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- 5年間で若年層の確定拠出年金の商品選択割合はどう変わったか?
2023年01月06日
確定拠出年金制度は、加入者等(掛金を拠出せず運用の指図のみを行う運用指図者を含む)が自己責任で運用し、老後の給付が運用成果によって変動する制度である。老後の所得を確保するためには、掛金が十分であることもさることながら、各加入者等が適切に資産運用を行えるだけの情報や知識を保有していることが重要である。このため、確定拠出年金を実施する事業主や国民年金基金連合会は、加入者等に対する継続的な投資教育に努める義務を負う。
資金の目的を踏まえると退職時期を意識して資産運用することが好ましく、退職時期まで十分な時間がある若年層ほど、積極的にリスクを取るべきだと考えられる。しかし、2017年3月末時点では、企業型と個人型共に20~29歳の預貯金や保険といった元本確保型商品の割合は50%を優に超え、50歳~59歳の同割合よりも高い。(図表1左半分)。積極的にリスクを取らない要因として、投資経験の浅い若年層が十分な知識を持っていないことや、関心が低いことなどが考えられてきた。一方、2022年3月末時点では、いずれの年代も元本確保型商品の割合が50%を下回り、20~29歳の方が低い(図表1右半分)。企業型における20~29歳と50歳~59歳の間の商品選択割合の差は依然として小さいが、個人型では大きく異なる。
資金の目的を踏まえると退職時期を意識して資産運用することが好ましく、退職時期まで十分な時間がある若年層ほど、積極的にリスクを取るべきだと考えられる。しかし、2017年3月末時点では、企業型と個人型共に20~29歳の預貯金や保険といった元本確保型商品の割合は50%を優に超え、50歳~59歳の同割合よりも高い。(図表1左半分)。積極的にリスクを取らない要因として、投資経験の浅い若年層が十分な知識を持っていないことや、関心が低いことなどが考えられてきた。一方、2022年3月末時点では、いずれの年代も元本確保型商品の割合が50%を下回り、20~29歳の方が低い(図表1右半分)。企業型における20~29歳と50歳~59歳の間の商品選択割合の差は依然として小さいが、個人型では大きく異なる。
つまり、同じ2022年3月末時点、同じ20~29歳でも企業型と個人型で商品選択割合が大きく異なることになる。年齢だけでなく、資産状況など個人の属性によって適切な運用方法は異なるが、内外株式の合計割合が54%に及ぶ個人型の商品選択割合の方が、内外株式の合計割合が28%の企業型の商品選択割合よりも適切だと考えられる。退職時期を考慮して資産配分を自動的に変更してくれるターゲット・デート・ファンドの多くは、退職時期の40年前時点の内外株式の合計割合が60%を超えているからである。20~29歳の個人型の加入者等の資産運用に関する情報や知識量は、同世代の企業型の加入者等よりも多いと言えそうだ。
20~29歳の個人型の加入者等が同世代の企業型の加入者等よりも資産運用に関する情報や知識量が多いからといって、個人型の加入者等に対する投資教育を担う国民年金基金連合会の教育方法が、企業型の加入者等に対する投資教育を担う事業者の教育方法より優れているとは言えない。一般的に、事業者や国民年金基金連合会から委託を受けた運営管理機関等が投資教育を行うため、教育方法は同等と考えられるからである。確定拠出年金を実施する事業主に雇用され、本人の関心の有無にかかわらず自動的に加入者となった企業型の加入者等と、老後の所得の確保に関心を持ち自ら加入を選択した加入者等との違いと考える方が自然だ。
では、2017年3月末時点の20~29歳の個人型の加入者等が、積極的にリスクを取っていなかったのはなぜだろうか。個人型の加入者等には、掛金を拠出する加入者と掛金を拠出しない元加入者である運用指図者がおり、2017年3月末時点は運用指図者の割合が61%と高かったことが理由と考えられる(図表2)。経済的な事情があって一時的に拠出を止めている人もいるが、若年層の運用指図者の多くは、過去に確定拠出年金を実施する事業主に雇用され、退職に伴い個人型に資金を移管し、かつ退職後は自身では拠出しない人、つまり老後の所得の確保に関心が薄い人と考えられる。5年間で20~29歳の個人型の加入者等に占める老後の所得の確保に関心を薄い人の割合が減少したことが、20~29歳で個人型の商品選択割合が同年代の企業型と比べて変化が大きかった原因と考えられる。
20~29歳の個人型の加入者等が同世代の企業型の加入者等よりも資産運用に関する情報や知識量が多いからといって、個人型の加入者等に対する投資教育を担う国民年金基金連合会の教育方法が、企業型の加入者等に対する投資教育を担う事業者の教育方法より優れているとは言えない。一般的に、事業者や国民年金基金連合会から委託を受けた運営管理機関等が投資教育を行うため、教育方法は同等と考えられるからである。確定拠出年金を実施する事業主に雇用され、本人の関心の有無にかかわらず自動的に加入者となった企業型の加入者等と、老後の所得の確保に関心を持ち自ら加入を選択した加入者等との違いと考える方が自然だ。
では、2017年3月末時点の20~29歳の個人型の加入者等が、積極的にリスクを取っていなかったのはなぜだろうか。個人型の加入者等には、掛金を拠出する加入者と掛金を拠出しない元加入者である運用指図者がおり、2017年3月末時点は運用指図者の割合が61%と高かったことが理由と考えられる(図表2)。経済的な事情があって一時的に拠出を止めている人もいるが、若年層の運用指図者の多くは、過去に確定拠出年金を実施する事業主に雇用され、退職に伴い個人型に資金を移管し、かつ退職後は自身では拠出しない人、つまり老後の所得の確保に関心が薄い人と考えられる。5年間で20~29歳の個人型の加入者等に占める老後の所得の確保に関心を薄い人の割合が減少したことが、20~29歳で個人型の商品選択割合が同年代の企業型と比べて変化が大きかった原因と考えられる。
老後の所得の確保に対する関心の強弱が、20~29歳の商品選択割合に影響を及ぼしているようだ。当たり前だが、関心が無ければ必要な情報や知識を習得する意欲がわかない。加入者等に対する投資教育には、制度に対する関心を喚起する機能が求められるが、本人の関心の有無にかかわらず、確定拠出年金を実施する事業主に雇用されると自動的に加入者になるのが原則の企業型においては、制度に対する関心を喚起する機能の重要性がとりわけ高いと考えられる。
金融商品の仕組みや特徴、資産運用の基礎知識は重要だが、まずは関心を喚起することが先だろう。また、公的年金制度の概要や確定拠出年金制度の位置づけを伝えることも重要だが、それらの情報が必要になるのは、生涯収支の適切性を判断する段階である。確定拠出年金運営管理機関の多くが生涯収支のシミュレーション機能を提供しているが、関心の低い人が自らその機能を利用するとは思えない。研修などの機会を利用し、若いうちから生涯収支を把握する機会を繰り返し提供することが望まれるのではないだろうか。
金融商品の仕組みや特徴、資産運用の基礎知識は重要だが、まずは関心を喚起することが先だろう。また、公的年金制度の概要や確定拠出年金制度の位置づけを伝えることも重要だが、それらの情報が必要になるのは、生涯収支の適切性を判断する段階である。確定拠出年金運営管理機関の多くが生涯収支のシミュレーション機能を提供しているが、関心の低い人が自らその機能を利用するとは思えない。研修などの機会を利用し、若いうちから生涯収支を把握する機会を繰り返し提供することが望まれるのではないだろうか。
(2023年01月06日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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経歴
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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