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バレンタインの変遷に見る女性のキャリアの変化~“義理チョコ”から“チョコ好きの女性たちの祭典”へ~

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
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バレンタインデーにおける働く女性たちの行動が変遷している。2000年頃までは職場の習慣になっていた「義理チョコ」が下火となり、自身のために好きなチョコを購入して楽しむスタイルが主流となってきた。これには、景気変動や贈り物に関する意識の変化など、様々な要因が関連していると考えられるが、背景には、女性のキャリアの変化があるのではないだろうか。
男女雇用機会均等法施行(1986年)後の女性会社員の行動を描写した小笠原祐子氏著『OLたちの<レジスタンス>』(中公新書)によると、当時の「OL」たちは、結婚・出産退職による短期雇用が想定され、昇進・昇給も殆どない弱者の立場にあった。そんな中で、年に一度のバレンタインは、贈る相手によって、義理チョコの中身や贈り方に差をつけて普段の鬱憤を晴らしたり、感謝を示したりする絶好の機会となっていた。どうせ頑張って仕事をしても評価されず、自分たちでは職場の構造を変えることもできないからこそ、贈答によって、少しでも有利な状況を引き出そうする、弱者ならではの行為だったという訳だ。
その後の女性会社員の贈答行為の変化を、バレンタイン商戦を取り上げた新聞記事を中期的に調査し、分析した。その結果、均等法が施行された1986年から1989年は、「義理チョコ」の定着期だったと言える。1990年代は「義理チョコ」が最盛期を迎えると同時に、一部で反発が起きる抵抗期にもなった。2000年代は「義理チョコ」が形式化し、代わって女性自身のために購入する「ご褒美チョコ」が定着していく。2010年代は「義理チョコ」は一層、衰退し、「ご褒美チョコ」は発展期を迎える。2020年から2024年は、「ご褒美チョコ」がさらに進化して、バレンタインデーそのものが、女性たちを始めとする「チョコ好きのっ祭典」と化していく。
この時代の女性のキャリアの変化をたどると、1986年の均等法施行後は、働く女性が増えたものの、女性は結婚・出産退職による短期雇用が想定され、職場の配置や賃金には大きな男女格差があった。次第に働く女性を支援する法制度が拡充され、長期雇用の女性が増え、20~30歳代の女性の就業率は上昇し、男女間賃金格差も徐々に縮小していっている。
つまり近年は、女性会社員たちは長期雇用を前提として昇進・昇給の対象となり、企業によっては管理職登用まで期待されるようになり、かっての「OL」たちが様々なメッセージを包み隠していた「義理チョコ」という媒体自体が、必要なくなり、効果も薄れてきたためではないだろうか。
■目次
1――はじめに
2――「義理チョコ」の意味と役割~OLたちの職場での「構造的劣位」と適応~
2-1|「義理チョコ」贈答役を担う「OL」の誕生と増加
2-2| 「OL」にとっての「義理チョコ」~先行研究のレビューより~
3――バレンタインデーにおける女性会社員の行動の変遷~新聞記事調査より~
3-1|1986年から1989年~「義理チョコ」定着期~
3-2|1990年代~「義理チョコ」最盛・抵抗期~
3-3│2000年代~「義理チョコ」形式化・「ご褒美チョコ」定着期~
3-4│2010年代~「義理チョコ」衰退・「ご褒美チョコ」発展期~
3-5│2020年~2024年 「義理チョコ」衰退・「チョコ好きの祭典」発展期~
4――女性のキャリアの変化~働く女性の増加と男女間賃金格差の縮小~
5――終わりに
(2025年01月06日「基礎研レポート」)

03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
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