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- インド消費者物価(24年11月)~11月のCPI上昇率は4カ月ぶりに低下、食品価格の高騰がやや緩和
2024年12月13日
インド統計・計画実施省が12月13日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2024年11月のCPI上昇率は前年同月比5.5%と、前月の同6.2%から低下し(図表1)、事前の市場予想1と同水準だった。
地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比4.8%(前月:同5.6%)、農村部が同6.0%(前月:同6.7%)となり、それぞれ4カ月ぶりに低下した。
11月のCPIの内訳をみると、主に野菜や豆類などの食品価格の鈍化により低下したことが分かる。
まず食品は前年同月比9.0%となり、前月の同10.9%から低下した(図表2)。食品のうち、野菜が同29.3%(前月:同42.2%)と生鮮食品の入荷が進んで価格高騰が緩和された。トマトの価格が同41.7%(前月:同161.3%)、たまねぎの価格が同5.6%(前月:51.9%)となり、それぞれ増勢が鈍化した。また食用油(同13.3%)は9月に追加で輸入関税が課されたため上昇圧力が高まっており、果物(同7.7%)や穀物製品(同6.9%)も高めの伸びが続いている。他方、牛乳・乳製品(同2.9%)や加工食品(同3.9%)、肉・魚(同4.7%)、豆類(同5.4%)は落ち着いた伸びとなり、香辛料(前年同月比▲7.4%)は引き続き減少した。
燃料・電力は前年同月比▲1.8%となり、15ヵ月連続でマイナス圏での推移となった。
コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.6%と前月の同3.7%から小幅に低下した。カテゴリー別にみると、教育(同3.9%)や住宅(同2.9%)、輸送・通信(同2.7%)、衣服・靴(同2.8%)、家庭用品・サービス(同2.8%)、娯楽(同2.6%)は落ち着いた伸びが続いたものの、パーソナルケア(同10.4%)が二桁増であった。
インフレ率(CPI上昇率)は、今年10月が前年同月比6.2%となりインド準備銀行(RBI)の物価目標の上限である+6%を上回ったが、11月は食品価格の高騰が緩和したため同+5.5%に低下した(図表3)。引き続き天候の悪化や国際農産物価格の上昇は食品インフレの上振れリスクとなるが、雨季作の豊作と好天に伴う乾季作の作付面積の拡大により当面は食品インフレが低下傾向で推移するものとみられる。RBIは12月の金融政策委員会(MPC)で7-9月期のGDP統計の悪化を受け止めながらも、「高成長のための強固な基盤は持続的な価格安定によって確保できる」と強調し、インフレ抑制を優先して金融政策を据え置いた。一方で預金準備率(CRR)を4.0%に引き下げることにより流動性を供給し、利下げとは異なる方法で景気支援に動いている。コアインフレ率は落ち着いた推移が続いており、今後食品インフレが鈍化すると早ければ来年2月の会合で金融緩和が実施される可能性はあるが、RBIは足元のインフレ率の上昇を踏まえて今年度のインフレ予測を4.8%と、10月から+0.3%ポイント上昇修正しており、来年の利下げ時期が4月以降に後退する可能性もあるだろう。
1 Bloomberg集計の中央値。
1 Bloomberg集計の中央値。
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(2024年12月13日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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