2024年12月16日

ロシアGDP(2024年7-9月期)-前年比伸び率は3%台まで低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比伸び率は3.1%まで低下

12月13日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
2024年7-9月期の前年同期比伸び率は3.1%、予想1(同3.1%)と一致、前期(同4.1%)から低下した(図表1・2)

(図表1)ロシアの実質GDPの動向(需要項目別)/(図表2)ロシアの実質GDP成長率(供給項目別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:サービス業が成長をけん引

ロシアの24年7-9月期の実質GDP伸び率は前年比3.1%となり、11月13日に公表されていた予備推計値(3.1%)から変わらなかった。また、季節調整系列の前期比は0.4%(年率換算2.7%)となり、4-6月期(前期比0.5%、年率換算2.1%)から加速、9四半期連続でのプラス成長となった。また、戦争前(21年10-12月期)と比較した水準は5.3%だった。

執筆時点では需要別のデータは未公表であるが、4-6月期までの状況を確認すると、戦争後に活性化していた投資はやや鈍化したが、引き続き家計消費が堅調で成長をけん引している(図表1)。以下では産業別のデータ等を確認していく。

産業別の伸び率は、前年比で第一次産業が▲5.2%、第二次産業が2.3%、第三次産業(金融・不動産)が2.9%、第三次産業(その他)が4.9%だった。前期比では第一次産業が▲2.9%、第二次産業が0.5%、第三次産業(金融・不動産)が▲1.9%、第三次産業(その他)が0.8%となり、傾向的には第三次産業の成長が全体の伸びをけん引している(図表4)。また、第一次産業は傾向としては緩やかに減速、第二次産業は足もとの伸びが鈍化している。より細かい産業の伸び率は、7-9月期で不動産(▲4.5%)のマイナス幅が大きい一方、芸術・娯楽サービス(11.1%)、飲食・居住サービス(3.9%)、政府サービス(3.5%)などが高い伸びを記録し、成長をけん引した(図表3)。
(図表3)ロシアの実質GDP成長率(24年7-9月期)
(図表4)ロシアの実質GDPの動向(供給項目別)/(図表5)ロシアの名目および実質成長率
ウクライナ侵攻前との比較では、戦争前までロシア経済のけん引役だった鉱業(▲4.9%)がマイナス圏にとどまる一方、住居・飲食サービス(25.9%)、金融サービス(25.7%)、情報サービス(21.1%)、建設業(14.7%)をはじめ、多くの産業が2桁増の水準にある。一部の産業は冴えないものの、総じて活況さが継続している。
(図表6)ロシアの実質GDP成長率 ​また、7-9月期の名目成長率は前年同期比10.0%(前期15.5%)、GDPデフレータ伸び率は前年同期比6.6%(同10.9%)だった(図表5)。GDPデフレータの伸びは7-9月期に大幅に減速した。ただし、消費者物価指数で見ると前年比で9%前後の伸びにやや加速している。輸入インフレの加速が方向感の違いを生んでいると見られる。

なお、直近までの動向を経済発展省が公表する月次のGDP成長率(前年比)から確認すると、4月4.4%、5月4.5%、6月3.0%、7月3.5%、8月2.4%、9月2.9%、10月3.2%となり、6月以降は3%前後での推移となっている(図表6)。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年12月16日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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