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老後の生活資金に影響?-DC一時金に適用される「5年ルール」見直しの背景

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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1――確定拠出年金(DC)を一時金で受け取る場合の課税ルールの変更が繰り返される?
そこで、初めにDC一時金を受け取る場合の所得税額の計算方法、前回のルール変更・見直し内容、および背景を説明する。その後、今回のルール変更・見直し内容を説明するとともに、その背景を考えたい。
2――退職金およびDC一時金を受け取った場合の退職所得の決定方法
勤続年数が20年以下の場合 :「40万円×勤続年数」
勤続年数が20年超の場合 :「800万円+70万円×(勤続年数‐20年)」
なお、ここで言う勤続年数にカウントする期間は、通常の退職金については実際に使用人として勤務していた期間で、DC一時金についてはDCの拠出期間である。
通常の退職金を受け取り、さらにDC一時金も受け取る場合など、複数の退職金を受け取り、かつ退職所得控除額算定の基礎となる勤続期間が重複する場合は、退職所得控除額が不当に多額にならないよう、重複期間に応じて退職所得控除額を調整(減額)する仕組みがある。調整対象となるのは同年か前年以前「数年内」に受け取った退職金などに限られ、前回の変更も今回示された見直しも前年以前「数年内」の具体的取り扱いの変更という点が共通する。
3――DC一時金を受け取る場合の特例
60歳定年が義務化された1998年、および定年引上げ等による65歳までの高年齢者雇用確保措置が努力義務化された2000年から数年しか経過していない2001年に、確定拠出年金法は施行された。このため、確定拠出年金法の施行当時は、約80%以上の企業が60歳定年制を採用しており2、大多数の人が60歳になる年に通常の退職金を受け取っていたと考えられる。
DC一時金を受け取る場合の特例がなければ、確定拠出年金法施行前から存在した「4年内」(図表1の②)が適用され、DC一時金を64歳になる年以前に受け取るか、65歳になる年以降に受け取るかによって、60歳で受け取る通常の退職金が調整対象になるか否かが変わる。受取時期を選択することにより多額の退職所得控除を受けることができなくなるようにするためには、DC一時金を受ける場合の調整対象期間がDCの受取時期の選択可能期間を完全にカバーする必要があり、特例が設けられたのである。DC一時金を受ける場合に限り、「14年内」(図表1の③)を適用することで、当時のDCの受取時期の選択可能期間(図表1の①)を完全にカバーできる。
1 財務省「令和3年度 税制改正の解説」(2021年7月9日公表)参照
2 厚生労働省「平成13年雇用管理調査結果速報」によると、定年制を定めている企業が全企業の91.4%を占め、一律定年制を定めている企業が定年制を定める企業の96.4%を占めていた。更に、60歳定年制を採用している企業が一律定年制を定めている企業の90.6%を占めていた。
4――前回(2022年4月1日~)の課税ルールの見直し内容とその背景
なお、確定拠出年金法が施行当時と比べると高齢者の雇用機会が広がってはいるが、2022年当時も約66%の企業が60歳定年制を採用していた3。
3 厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」によると、定年制を定めている企業が全企業の94.4%を占め、一律定年制を定めている企業が定年制を定める企業の96.9%を占めていた。更に、60歳定年制を採用している企業が一律定年制を定めている企業の72.3%を占めていた。
(2025年02月03日「基礎研レター」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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