイナスに転じた。連邦政府の減少幅は22年6月(▲1.1万人)以来の水準となった。
前月(1月)と前々月(12月)の雇用増加数(改定値)は前月が+12.5万人(改定前:+14.3万人)と▲1.8万人下方修正された一方、前々月が+32.3万人(改定前:+30.7万人)とこちらは+1.6万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲0.2万人の小幅な下方修正となった(図表3)。
BLSの公表に先立って3月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+7.7万人(前月改定値:+18.6万人、市場予想:+14.0万人)と+18.3万人から小幅上方修正された前月から大幅に低下し、市場予想も下回った。この結果、ADP社の統計は前月から雇用者数の伸びが加速した雇用統計とは不整合な結果となった。
2月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が35.93ドル(前月:35.83ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.1時間(前月:34.1時間)と前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は1,225.21ドル(前月:1,221.80ドル)となり、前月から増加した(図表4)。
BLSの公表に先立って3月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+7.7万人(前月改定値:+18.6万人、市場予想:+14.0万人)と+18.3万人から小幅上方修正された前月から大幅に低下し、市場予想も下回った。この結果、ADP社の統計は前月から雇用者数の伸びが加速した雇用統計とは不整合な結果となった。
2月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が35.93ドル(前月:35.83ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.1時間(前月:34.1時間)と前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は1,225.21ドル(前月:1,221.80ドル)となり、前月から増加した(図表4)。
4.家計調査の詳細:就業者数の大幅な減少を伴って労働参加率が低下
家計調査のうち、2月の労働力人口は前月対比で▲38.5万人(前月:+9.1万人3)と前月から大幅なマイナスに転じた。内訳を見ると、失業者数が+20.3万人(前月:▲14.2万人)と前月から大幅なプラスに転じた一方、就業者数が▲58.8万人(前月:+23.4万人)と失業者数の増加を上回る減少を示して労働力人口全体を押し下げた。非労働力人口は+54.6万人(前月:+8.5万人)と前月から伸びが大幅に加速した。
これらの結果、労働参加率は62.4%と前月から▲0.2%ポイント低下し、23年1月(62.4%)以来の水準となった(図表5)。
一方プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は2月が83.5%(前月:83.5%)とこちらは前月から横這いとなった。男女の内訳は、男性が89.1%(前月:89.4%)と前月から▲0.3%ポイント低下したものの、女性が77.9%(前月:77.7%)と前月から0.2%ポイント上昇した。
これらの結果、労働参加率は62.4%と前月から▲0.2%ポイント低下し、23年1月(62.4%)以来の水準となった(図表5)。
一方プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は2月が83.5%(前月:83.5%)とこちらは前月から横這いとなった。男女の内訳は、男性が89.1%(前月:89.4%)と前月から▲0.3%ポイント低下したものの、女性が77.9%(前月:77.7%)と前月から0.2%ポイント上昇した。
失業率は2月が4.1%と労働参加率の低下を伴い3ヵ月ぶりに上昇に転じるなど、労働需給の緩和を示した(前掲図表6)。もっとも、失業率の水準は依然として低水準を維持している。
2月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は145.5万人(前月:144.3万人)と前月から+1.2万人の増加となった。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは20.9%(前月:21.1%)とこちらは前月から▲0.2%ポイント低下した(図表7)。一方、平均失業期間は21.3週(前月:22.0週)と前月から▲0.7週短期化した。
最後に、周辺労働力人口(170.4万人)4や、経済的理由によるパートタイマー(493.7万人)も考慮した広義の失業率(U-6)5は、2月が8.0%(前月:7.5%)と前月から+0.5%ポイントの大幅な上昇となった(図表8)。経済理由によるパートタイマーが前月から+46.0万人の大幅な増加となったことなどが影響した。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.9%ポイント(前月:+3.5%ポイント)と前月から+0.4%ポイントの大幅な拡大となった。
2月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は145.5万人(前月:144.3万人)と前月から+1.2万人の増加となった。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは20.9%(前月:21.1%)とこちらは前月から▲0.2%ポイント低下した(図表7)。一方、平均失業期間は21.3週(前月:22.0週)と前月から▲0.7週短期化した。
最後に、周辺労働力人口(170.4万人)4や、経済的理由によるパートタイマー(493.7万人)も考慮した広義の失業率(U-6)5は、2月が8.0%(前月:7.5%)と前月から+0.5%ポイントの大幅な上昇となった(図表8)。経済理由によるパートタイマーが前月から+46.0万人の大幅な増加となったことなどが影響した。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.9%ポイント(前月:+3.5%ポイント)と前月から+0.4%ポイントの大幅な拡大となった。
3 2025年から人口推計を変更しているため、2024年と断層が生じている。ここで記載している1月の労働力人口、就業者数、失業者数、非労働力人口はこの断層を調整した後のもの。
4 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
5 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
(2025年03月10日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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