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確定拠出年金をいつ受け取るか-一人時間差攻撃も選択肢に
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 高岡 和佳子
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より長く活躍する社会
ここでは、多岐に渡る措置のうち、年金の受給開始年齢の選択肢拡大に着目する。これまで60歳から70歳までの間であったが、来年4月からは、60歳から75歳までの間から年金の受給開始年齢を選択できる。
年金受給開始年齢の選択肢拡大のメリット
2年前話題になった老後資金2,000万円の根拠は、無職高齢夫婦世帯の平均実収入21万円(月額、以下同様)が平均実支出26万円に満たないという統計データであった。老後資金2,000万円の根拠と同条件の世帯が、70歳から公的年金を受給すれば実収入は約30万円(21万円×1.42)になる。少子高齢化や平均寿命の延び等で年金受給額の相対的低下が見込まれること、公的年金受給額が増えると税や社会保険料の負担も増えること、不測の事態への備えといった様々な要素を勘案するとあまり安心できないかもしれない。そもそも、根拠と同条件の世帯は良い方で、現役時代の働き方によってはベースの実収入21万円に満たない世帯も少なくない。
老後資金2,000万円の根拠と同条件の世帯が、75歳から受給すれば実収入は約39万円(21万円×1.84)になる。上述の様々な要素を勘案しても金銭的不安は相当軽減するだろう。また、夫婦ともに老齢基礎年金のみの世帯であっても、75歳から受給すれば実収入は約24万円(年額78万円÷12×1.84×2人分)となり、平均実支出26万円には及ばないが、月々の不足額は大幅に減る。より長く働き続けられるならば、2,000万円もの老後資金は不要になる。
長く働かない人や60歳で退職一時金を受け取る人にもメリットがある
1 人事院「平成30年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」参照
確定拠出年金の受取方法と税制上の取り扱い
年金受取の場合は雑所得扱いとなり、公的年金等控除が適用される。その年に受け取った公的年金等の受取総額から公的年金等控除を控除した残額が「公的年金等に係る雑所得」となる。公的年金等以外の所得が1,000万円を超えない場合は、年金受取額が公的年金受給額との合算で110万円以下(65歳以上の場合、65歳未満の場合は60万円以下)なら、公的年金等控除が適用され「公的年金等に係る雑所得」はゼロになる(図表3)2。「公的年金等に係る雑所得」がプラスでも、それ以外の所得との合計(総所得)が、基礎控除(所得税48万円、住民税43万円)などの人的控除や社会保険料控除や医療費控除などの合計額以下に収まれば、年金受取に対する税金は発生しない。
2 年金以外の所得が1000万円を超えている場合も公的年金等控除はあるが控除額が減少する
長く働かない人や60歳で退職一時金を受け取る人のメリットとは
現行は、確定拠出年金の受給開始年齢は60歳から70歳である。このため、65歳以降に会社から退職一時金を受け取る人は、60歳の受取開始が可能となり次第早い段階で確定拠出年金を一時金で受け取れば、4年超の期間が空くので、重複期間に応じて退職所得控除が調整されることはなく、それぞれ勤続期間に応じた退職所得控除が適用される(図表4の上)。厳密には、64歳で会社から退職一時金を受け取る人でも、64歳の早い時期に退職一時金を受け取らない限り、重複期間に応じた退職所得控除の調整(減額)を避けることが可能だ。
しかし、60歳で会社から退職一時金を受け取る人は、重複期間に応じた退職所得控除の調整(減額)を避ける手立てがない(図表4の中)。重複期間に応じた退職所得控除の調整(減額)を避けるためには、少なくとも56歳の誕生日を迎える1か月以上前に早期退職する必要がある(図表4の下)。
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(2021年04月01日「研究員の眼」)
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